あなたが欲張りでよかった 空中庭園に夜がやってきて、紺碧の緞帳が世界を包み始めた。残しておいたじめにゃんのクッキーを咀嚼して、今日も一日が終わる秒針を、体で感じる。
俺は欲張りだから、悪人なのに友達なんてものを欲してしまった。
じめにゃんのこと。
あれから俺の誘いに応えてくれて、こうして顔を合わせる密会のようなものを定期的につくっている。用もないのに。俺は用事がなければ人と会うことがなかったから、最初はあれこれ用事を繕っては約束をしていた。用事がなくても呼んでくれていいんですよ、といわれたときには晴天の霹靂だった。いいのか。――いいんだ。
嬉しかった。
喜んで欲しくて、ブランドのサシェとか、茶葉とかを持ってきたけれど、二人で使いましょうと手に戻される。
1161