道満は晴明殿が好きなんだろ?
ある日、ぽつりと言われた言葉。
「はて?あの憎き男を私が?ご冗談を」
すっぱり言い切ると出された茶を啜る。
今いるのは金髪碧眼の美丈夫であり、私には余りにも過ぎた男の家である。
「いっつも晴明殿の話ばっかすんじゃねぇか」
茶を啜りながら目だけ天井を眺める。
「そうでもありませぬ、知った名が印象に残っているだけでしょう?」
薬効の話だの星見の話しだのしても全く聞いていないのだから。
「もしや、義兄殿と喧嘩でも致しましたか?」
晴明の名が出る時は概ねこの男の想い人である義兄の悩みだ。
「ちげーよ、喧嘩なんかしちゃいねぇ」
そもそも勝ち目の無い戦である。なんと言っても彼の義兄は恋に落ち破れた後それが鬼に成ったというらしいのだから。
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