幻想水滸伝
そのこ
DOODLEルックと坊。坊ちゃん、ちゃんと後継を決めて出奔したんだといいなって。自分がなんか曖昧に権力を引き継いだことを後悔しててほしい。2025-05-08
弔意を示すリボンを揺らしながら、セキアは山積みの書類を一つ一つ片づけていく。戦争が終わっても、仕事が減っている様子はない。軍の中枢をグレッグミンスターに移す為にむしろ増えているぐらいだろう。レパントとウォーレンにも相応に任せているとはいえ、軍師を失い、部隊長がやまと欠け、皆が戦勝に浮かれているこの状況はセキアにとっても恐ろしい程忙しいはずだ。
だが少年はなんだか楽し気に書類を取りまとめ、ハンコをつき、指示を飛ばす。その間にルックが持ってきた茶菓子をかじる。忙しくしていないと良からぬことを考えてしまうと、セキアは言った。
手元を照らす明かりにルックは手を伸ばし、明かりを強めた。ほわ、と広がった明かりがセキアを照らす。憔悴が目元に滲んでいる。
1411弔意を示すリボンを揺らしながら、セキアは山積みの書類を一つ一つ片づけていく。戦争が終わっても、仕事が減っている様子はない。軍の中枢をグレッグミンスターに移す為にむしろ増えているぐらいだろう。レパントとウォーレンにも相応に任せているとはいえ、軍師を失い、部隊長がやまと欠け、皆が戦勝に浮かれているこの状況はセキアにとっても恐ろしい程忙しいはずだ。
だが少年はなんだか楽し気に書類を取りまとめ、ハンコをつき、指示を飛ばす。その間にルックが持ってきた茶菓子をかじる。忙しくしていないと良からぬことを考えてしまうと、セキアは言った。
手元を照らす明かりにルックは手を伸ばし、明かりを強めた。ほわ、と広がった明かりがセキアを照らす。憔悴が目元に滲んでいる。
そのこ
DOODLE本拠地のお墓、鳥っぽいモチーフになっていたので、そこからちょっと葬儀の話など。鳥に魂を仮託して、天へ上ることを願う、みたいな。ちょっとよくわかんないですね。
2025-05-07
「今日は良い風だ」
「鳥も来たな」
「ああ、良かったね。無事に空に昇れたようだ」
兵の葬式ではそう言う声がよく聞かれる。鳥の形に切った紙を空に飛ばして魂が天へと上ることを祈るのだ。かつては鳥そのものを使っていたようで、その名残か、葬儀の最中に鳥が梢にとまると、皆、涙を浮かべて、それでもどこか嬉しそうに微笑むのが常だった。
個人は鳥になり、天へと上る。遺族は亡くなった大事な人のために鳥を望む。広げた羽を墓石に彫り、故人がここにとどまらず、安らぎの中に、天の中に上ることを望むのだ。
ジョウストンはそういうところだ。
傭兵たちにだって死者は出る。それぞれ出身は違うが、特に指定がない限りジョウストンのやり方で送ると最初から決めていた。
1371「今日は良い風だ」
「鳥も来たな」
「ああ、良かったね。無事に空に昇れたようだ」
兵の葬式ではそう言う声がよく聞かれる。鳥の形に切った紙を空に飛ばして魂が天へと上ることを祈るのだ。かつては鳥そのものを使っていたようで、その名残か、葬儀の最中に鳥が梢にとまると、皆、涙を浮かべて、それでもどこか嬉しそうに微笑むのが常だった。
個人は鳥になり、天へと上る。遺族は亡くなった大事な人のために鳥を望む。広げた羽を墓石に彫り、故人がここにとどまらず、安らぎの中に、天の中に上ることを望むのだ。
ジョウストンはそういうところだ。
傭兵たちにだって死者は出る。それぞれ出身は違うが、特に指定がない限りジョウストンのやり方で送ると最初から決めていた。
そのこ
DOODLEフィッチャーとシュウ。フィッチャーがジェスを介さず新同盟軍に加わってくるの、面白いよな、と思っている。2025-05-06
ここだけの話ですよ。じり貧だなと思ったんですよ。自分はあくまでもミューズの名代としてトゥーリバーに来て、その間にミューズが落ちちゃったでしょう。これでアナベル市長が生き残っていればミューズにも目があったとは思いますけど、現実としてはそうじゃなかった。
ジェス副市長ですか。
悪い人ではないです。ただ、あの人が単独で立ってミューズがやっていけるかというと別の話でしょ。カリスマがない。そういう風に能力値を作っていない。それは能力値の違いの問題で、副市長が悪いわけじゃないですよ。
分かってる? はは、そうですよね。
ジェス副市長に関して言えばもう一つ。お耳に入れといた方が良さそうなのが、彼の現在の状況です。判明してるのか、ってしてますよ。そりゃ。あの人がどう動くかでミューズの動きが決まるのはそうなんですから。
1503ここだけの話ですよ。じり貧だなと思ったんですよ。自分はあくまでもミューズの名代としてトゥーリバーに来て、その間にミューズが落ちちゃったでしょう。これでアナベル市長が生き残っていればミューズにも目があったとは思いますけど、現実としてはそうじゃなかった。
ジェス副市長ですか。
悪い人ではないです。ただ、あの人が単独で立ってミューズがやっていけるかというと別の話でしょ。カリスマがない。そういう風に能力値を作っていない。それは能力値の違いの問題で、副市長が悪いわけじゃないですよ。
分かってる? はは、そうですよね。
ジェス副市長に関して言えばもう一つ。お耳に入れといた方が良さそうなのが、彼の現在の状況です。判明してるのか、ってしてますよ。そりゃ。あの人がどう動くかでミューズの動きが決まるのはそうなんですから。
そのこ
DOODLE星辰剣とフリック。星辰剣、ビクトールのがさつさに切れ気味なだけで別にビクトールと一緒にいるのが嫌なわけではないあたりがかわいいよね。2025-05-05
風のよく通る洞窟に私を置いていった男が帰ってきた。理由など一つだ。かの吸血鬼が生きていた。それ以外にビクトールが私を取りに来るはずがない。
写し身の術とはまったく生意気この上ない。次こそ完全に滅してやろう。とはいうもののビクトールにも手がかりはなく、カーン・マリィとかいう若造が代わりに探ってくれる手筈となった。ビクトールもそれを良しとし、私は奴の背中の上で戦争に加担する事となるらしい。
吸血鬼とは関係がない事を優先したのか。
ハイランド皇国とやらの軍を打ち破った。今は集まってくる人間を訓練したりする職務を真面目にこなしている。私を背負っていると目立ちすぎるとのたまったビクトールは、基本的に私を自室に置きっぱなしだ。
1618風のよく通る洞窟に私を置いていった男が帰ってきた。理由など一つだ。かの吸血鬼が生きていた。それ以外にビクトールが私を取りに来るはずがない。
写し身の術とはまったく生意気この上ない。次こそ完全に滅してやろう。とはいうもののビクトールにも手がかりはなく、カーン・マリィとかいう若造が代わりに探ってくれる手筈となった。ビクトールもそれを良しとし、私は奴の背中の上で戦争に加担する事となるらしい。
吸血鬼とは関係がない事を優先したのか。
ハイランド皇国とやらの軍を打ち破った。今は集まってくる人間を訓練したりする職務を真面目にこなしている。私を背負っていると目立ちすぎるとのたまったビクトールは、基本的に私を自室に置きっぱなしだ。
そのこ
