今頃、HiMERUは旧館に着いた頃だろうか。
旧館から移動して、寮の空中庭園に人がいないことを確認するとほっと息をついてベンチに腰掛ける。真っ昼間でかえって良かった。少なくとも、学生連中は学校に行っていて寮にはいないから、休日に比べると人目を避けるのは難しくない。
午前中に入れていた仕事以外の所用を後回しにしてなんとかHiMERUの収録が終わるまでに部屋の片付けを終えて換気をしてきたのだが、もしもHiMERUが部屋を訪れなければ窓が開けっぱなしになっちまうっしょ──とはいえ、あいつがあの部屋に足を向ける確率は非常に高い。
なにしろ、可愛がっていたちいさい姿の俺っちがいるのだ。昨日の今日で戻りたい気分にはなれないかも知れないが、あの部屋から出ようとしないちいさい俺っちのことを気にかけて自分の方から出向いて行く可能性は十分あり得る。
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