円城塔
はるち
DOODLE土人形と動死体/円城塔のパロディです。BGM:2145年/ACIDMAN
機械博士と動死体 墓はただの石だ。死体は肉塊だ。魂はお伽噺だ。
けれど、心は。まだここにある。あるはずだ。
――引用:回樹 斜線堂有紀
意識を持った時から、男は既に死んでいた。
「君のことはリーと呼ぶ」
自分を呼び起こして現世へと留めおく主人は、自らを博士と呼称した。自分よりよほど死体じみて見える人間だった。頬はこけ、本当に血が通っているのか疑わしくなるほど白い肌をしている。目の下には刺青のように深い隈が刻まれている。ただ、その瞳だけが、眼窩に嵌った宝石のようにぎらついた輝きを放っており、その非対象さは博士に生気よりも不気味さを与えていた。
博士は男の全身、漆の上に佩いた金粉の河めいた傷口に貼られている札を一枚一枚確かめてから、傍らに置かれた服を着るように指示した。関節を軋ませながら釦を止める男の動きを、博士は黙って見つめていた。実験動物の挙動を確認しているようでもあったが、その奥底には別種の光が宿っている。それを何と呼ぶべきなのか、男にはわからなかった。男に与えられているのは意識と名前だけだ。
3643けれど、心は。まだここにある。あるはずだ。
――引用:回樹 斜線堂有紀
意識を持った時から、男は既に死んでいた。
「君のことはリーと呼ぶ」
自分を呼び起こして現世へと留めおく主人は、自らを博士と呼称した。自分よりよほど死体じみて見える人間だった。頬はこけ、本当に血が通っているのか疑わしくなるほど白い肌をしている。目の下には刺青のように深い隈が刻まれている。ただ、その瞳だけが、眼窩に嵌った宝石のようにぎらついた輝きを放っており、その非対象さは博士に生気よりも不気味さを与えていた。
博士は男の全身、漆の上に佩いた金粉の河めいた傷口に貼られている札を一枚一枚確かめてから、傍らに置かれた服を着るように指示した。関節を軋ませながら釦を止める男の動きを、博士は黙って見つめていた。実験動物の挙動を確認しているようでもあったが、その奥底には別種の光が宿っている。それを何と呼ぶべきなのか、男にはわからなかった。男に与えられているのは意識と名前だけだ。