そして雨が止んだしとしとと天から降る雫が体を濡らしていく。外は重々しい雲が広がり、これからの荒れ天候を彷彿とさせる。
アスファルトの水が跳ねて、肌に服が張り付き、体温が少しずつ冷えていくのが分かる。
アーサーは傘を差していない。
天気予報を見そびれた訳ではない。明日の朝から雨が降るとテレビで予想されていたし、朝家を出る時も曇りきった空だった。分かった上で彼は通学路を歩き、決して安くない指定の制服を濡らしている。
駅を出てから、皆が自宅から持参したであろう傘を差している中、一人だけ何も纏わずに歩き出しているのは朝からの雨天にも関わらず傘を持ち込まなかった馬鹿だと思われているのだろう。
馬鹿と言われれば適切な言葉ではないが、アーサー・カークランドには英国紳士としてのこだわりがある。
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