海の幽霊(SSL):
「海の怪物ゥ?」
ブラックコーヒーを啜りながら、ベレッタは怪訝な声で言う。自分をベレッタと覚えている人のうちの一人、凸波支部のやたら足の早いエージェントが、すがるような声を出した。
「ベレッタさん海とか生き物とか得意でしょ? 頼みますよぉ~」
「ここの支部長の支部員やっててよく俺に海得意って言うじゃん……唯一の弱点にも近いですけど……てかそれこそビスさんに言えばいいじゃん?」
カップを置けばチチチとエージェントが指を振る。動作がでかいなこいつ。
「こ、れ、を、わざわざイリーガルのベレッタさんに最初に言いに来たのも理由があるんですよ」
「最初なんだ……」
げんなりした感じのベレッタを意に介さず、エージェントは手中のタブレットを操作すると、開いた画面をベレッタに見せた。やる気の無さに目を細めていたベレッタだが、そこに映ったものに目を丸くする。
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