DOODLEノースウィンドウ戦前。ナナミとジョウイは2主君の意思をそんなに汲んでくれない印象がある。シュウのが聞いてくれるな、って思いました。まあ、ゲーム上の都合もあるんだが。2025-05-04
シュウさんが立てた作戦は、僕を何やら目立たせようとしていた。作戦の単純な成功率を考えたら、ビクトールさんかフリックさんがやるべきなのは当たり前なのに、わざわざ僕を指名してたのには多分わけがある。
ゲンカクじいちゃんの事だろうな。アナベルさんが言っていた。ジョウストンにとって、大事な人であるゲンカクじいちゃん。
でもあの人は、じいちゃんがいるからじゃなくて、はっきりと僕の目を見ていた。まっすぐに僕を見つめて、この作戦を託してくれた。
ハイランドがこの岬の先の滅んだ街にやってきているらしい。シュウさんが言ってた。人を集めている以上、どうしたってそれは目立つもの。なんだかんだと名の知れた二人が戦力を集めているという情報は、ハイランドを刺激するに十分だったんだって。
2113シュウさんが立てた作戦は、僕を何やら目立たせようとしていた。作戦の単純な成功率を考えたら、ビクトールさんかフリックさんがやるべきなのは当たり前なのに、わざわざ僕を指名してたのには多分わけがある。
ゲンカクじいちゃんの事だろうな。アナベルさんが言っていた。ジョウストンにとって、大事な人であるゲンカクじいちゃん。
でもあの人は、じいちゃんがいるからじゃなくて、はっきりと僕の目を見ていた。まっすぐに僕を見つめて、この作戦を託してくれた。
ハイランドがこの岬の先の滅んだ街にやってきているらしい。シュウさんが言ってた。人を集めている以上、どうしたってそれは目立つもの。なんだかんだと名の知れた二人が戦力を集めているという情報は、ハイランドを刺激するに十分だったんだって。
そのこ
DOODLEラダト。ナナミちゃん。ナナミちゃん、シュウを仲間にするのに消極的だなあという印象はやっぱり受けるんで、そう書いた。2025-05-03
シュウさん、戦争したくないみたい。なんだか冷たそうな人だったけど、その感覚は分かるんだよね。アップルちゃんも、なんで人に戦争をしようって言えるのかはよくわかんない。
開いた窓から夜風が吹きこんできて、髪の毛をさわさわと鳴らした。部屋はしんと静かで、戦争が近づいているなんて信じられない。ビクトールさんの砦でも、ミューズでもそう思ったけど、それは結局錯覚に過ぎなかった。世の中って、私が想像しているよりもずっと大きく動いているみたい。
眠れなくて、ベッドに腰を掛けて月を見る。キャロにいたころと今と、月と夜空はそんなに変わんない。
膝を抱え込んで、ため息をつく。
シュウさん。戦争したくないのか。
1797シュウさん、戦争したくないみたい。なんだか冷たそうな人だったけど、その感覚は分かるんだよね。アップルちゃんも、なんで人に戦争をしようって言えるのかはよくわかんない。
開いた窓から夜風が吹きこんできて、髪の毛をさわさわと鳴らした。部屋はしんと静かで、戦争が近づいているなんて信じられない。ビクトールさんの砦でも、ミューズでもそう思ったけど、それは結局錯覚に過ぎなかった。世の中って、私が想像しているよりもずっと大きく動いているみたい。
眠れなくて、ベッドに腰を掛けて月を見る。キャロにいたころと今と、月と夜空はそんなに変わんない。
膝を抱え込んで、ため息をつく。
シュウさん。戦争したくないのか。
そのこ
DOODLEシュウさんが仲間になったよ。シュウ、自分が生き残るための策としてハイランドを打ち破る策そのものは考えてたりしたんだろうか。2025-04-30
まさか、都合よく群島諸国のコインが落ちているなど予想出来るはずもない。冷え切ったアップルの手にのった小さなコインが満月の明かりにきらきらと光っていた。まあ、もう腹を括るしかないのだろう。アップルはコインを見つけ、連れてきた少年はゲンカク老師の養子だという。
利用出来る。ハイランドを打ち破る策ならずっと考えていた。ただ、シュウには実行するための手段がなかっただけの話だ。
サウスウィンドウは降伏を選び、グランマイヤー市長は処刑された。サウスウィンドウの兵は大部分が市内に留め置かれ、動けるものなどごく少数。頭もいなければ、軍を指揮するものもない。
そんな状態で何が出来るものか。
だというのにあの子ときたら。久しぶりに顔を見せたと思ったら、まっすぐな目でシュウを戦争に誘った。それが何を意味しているのか、本当に分かっているのか。
1467まさか、都合よく群島諸国のコインが落ちているなど予想出来るはずもない。冷え切ったアップルの手にのった小さなコインが満月の明かりにきらきらと光っていた。まあ、もう腹を括るしかないのだろう。アップルはコインを見つけ、連れてきた少年はゲンカク老師の養子だという。
利用出来る。ハイランドを打ち破る策ならずっと考えていた。ただ、シュウには実行するための手段がなかっただけの話だ。
サウスウィンドウは降伏を選び、グランマイヤー市長は処刑された。サウスウィンドウの兵は大部分が市内に留め置かれ、動けるものなどごく少数。頭もいなければ、軍を指揮するものもない。
そんな状態で何が出来るものか。
だというのにあの子ときたら。久しぶりに顔を見せたと思ったら、まっすぐな目でシュウを戦争に誘った。それが何を意味しているのか、本当に分かっているのか。
そのこ
DOODLE2主君たちがノースウィンドウに行っている間のサウスウィンドウ側。フリックとバーバラ。ネクロードという考えが、フリックはじめ残った人間の頭に浮かんだかな、どうかな。2025-04-23
ビクトール自身から話を聞いたことはない。だた漏れ聞こえる話があったり、自分でも調べてみた結果としてしっている事実と、なんだかんだと長くなってしまった付き合いの中で、なんとなく知れる事を総合しているだけの話だ。
「ビクトール、ノースウィンドウへ行ったんだって?」
合流してきたバーバラが心配そうに眉を寄せる。彼女がまとめた備蓄のリストを捲りながら、何度目か頷いた。
「そう。市長の要請でな」
「随分と酷なことをさせるじゃないか」
「……俺もそう思う」
傭兵たちはなんだかんだとサウスウィンドウに集まってきていたが、宿に顔を出した奴から順に少し離れた村に借りた小屋に向かわせることにしていた。ここにいるのは非戦闘員だけにしておいたほうがいい。サウスウィンドウはまだ俺たちの雇い主じゃないからだ。なんの権限もないのに、ただ武力だけ存在していてはいろいろと邪魔になるだろう。
1601ビクトール自身から話を聞いたことはない。だた漏れ聞こえる話があったり、自分でも調べてみた結果としてしっている事実と、なんだかんだと長くなってしまった付き合いの中で、なんとなく知れる事を総合しているだけの話だ。
「ビクトール、ノースウィンドウへ行ったんだって?」
合流してきたバーバラが心配そうに眉を寄せる。彼女がまとめた備蓄のリストを捲りながら、何度目か頷いた。
「そう。市長の要請でな」
「随分と酷なことをさせるじゃないか」
「……俺もそう思う」
