【旭郁】星のなまえ１


　旭と再会してから二度目の夏。
　郁弥は公園に佇む滑り台のてっぺんに座り、膝を抱えて夜空を見上げていた。
　真上にはふたつの明るい星、こと座のベガとわし座のアルタイル。東京で見える星の数は少ないけれど、今日はこのふたつが夜空によく映えていた。
　綺麗だと思った。
　けれど、それだけだった。
　心はこわいくらい静かなままだ。
　ゆるやかに吹いた温い風が、首や腕に絡み付いて離れない。動くこともできず、ただ虚しさが一秒ごとに強くなった。
　光の周囲には、どこまでも広がる黒。
　東京で流れ星なんて見られるはずもないのに、闇の中に光の筋を探してしまう。
　そうやってあてもなく視線を彷徨わせていると、いつの間にか迫っていた雲の影にアルタイルが隠れて見えなくなった。