夜の空気 夏も終わりが近づいたある日の夜。外は風がなくて、温い空気が谷中に留まっていた。屋敷の主たちはみなすっかりベッドの中で夢を見ているような深い夜なのに、気温が昼間と少しも変わらなくて、屋敷から離れたテントの中でひとり、スナフキンは寝付けずにいた。
明日はムーミンと朝早くから釣りに行く約束をしているので、早く眠りたい。テントの中であっちこっち寝返りをうったり、リュックに顔を押し付けたり、「眠れないということを考えないようにすること」を頭の中でぐるぐる巡らせもした。
(なんだって、今日は眠れないんだろう)
万策尽きた頃、スナフキンは諦めて寝袋からまっすぐ上半身を起こした。意識はぼーっとするのに、頭が眠りたがってくれない。
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