傭兵たちはなんだかんだとサウスウィンドウに集まってきていたが、宿に顔を出した奴から順に少し離れた村に借りた小屋に向かわせることにしていた。ここにいるのは非戦闘員だけにしておいたほうがいい。サウスウィンドウはまだ俺たちの雇い主じゃないからだ。なんの権限もないのに、ただ武力だけ存在していてはいろいろと邪魔になるだろう。
そのこ
DOODLEノースウィンドウ。ネクロードの生存が明らかになった時。2主君からみたビクトールさん。2主君はビクトールさんが好き。2025-04-22
「タイラギ、もしビクトールがおかしくなったらさっさと逃げていいからな」
宿を出る前フリックさんが僕にだけ、それこそおかしな事をいった。対処法でもなんでもなく、ただ逃げろなんて。
ビクトールさんの様子、たしかにずっとおかしかった。その原因が目の前に広がる廃村だ。建物がそこそこきれいに残っているのに、やたらと道々に墓標が建っているのが異様な、静かな静かな風景。
ナナミもアイリさんも言葉がないみたいだった。フリードさんは知っていたのか、いると噂されている化け物を警戒してあたりを見渡している。
ビクトールさんだけがまるで作り物みたいにいつものように笑って見せた。
「なんもねえとこだろ」
2077「タイラギ、もしビクトールがおかしくなったらさっさと逃げていいからな」
宿を出る前フリックさんが僕にだけ、それこそおかしな事をいった。対処法でもなんでもなく、ただ逃げろなんて。
ビクトールさんの様子、たしかにずっとおかしかった。その原因が目の前に広がる廃村だ。建物がそこそこきれいに残っているのに、やたらと道々に墓標が建っているのが異様な、静かな静かな風景。
ナナミもアイリさんも言葉がないみたいだった。フリードさんは知っていたのか、いると噂されている化け物を警戒してあたりを見渡している。
ビクトールさんだけがまるで作り物みたいにいつものように笑って見せた。
「なんもねえとこだろ」
そのこ
DOODLEミューズ陥落直後。フリックとビクトール。アナベルの死、腐れ縁はミューズ陥落の段階で気づいてたよなあって。2025-04-21
小さな小屋で舟を待っている。王国軍の手はコロネまで回っていたが、流通が完全に途絶える事はない。ただ、裏には回るから、ミューズから押し寄せた避難民は港の周りで立往生を強いられている。
自分たちはいつか貸しを作ったコロネの大地主が出すという舟に乗せてもらう手筈だ。広くもない小屋には、似たように逃げてきた金持ちやら彼らが雇った傭兵やらが車座を組んで座っていた。このまま夜まで待つ。傭兵たちも自分たち以上の情報は持っておらず、分かるのは、ミューズが落ちたという事ぐらい。正規軍は自分たち傭兵部隊が撤退するのとほぼ時を同じくして壊滅したという。
まったく、どうしたものやら。
本当に手の届く範囲の市民だけを逃がして、傭兵連中には散り散りになるよう命じるのが精一杯。サウスウィンドウへ、と言いはしたものの、あそこで自分たちが受け入れられるのかも今は分からない。
1146小さな小屋で舟を待っている。王国軍の手はコロネまで回っていたが、流通が完全に途絶える事はない。ただ、裏には回るから、ミューズから押し寄せた避難民は港の周りで立往生を強いられている。
自分たちはいつか貸しを作ったコロネの大地主が出すという舟に乗せてもらう手筈だ。広くもない小屋には、似たように逃げてきた金持ちやら彼らが雇った傭兵やらが車座を組んで座っていた。このまま夜まで待つ。傭兵たちも自分たち以上の情報は持っておらず、分かるのは、ミューズが落ちたという事ぐらい。正規軍は自分たち傭兵部隊が撤退するのとほぼ時を同じくして壊滅したという。
まったく、どうしたものやら。
本当に手の届く範囲の市民だけを逃がして、傭兵連中には散り散りになるよう命じるのが精一杯。サウスウィンドウへ、と言いはしたものの、あそこで自分たちが受け入れられるのかも今は分からない。
そのこ
DOODLE漁師組。タイ・ホーとヤム・クー。よくまあ縁もゆかりもないのに王国軍ににらまれるようなことするよな。2025-04-20
「俺の目は5だな」
賽を触るのも、誰かとばくちをするのも何もかも慣れていない風情ではあった。だがタイ・ホーと相対し、茶碗が目の前に置かれた以上の事を考えてはいないようにも見えた。
目的は舟を出してもらうことで、そのためには自分たちのようなどう見ても堅気には見えない人間と、同じ土俵に上がらねばならぬという緊張感すらなかった。
子供はただ、目の前だけを見ていた。後ろにいる女の子供のほうがよっぽど緊張している。目が泳ぎ、子供の服をつかむ手が震えている。そんなことさえ、まったく意に介さない。
思ったよりも面白い話かもしれない。なんにしろ、賽が何をいうかだが。
「次はお前さんの番だ」
差し出された手に賽を転がしてやる。震えてもいないし、冷えてもいない。子供らしい大きな目が、揺らぎも恐れもなしにただやるべきことを見据えている。
1482「俺の目は5だな」
賽を触るのも、誰かとばくちをするのも何もかも慣れていない風情ではあった。だがタイ・ホーと相対し、茶碗が目の前に置かれた以上の事を考えてはいないようにも見えた。
目的は舟を出してもらうことで、そのためには自分たちのようなどう見ても堅気には見えない人間と、同じ土俵に上がらねばならぬという緊張感すらなかった。
子供はただ、目の前だけを見ていた。後ろにいる女の子供のほうがよっぽど緊張している。目が泳ぎ、子供の服をつかむ手が震えている。そんなことさえ、まったく意に介さない。
思ったよりも面白い話かもしれない。なんにしろ、賽が何をいうかだが。
「次はお前さんの番だ」
差し出された手に賽を転がしてやる。震えてもいないし、冷えてもいない。子供らしい大きな目が、揺らぎも恐れもなしにただやるべきことを見据えている。
そのこ
DOODLEミューズ侵攻、撤退した後のカミューとマイクロトフ。友軍を見捨てて、マイクロトフが苦悩しないわけない。2025-04-19
丘上会議に赴くのならば、国境に兵を詰めておくべきだ。ハイランドはまもなく攻めてくる。ジョウストンの盟主たるミューズを守るのも、騎士の役目だ。マイクロトフのその意見は確かに通って、ミューズに兵を迅速に送ることができた。だた、それが単なるアリバイ工作に過ぎなかったことを、今更突きつけられている
白騎士団長ゴルドーが命じるならば、自分たちはそれに従わざるを得ない。ハイランドははっきりと侵攻を開始した。ゴルドーはいつもの示威行動であると判断しているが、トトやリューベの虐殺は山賊では説明がつかない。略奪先を完全に焼き払うなどありえないのだ。
それでも自分たちは、自らが立てた誓いのために身を引かざるを得ない。いまだ準備の整わないミューズ正規軍の代わりに戦場に立ち続ける傭兵たちを助けるよりも、それは重たいものなのか。
1664丘上会議に赴くのならば、国境に兵を詰めておくべきだ。ハイランドはまもなく攻めてくる。ジョウストンの盟主たるミューズを守るのも、騎士の役目だ。マイクロトフのその意見は確かに通って、ミューズに兵を迅速に送ることができた。だた、それが単なるアリバイ工作に過ぎなかったことを、今更突きつけられている
