「わーっかっこいいーっ!」
妹のはしゃいだ声。
「キマってるだろう」
ニッと笑いながらポーズをとる兄。
空気が涼しくなり、秋のはじまりを感じるころ。自室で勉強中、気分転換にリビングに出ると兄と妹が楽しげに笑っていた。いつもはラフな黒シャツを着ている隼翼がスーツを着ている。
「へえ、珍しいね、兄さん。どうしたの?」
「ちょっとしたパーティがあってな。さすがにいつものカッコじゃまずいだろ? どうだ、有宇」
感想を求められて、改めてその立ち姿を見る。
色は黒。その色合いは普段の隼翼の装いとあまり変わらないと思ったが、よく見るとストライプが入っている。ネクタイは無地の深い緑、ボタンはグレー、いつもは開いている首元は隠れ、組織のリーダーというより誠実な若者らしさがあった。スーツの持つイメージのおかげか、それとも今兄がとっているポーズのおかげか、いつもよりスマートに、背筋が伸びて見えた。
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