白騎士団長ゴルドーが命じるならば、自分たちはそれに従わざるを得ない。ハイランドははっきりと侵攻を開始した。ゴルドーはいつもの示威行動であると判断しているが、トトやリューベの虐殺は山賊では説明がつかない。略奪先を完全に焼き払うなどありえないのだ。
それでも自分たちは、自らが立てた誓いのために身を引かざるを得ない。いまだ準備の整わないミューズ正規軍の代わりに戦場に立ち続ける傭兵たちを助けるよりも、それは重たいものなのか。
そのこ
DOODLE昨日ののナナミ側。ナナミちゃんはジョウイを諦められない。2主の周りには人がいるし、ずっと寂しいだろうな。2025-04-17
いろんな人たちが行き交っている。夜には城門が閉まってしまうから、夕日の落ちるこの時間帯は一番人が多い。すっかり聞きなれてしまった都市同盟の言葉で話す人たちが今日の宿を求めたり、門番さんに声をかけたり、露店の客引きをあしらったりしている。
私はと言えば、待っている。城門の隅っこ、誰にも邪魔にならないところにしゃがみ込み、膝を抱えて待っている。
ミューズと違って、ノースウィンドウは近くに森があって、そこを切り開くように道ができているから見通しはあんまり良くはない。でもだからこそ、あの森の、あの木の陰からジョウイがひょっこりと顔を出してくれるんじゃないかと期待してしまう日がある。
1823いろんな人たちが行き交っている。夜には城門が閉まってしまうから、夕日の落ちるこの時間帯は一番人が多い。すっかり聞きなれてしまった都市同盟の言葉で話す人たちが今日の宿を求めたり、門番さんに声をかけたり、露店の客引きをあしらったりしている。
私はと言えば、待っている。城門の隅っこ、誰にも邪魔にならないところにしゃがみ込み、膝を抱えて待っている。
ミューズと違って、ノースウィンドウは近くに森があって、そこを切り開くように道ができているから見通しはあんまり良くはない。でもだからこそ、あの森の、あの木の陰からジョウイがひょっこりと顔を出してくれるんじゃないかと期待してしまう日がある。
そのこ
DOODLE戦争中。ナナミちゃんはジョウイが帰ってくるんじゃないかと待ってしまう日がある。それを、2主はやや苦々しくおもっている。ジョウイに対しての怒り。2025-04-16
レオナさんの酒場の窓から夕方の日差しが長く差し込んでくる。夜の気配をまとった風が背筋を撫でて、僕は思わず首をすくめた。カラスの声と、家路を急ぐ人の声がする。レオナさんはカウンターの中に引っ込んでしまって、僕だけが出してもらったレモネードを前にぼんやりとしていた。
カウンターの高い椅子に座って、足をぶらつかせる。行儀悪く頬杖をついても誰も咎めてはくれない。僕はいま一人だった。ナナミはいない。どこに居るかは知っているけれども。
夕日が真っ赤に空を染める。風がなんだか冷たくて、体の芯が氷になりそう。そんな日に、ナナミは一人、城門の隅に座り込んでいる事がある。このノースウィンドウの住民や物資を運ぶ商人たち、城を守ってくれる兵士たちの邪魔にならないよう、小さく小さく膝を抱えて待っている。
2511レオナさんの酒場の窓から夕方の日差しが長く差し込んでくる。夜の気配をまとった風が背筋を撫でて、僕は思わず首をすくめた。カラスの声と、家路を急ぐ人の声がする。レオナさんはカウンターの中に引っ込んでしまって、僕だけが出してもらったレモネードを前にぼんやりとしていた。
カウンターの高い椅子に座って、足をぶらつかせる。行儀悪く頬杖をついても誰も咎めてはくれない。僕はいま一人だった。ナナミはいない。どこに居るかは知っているけれども。
夕日が真っ赤に空を染める。風がなんだか冷たくて、体の芯が氷になりそう。そんな日に、ナナミは一人、城門の隅に座り込んでいる事がある。このノースウィンドウの住民や物資を運ぶ商人たち、城を守ってくれる兵士たちの邪魔にならないよう、小さく小さく膝を抱えて待っている。
そのこ
DOODLE砦が落ちた後、砦にいるやたらと先輩風を吹かせてくる男の子。あの子は「ビクトールさん」が「拾ってきた」「孤児」……うん、きっとそう!2025-04-15
「ポールの奴が死んだってホント?」
「ああ」
皆が集まる天幕のほうからぶらぶら歩いて、俺のそばに座り込んだビクトールさんはそう重々しく頷いた。
胸がずんと重くなった。俺たちが負けるわけないだろ、と笑っていたのが俺の記憶の中で最後だ。
俺たちは負けたんだって。砦は焼けてしまって、いっぱい知ってる人が死んだ。俺はハイランドのやつらが攻めてくる前に砦から出されちゃったから何にも知らないけど、背後に回られてやられちゃったんだって。
だから俺たちはミューズまで逃げている。時々、一日ほど立ち止まって砦に残ったやつらの合流を待ちながら、少しずつミューズに近づいていた。
本当は小さい子はみんな先に行けって言われてたけど、俺はタイラギが来たからもう先輩なのだ。タイラギより先に安全なところにいるわけにはいかない。タイラギの姿は見えないが、死んだところも誰も見なかったらしい。シロと一緒にいますよ、とキニスンが言っていたからそういうものなのかもしれない。
1720「ポールの奴が死んだってホント?」
「ああ」
皆が集まる天幕のほうからぶらぶら歩いて、俺のそばに座り込んだビクトールさんはそう重々しく頷いた。
胸がずんと重くなった。俺たちが負けるわけないだろ、と笑っていたのが俺の記憶の中で最後だ。
俺たちは負けたんだって。砦は焼けてしまって、いっぱい知ってる人が死んだ。俺はハイランドのやつらが攻めてくる前に砦から出されちゃったから何にも知らないけど、背後に回られてやられちゃったんだって。
だから俺たちはミューズまで逃げている。時々、一日ほど立ち止まって砦に残ったやつらの合流を待ちながら、少しずつミューズに近づいていた。
本当は小さい子はみんな先に行けって言われてたけど、俺はタイラギが来たからもう先輩なのだ。タイラギより先に安全なところにいるわけにはいかない。タイラギの姿は見えないが、死んだところも誰も見なかったらしい。シロと一緒にいますよ、とキニスンが言っていたからそういうものなのかもしれない。
柴のポイピク
DOODLE幻想水滸伝リマスターⅠ&Ⅱクリアしました。ありがとうございました!めちゃめちゃ楽しかったです。細かい違いは許して…2枚目はただの感想です指で1とか2とかやっているのはⅠ、Ⅱどっちでパーティーインしていたかを出したかったとかなんとか 2
そのこ
DOODLEジェス~。動いてたのは分かるんだけど、遅いんだよなあ。
2025ー04ー13
休戦協定を破ったのはハイランド側だ。厳重に抗議したが、先に休戦協定を破ったのはこちらだとはっきり返事が来た。天山の峠で訓練中だったハイランドの少年兵の部隊を、ミューズの傭兵が襲って皆殺しにした。この軍事行動はその報復である。ルカ・ブライトの署名が入った正式な文書で言い切られれば、こちらとしても確認作業に入らざるを得ない。
もちろん、アナベルが傭兵隊長を直々に呼び出して確認したし、彼らもまた有り得ないと言い切った。天山の峠はキャロの街よりさらにハルモニア側に位置するジョウストンから縁の遠い場所だ。そんな場所の、ましてや少年兵を襲う理由がどこにあるというのか。
これが正規軍にかけられた疑惑であるなら、それで済んだだろう。だが、よく言えば市長鳴り物入りの、悪く言えばアナベルが個人的にねじ込んだ傭兵部隊を無条件で信じる人間は正規軍には少なかった。
1216休戦協定を破ったのはハイランド側だ。厳重に抗議したが、先に休戦協定を破ったのはこちらだとはっきり返事が来た。天山の峠で訓練中だったハイランドの少年兵の部隊を、ミューズの傭兵が襲って皆殺しにした。この軍事行動はその報復である。ルカ・ブライトの署名が入った正式な文書で言い切られれば、こちらとしても確認作業に入らざるを得ない。
もちろん、アナベルが傭兵隊長を直々に呼び出して確認したし、彼らもまた有り得ないと言い切った。天山の峠はキャロの街よりさらにハルモニア側に位置するジョウストンから縁の遠い場所だ。そんな場所の、ましてや少年兵を襲う理由がどこにあるというのか。
これが正規軍にかけられた疑惑であるなら、それで済んだだろう。だが、よく言えば市長鳴り物入りの、悪く言えばアナベルが個人的にねじ込んだ傭兵部隊を無条件で信じる人間は正規軍には少なかった。
そのこ
DOODLEマイクロトフとカミュー。昨日フリックがごちゃごちゃ思ってた事なんて、マイクロトフにもちゃんとわかっているよ、という話。2025-04-11
マチルダから離れこの城に身を寄せて一週間程が経つ。朝の訓練は出来うる限り今まで通り続けていたが、今日は少しだけ勝手が違った。
いつからいたのかは分からない。ふと気がついたときに彼はそこにいた。何もかもを見透かすような随分と凪いだ目をした男がミューズに雇われていた傭兵である事は分かっていた。
この戦争に最初から参加し、ハイランドに一矢報いた時にも彼はここにいたと聞き及んでいる。寄せ集めもいいところだったこの新生同盟軍をなんとか形にして見せたのは彼の功績が大きいとも。
成り立ちとそれゆえの脆弱さを知っているからこそ、マイクロトフとカミューが引き連れてきたマチルダ騎士の影響の大きさを正確に計っておかねばならないのだろう。
1151マチルダから離れこの城に身を寄せて一週間程が経つ。朝の訓練は出来うる限り今まで通り続けていたが、今日は少しだけ勝手が違った。
いつからいたのかは分からない。ふと気がついたときに彼はそこにいた。何もかもを見透かすような随分と凪いだ目をした男がミューズに雇われていた傭兵である事は分かっていた。
この戦争に最初から参加し、ハイランドに一矢報いた時にも彼はここにいたと聞き及んでいる。寄せ集めもいいところだったこの新生同盟軍をなんとか形にして見せたのは彼の功績が大きいとも。
成り立ちとそれゆえの脆弱さを知っているからこそ、マイクロトフとカミューが引き連れてきたマチルダ騎士の影響の大きさを正確に計っておかねばならないのだろう。
そのこ
DOODLEカミュー、マイクロトフが仲間になった直後。フリック。カミューさんとマイクロトフの人気がありすぎて、ゴルドーが二人をなんとなく煙たがるのはまあそりゃそうだよな、という気はします。
2025-04-10
「あまり人の友人を射殺せそうな目で見ないで頂けますか」
言葉は物騒だが、元赤騎士団長の目は穏やかに微笑んでいる。朝早くの訓練場の入口で、ぼんやりと佇んでいただけのつもりのフリックとしては、その言いぐさは不本意だ。仲間になったばかりの元マチルダ騎士団と険悪になってもつまらない。
「そんなつもりはなかったんだがな。統率がとれてるな、って」
主である白騎士団長に反旗を翻したマイクロトフに付き合うような連中だ。その戦意は旺盛だし、規律もしっかりしている。城の住民たちからの評判も上々だ。今までいた兵士たちがトゥーリバーやグリンヒルに出自を持つ市民兵が多かった事もあり、新同盟軍に初めて加入した正規の軍隊として、彼らは注目を集めている。
1547「あまり人の友人を射殺せそうな目で見ないで頂けますか」
言葉は物騒だが、元赤騎士団長の目は穏やかに微笑んでいる。朝早くの訓練場の入口で、ぼんやりと佇んでいただけのつもりのフリックとしては、その言いぐさは不本意だ。仲間になったばかりの元マチルダ騎士団と険悪になってもつまらない。
「そんなつもりはなかったんだがな。統率がとれてるな、って」
主である白騎士団長に反旗を翻したマイクロトフに付き合うような連中だ。その戦意は旺盛だし、規律もしっかりしている。城の住民たちからの評判も上々だ。今までいた兵士たちがトゥーリバーやグリンヒルに出自を持つ市民兵が多かった事もあり、新同盟軍に初めて加入した正規の軍隊として、彼らは注目を集めている。
そのこ
DOODLEパーンがテオの前に立ちふさがるときの坊。パーン、うっかりレベル上げが足りなかったりして死にがち。
2025ー04ー09
パーンが笑った。ぎこちなく頬を緩め、目を細める。握った拳を僕に突き付け、僕はそれに自らの拳を添えた。
テオ・マクドールの鉄甲騎馬隊は解放軍を蹴散らした。錬度も足りなければ兵の数も叶わない。勢いだけで勝てるほど甘い相手ではなく、勢いぐらいしか優っているものがないから、それをくじかれれば終わりだ。
今は逃げるしかない。いくらそれが難しくても、僕らは、僕は死ぬわけにはいかないのだ。僕が死ねば、何もかも無意味になってしまう。
だから、僕はここでパーンを置いていかざるを得ない。一度は離れ、それでも僕を信じてくれた兄とも慕う人間を、置いていく理由が僕にはあるのだ。
解放軍の兵たちは、僕を見つめている。行くな、と言うべきなのだろうか。そして共に戦う姿を見せるべきなのか。それはできない。皆が逃げるために殿を務める事はできない。だからと言って、何も言わずにパーンを残し、すたこらっさっさともいかないのが面倒なところだ。
1242パーンが笑った。ぎこちなく頬を緩め、目を細める。握った拳を僕に突き付け、僕はそれに自らの拳を添えた。
テオ・マクドールの鉄甲騎馬隊は解放軍を蹴散らした。錬度も足りなければ兵の数も叶わない。勢いだけで勝てるほど甘い相手ではなく、勢いぐらいしか優っているものがないから、それをくじかれれば終わりだ。
今は逃げるしかない。いくらそれが難しくても、僕らは、僕は死ぬわけにはいかないのだ。僕が死ねば、何もかも無意味になってしまう。
だから、僕はここでパーンを置いていかざるを得ない。一度は離れ、それでも僕を信じてくれた兄とも慕う人間を、置いていく理由が僕にはあるのだ。
解放軍の兵たちは、僕を見つめている。行くな、と言うべきなのだろうか。そして共に戦う姿を見せるべきなのか。それはできない。皆が逃げるために殿を務める事はできない。だからと言って、何も言わずにパーンを残し、すたこらっさっさともいかないのが面倒なところだ。
そのこ
DOODLE傭兵隊の砦陥落後、クルガンとシード。火炎槍、ここで持ち出して来たらそりゃあびびるよなトランの国宝だとおもうんですけど、ビクトールさんはどう思いますか?2025-04-08
部下からの報告を受け、クルガンは元より寄っていた眉間のしわをさらに深くする。
傭兵隊の砦は落ち、焼け跡がくすぶっている。直接攻め込んだ白狼軍は大爆発に巻き込まれ、それなりの損害が出ているという。ルカもまた手ひどい火傷を負った。おののき、撤退を進軍した軍医は、ルカ自身の命により後方へ送られたという。
電撃的にジョウストンへ攻め入り、トト、リューベと壊滅させたハイランド軍が次にその刃を向けたのはミューズが雇う傭兵部隊だ。二年ほど前に設立され、東方の守りを任されている。残しておけばミューズを攻める際に後ろを取られる可能性があり、単純な戦力としても無視するには少々厄介だった。とはいえだ。
1748部下からの報告を受け、クルガンは元より寄っていた眉間のしわをさらに深くする。
傭兵隊の砦は落ち、焼け跡がくすぶっている。直接攻め込んだ白狼軍は大爆発に巻き込まれ、それなりの損害が出ているという。ルカもまた手ひどい火傷を負った。おののき、撤退を進軍した軍医は、ルカ自身の命により後方へ送られたという。
電撃的にジョウストンへ攻め入り、トト、リューベと壊滅させたハイランド軍が次にその刃を向けたのはミューズが雇う傭兵部隊だ。二年ほど前に設立され、東方の守りを任されている。残しておけばミューズを攻める際に後ろを取られる可能性があり、単純な戦力としても無視するには少々厄介だった。とはいえだ。
そのこ
DOODLEシロが来て、キニスンが来なかったのではぐれたんかな、と思って。でもキニスンは心配しなくて、きっとシロなら大丈夫とはっきり言える強さと信頼がある。2025-04-07
縁があって身を寄せた傭兵隊はハイランドによりもろくも崩れ去った。砦は焼かれ、部隊の者はそれでもある程度の秩序をもって退却していく。人数が多すぎると目立つから、と部隊長の命に従って少しずつ部隊の人数は減って行く。キニスンもまた、身の振り方を決めなければならなかった。
道々に用意された、小さな森に隠された小屋の前でキニスンはまた犬笛を吹いた。やはりなんの返事もない。砦陥落の混乱でシロとはぐれてしまって、一昼夜が経とうとしていた。時折、煤だらけの傭兵たちが小屋に立ち寄るからそのたびに彼らへシロの行方を尋ねるのだが、芳しい答えは返ってこない。
彼らには何の責任もないのに、申し訳ないと眉を寄せて頭を下げてくれるのだからお人よし達ばかりだ。
1835縁があって身を寄せた傭兵隊はハイランドによりもろくも崩れ去った。砦は焼かれ、部隊の者はそれでもある程度の秩序をもって退却していく。人数が多すぎると目立つから、と部隊長の命に従って少しずつ部隊の人数は減って行く。キニスンもまた、身の振り方を決めなければならなかった。
道々に用意された、小さな森に隠された小屋の前でキニスンはまた犬笛を吹いた。やはりなんの返事もない。砦陥落の混乱でシロとはぐれてしまって、一昼夜が経とうとしていた。時折、煤だらけの傭兵たちが小屋に立ち寄るからそのたびに彼らへシロの行方を尋ねるのだが、芳しい答えは返ってこない。
彼らには何の責任もないのに、申し訳ないと眉を寄せて頭を下げてくれるのだからお人よし達ばかりだ。
そのこ
DOODLEシロが来て、キニスンが来なかったのではぐれたんかな、と思って。でもキニスンは心配しなくて、きっとシロなら大丈夫とはっきり言える強さと信頼がある。2025-04-07
縁があって身を寄せた傭兵隊はハイランドによりもろくも崩れ去った。砦は焼かれ、部隊の者はそれでもある程度の秩序をもって退却していく。人数が多すぎると目立つから、と部隊長の命に従って少しずつ部隊の人数は減って行く。キニスンもまた、身の振り方を決めなければならなかった。
道々に用意された、小さな森に隠された小屋の前でキニスンはまた犬笛を吹いた。やはりなんの返事もない。砦陥落の混乱でシロとはぐれてしまって、一昼夜が経とうとしていた。時折、煤だらけの傭兵たちが小屋に立ち寄るからそのたびに彼らへシロの行方を尋ねるのだが、芳しい答えは返ってこない。
彼らには何の責任もないのに、申し訳ないと眉を寄せて頭を下げてくれるのだからお人よし達ばかりだ。
1835縁があって身を寄せた傭兵隊はハイランドによりもろくも崩れ去った。砦は焼かれ、部隊の者はそれでもある程度の秩序をもって退却していく。人数が多すぎると目立つから、と部隊長の命に従って少しずつ部隊の人数は減って行く。キニスンもまた、身の振り方を決めなければならなかった。
道々に用意された、小さな森に隠された小屋の前でキニスンはまた犬笛を吹いた。やはりなんの返事もない。砦陥落の混乱でシロとはぐれてしまって、一昼夜が経とうとしていた。時折、煤だらけの傭兵たちが小屋に立ち寄るからそのたびに彼らへシロの行方を尋ねるのだが、芳しい答えは返ってこない。
彼らには何の責任もないのに、申し訳ないと眉を寄せて頭を下げてくれるのだからお人よし達ばかりだ。
そのこ
DOODLE傭兵隊砦陥落のあたり。2主君が逃げるよりも、腐れ縁が逃げたのはあとだとはおもうんですよね流石にね。地下には生きたハイランド兵がいないの、二人が一掃したからだろうなとは思う。
2025-04-05
「本気で勝てると思ってたか」
「本気で勝つ気がない戦争やったつもりなら、金輪際戦争屋なんて止めろ」
ボイラーがごうごうと燃える。ハイランドの奴らがこの砦を蹂躙している音がする。俺の大事な家なのに。礼儀を知らねえ奴らが、土足で踏みにじっていやがる。
それだけでも腹が立つのに、それをどうにかできる力が俺にはないときたもんだ。出来る事と言ったら、全部を燃やしてしまうだけ。何人もの仲間が死んだ。今生きているとはっきり言える奴なんて、隣でせっせと火炎槍の穂先をボイラーに放り込んでいるこいつぐらいだ。
皆の前では出せなかったため息をこれ見よがしに吐き出して、俺もその作業に参加する。理屈の分からない兵器を理屈の分からないまま使って、やってはいけないと言われたことを最後にやって全部終わらせる。
1226「本気で勝てると思ってたか」
「本気で勝つ気がない戦争やったつもりなら、金輪際戦争屋なんて止めろ」
ボイラーがごうごうと燃える。ハイランドの奴らがこの砦を蹂躙している音がする。俺の大事な家なのに。礼儀を知らねえ奴らが、土足で踏みにじっていやがる。
それだけでも腹が立つのに、それをどうにかできる力が俺にはないときたもんだ。出来る事と言ったら、全部を燃やしてしまうだけ。何人もの仲間が死んだ。今生きているとはっきり言える奴なんて、隣でせっせと火炎槍の穂先をボイラーに放り込んでいるこいつぐらいだ。
皆の前では出せなかったため息をこれ見よがしに吐き出して、俺もその作業に参加する。理屈の分からない兵器を理屈の分からないまま使って、やってはいけないと言われたことを最後にやって全部終わらせる。
そのこ
DOODLEピリカと傭兵隊。ジョウイたちが案外好きに動いてて、その間のピリカの世話は傭兵隊が引き受けてたっぽいなって思って。
2025-04-04
なんだか煩くて目が冷めた。お目目の周りが痛くてぎゅっとこすって、また痛い。暗くて、ランプの灯りが小さくて、少しだけあったかいお部屋。知らないお部屋。
ピリカはどうしてこんなところにいるんだろう。おとうさんとおかあさんはどこ?
石の床ははだしの足には冷たかったけれど、ここでじっとしている方がよっぽど嫌だった。
重たい扉を開ければ、わっと人の声がした。なんだか大騒ぎの大人たちがたくさんいる。お祭りの前と言うよりもなんだかもっと怖い。金属がかちゃかちゃと鳴っている。怖い。怖い。あの音は、嫌い。
足が震えた。ドアノブで体を支えても、体の芯からの震えは収まらない。怖い音。怖い声。薄暗い戸棚の中から出たら、おとうさんとおかあさんがいて。
3353なんだか煩くて目が冷めた。お目目の周りが痛くてぎゅっとこすって、また痛い。暗くて、ランプの灯りが小さくて、少しだけあったかいお部屋。知らないお部屋。
ピリカはどうしてこんなところにいるんだろう。おとうさんとおかあさんはどこ?
石の床ははだしの足には冷たかったけれど、ここでじっとしている方がよっぽど嫌だった。
重たい扉を開ければ、わっと人の声がした。なんだか大騒ぎの大人たちがたくさんいる。お祭りの前と言うよりもなんだかもっと怖い。金属がかちゃかちゃと鳴っている。怖い。怖い。あの音は、嫌い。
足が震えた。ドアノブで体を支えても、体の芯からの震えは収まらない。怖い音。怖い声。薄暗い戸棚の中から出たら、おとうさんとおかあさんがいて。
卸@とても眠い
DONE幻水2、クリアしました~(*´▽`*)一度ノーマルエンドになっちゃってロックアックスからやり直したのは内緒(^^ゞ
ビクトールさんが強くて最後までお世話になっちゃった。流石クマさん(´艸`*) 3
そのこ
DOODLEグレミオの外套なんじゃないか、の話をもう一回。坊ちゃん視点。直して坊ちゃんが使っているとしたらどうかな、って。2025-04-03
両の手で大きく外套を広げた。誰もいない夜の部屋。しんと静かで誰の声もしやしない。これを届けた男ももうとっくに去ってしまって、僕は夜の中一人取り残されている。
似合いもしないのに握りしめていた斧と瞳の色と良く似合う緑の外套。随分前に失った僕のグレミオ。ずっと隠し持っていたくせに、明日死ぬかもしれないから返しに来たなんて笑わせる。
どれだけ腕を持ち上げても、僕の背丈では裾が床についてしまう。菌糸にやられたのか、それとも保管方法が悪かったのか、使い込まれて柔らかな外套にはそこここに穴が開いていた。グレミオならすぐに直してしまうだろうが、僕にその技術はない。
自分が腕を上げた場所よりももう少し上にグレミオの頭はあった気がする。手足ばかりがひょろりと長くて、眉を下げて情けなく笑う。僕を叱る時でさえ、厳めしい顔は出来なかった優しい男。
1309両の手で大きく外套を広げた。誰もいない夜の部屋。しんと静かで誰の声もしやしない。これを届けた男ももうとっくに去ってしまって、僕は夜の中一人取り残されている。
似合いもしないのに握りしめていた斧と瞳の色と良く似合う緑の外套。随分前に失った僕のグレミオ。ずっと隠し持っていたくせに、明日死ぬかもしれないから返しに来たなんて笑わせる。
どれだけ腕を持ち上げても、僕の背丈では裾が床についてしまう。菌糸にやられたのか、それとも保管方法が悪かったのか、使い込まれて柔らかな外套にはそこここに穴が開いていた。グレミオならすぐに直してしまうだろうが、僕にその技術はない。
自分が腕を上げた場所よりももう少し上にグレミオの頭はあった気がする。手足ばかりがひょろりと長くて、眉を下げて情けなく笑う。僕を叱る時でさえ、厳めしい顔は出来なかった優しい男。
そのこ
DOODLE坊ちゃんのマント、グレミオのマントを手直ししたやつとかだといいなって。マリーさんが直してたりすんのかなって。2025-04-02
「マリー、少しいいかな」
仕事の落ち着いた午後の宿、カウンターで拭き掃除をしていたマリーに軍主が声をかけた。ひそめた声、毛羽だった布を大事そうに抱えた姿はまるで悪いことをしているかのようだ。
幸いなことに客はおらず、窓から初秋の穏やかな光が入るばかり。兵のざわめきが時折外から聞こえることを、セキアは少し怖がっているように見えた。
「はいはい。どうしたんだい」
ひとりで宿に来るのは本当に珍しい。マクドールのお坊ちゃんと呼ばれていた頃から知っているが、その時もいつだって誰かと連れ立っていた。今はもう亡い金色の髪の従者が、いつだってそばに居て、なんくれとなく世話を焼く。それがずっと続くと、マリーとて信じていた。
1533「マリー、少しいいかな」
仕事の落ち着いた午後の宿、カウンターで拭き掃除をしていたマリーに軍主が声をかけた。ひそめた声、毛羽だった布を大事そうに抱えた姿はまるで悪いことをしているかのようだ。
幸いなことに客はおらず、窓から初秋の穏やかな光が入るばかり。兵のざわめきが時折外から聞こえることを、セキアは少し怖がっているように見えた。
「はいはい。どうしたんだい」
ひとりで宿に来るのは本当に珍しい。マクドールのお坊ちゃんと呼ばれていた頃から知っているが、その時もいつだって誰かと連れ立っていた。今はもう亡い金色の髪の従者が、いつだってそばに居て、なんくれとなく世話を焼く。それがずっと続くと、マリーとて信じていた。
しん☆
INFOpixivアナログ垢にて幻想水滸伝の坊ちゃんを投稿しました
https://www.pixiv.net/artworks/128631729
色鉛筆メインで描きましたので
いつもと雰囲気違うかも
知らない人だと目に付きにくいのも
あるのですが良かったら見に来てね
版権絵 滅多に描かんのでね
そのこ
DOODLE傭兵隊の砦。ビクトールさんが「家」っていうの嬉しくもあり、その後を知っているので悲しくもある2025‐03‐23
ミューズに呼び出され、砦を留守にして数日。ようやく帰ってこられた。轍のはっきりと残る道を歩けばサクサクと軽い足音が立つ。夕方の風が草原をのびのびと走って、髪の毛を乱した。随分と長くなってしまったから、そろそろ切る頃合いだ。明日にでもフリックに頼んでみようか。
まだ灯りのいらない道をゆっくりと歩く。その先に目指す場所がある。慣れた寝床があって、気やすい店主の元で酒が飲めて、迎えてくれる人がいる。
帰る場所だ。ずっと前に失われたビクトールの故郷とよく似た、だが少しばかり血なまぐさい場所を迷うことなく目指してビクトールは歩いていた。
ありがたい話だ。顔を上げれば遠く、小さな森が見えた。明かりがちらちらと木々の間に揺れている。騒がしい連中の騒がしい声が、まだ聞こえるはずもない距離なのに耳に響いて、思わず笑みが漏れた。
1215ミューズに呼び出され、砦を留守にして数日。ようやく帰ってこられた。轍のはっきりと残る道を歩けばサクサクと軽い足音が立つ。夕方の風が草原をのびのびと走って、髪の毛を乱した。随分と長くなってしまったから、そろそろ切る頃合いだ。明日にでもフリックに頼んでみようか。
まだ灯りのいらない道をゆっくりと歩く。その先に目指す場所がある。慣れた寝床があって、気やすい店主の元で酒が飲めて、迎えてくれる人がいる。
帰る場所だ。ずっと前に失われたビクトールの故郷とよく似た、だが少しばかり血なまぐさい場所を迷うことなく目指してビクトールは歩いていた。
ありがたい話だ。顔を上げれば遠く、小さな森が見えた。明かりがちらちらと木々の間に揺れている。騒がしい連中の騒がしい声が、まだ聞こえるはずもない距離なのに耳に響いて、思わず笑みが漏れた。
そのこ
DOODLEミルイヒがクラウディアを愛していたバルバロッサを自伝に書いた、って話がどっかにあったとおもうんですけど、3かな……バルバロッサの孤独を思うとけっこうきついことやってるよなって。2025‐03‐22
ウィンディ。クラウディア様の面影があるとバルバロッサ様は言うが、私にはよくわからない。彼女は心に悪しきものを飼っている。それが何に起因しているのかは分からないが、このまま陛下のおそばにいればきっと帝国に仇を成す。
解放軍の力は日増しに大きくなり、帝国は足元から揺らいでいる。早く何とかしなければ、あの女を陛下から引き離さなければ。
「そうか、戻るのはそろそろだったな」
「はい。レナンカンプのアジトが潰れたとはいえ、解放軍が完全に消滅したわけではありません。自領へ戻り、まず足元から掃除いたしたく思います」
この時期にはいつも西方へ戻る。決まっていた事だというのに、今年はなかなかその気になれなかった。解放軍などと名乗る反乱軍がその牙の一端を覗かせるようになってきていた。帝都の近いレナンカンプのアジトは内通により潰すことができたが、首魁が死んだという確証はいまだに上がってきていない。
1678ウィンディ。クラウディア様の面影があるとバルバロッサ様は言うが、私にはよくわからない。彼女は心に悪しきものを飼っている。それが何に起因しているのかは分からないが、このまま陛下のおそばにいればきっと帝国に仇を成す。
解放軍の力は日増しに大きくなり、帝国は足元から揺らいでいる。早く何とかしなければ、あの女を陛下から引き離さなければ。
「そうか、戻るのはそろそろだったな」
「はい。レナンカンプのアジトが潰れたとはいえ、解放軍が完全に消滅したわけではありません。自領へ戻り、まず足元から掃除いたしたく思います」
この時期にはいつも西方へ戻る。決まっていた事だというのに、今年はなかなかその気になれなかった。解放軍などと名乗る反乱軍がその牙の一端を覗かせるようになってきていた。帝都の近いレナンカンプのアジトは内通により潰すことができたが、首魁が死んだという確証はいまだに上がってきていない。
そのこ
DOODLEポール。公式紹介ツイートにも出てくるぐらいだもんな。彼がいるから、傭兵隊の砦に2主君がなじみやすくなった気がする。
傭兵隊にはいくらか子供がいる。おれがここに来る前からもいたし、ここに来てからも何人か増えた。ボスであるビクトールさんが行き場のない子供を端から拾ってくる悪い癖があるからだ。
ここは傭兵の砦なんだ。子供がそこらをうろちょろしたらたまったものじゃない。命のやり取りに邪魔になるし、何より危なっかしくて仕方ない。おれは皆の中で一番年長だから、面倒を見てやる義務がある。
ここでは飯が食えるし働くこともできる。危なくなればおれが守ってやれる。いい所だ
休戦協定が結ばれたからなのか、砦はどこか緩んだ気配が漂っている。演習という名目で三分の一ぐらいの人数とビクトールさんたちが砦にいないのも多分良くないんだろうな。おれはおれで倉庫の片づけをしないといけないと知りつつも、こうしてのんびりと日向ぼっことしゃれこんでいる。
1738ここは傭兵の砦なんだ。子供がそこらをうろちょろしたらたまったものじゃない。命のやり取りに邪魔になるし、何より危なっかしくて仕方ない。おれは皆の中で一番年長だから、面倒を見てやる義務がある。
ここでは飯が食えるし働くこともできる。危なくなればおれが守ってやれる。いい所だ
休戦協定が結ばれたからなのか、砦はどこか緩んだ気配が漂っている。演習という名目で三分の一ぐらいの人数とビクトールさんたちが砦にいないのも多分良くないんだろうな。おれはおれで倉庫の片づけをしないといけないと知りつつも、こうしてのんびりと日向ぼっことしゃれこんでいる。
そのこ
DOODLEフリックがいつ坊ちゃんを認めたか、ってあれですけど、最初からでもいいし、グレミオの事があってからでもいい。ただ、実際、落ち着くまでが早すぎるので、最初っから仕込みだったんじゃないかという疑惑はある。
これは折衷案。
2025‐03‐20
まったく愚か極まりない。
悪いほうだけ考えろ、とだけ教わったわけではないが、最悪の思考に蓋をしろ、とはけして教わらなかったはずだ。何しろ俺たちがしているのは革命戦争で、トップが死ぬことは許されないが、ありえないことではない。
次を、最悪の次の最善手を常に考えておかねばならない。
オデッサの生死が確認できていないのに健在なりと流した噂も、生きているオデッサが再建したと標榜する湖の城の解放軍へハンフリーたちを先に送ったのも、全部最悪の次の手だ。
だから俺は本当は知っていたのだ。オデッサが生きていない事なんて、とっくの昔に。
鎧戸の隙間から差し込む光はまだ強く明るく、夜には程遠い。湖の音と連れてきた兵たちとここに暮らす人間たちの気配がして、煩いぐらいだ。
974まったく愚か極まりない。
悪いほうだけ考えろ、とだけ教わったわけではないが、最悪の思考に蓋をしろ、とはけして教わらなかったはずだ。何しろ俺たちがしているのは革命戦争で、トップが死ぬことは許されないが、ありえないことではない。
次を、最悪の次の最善手を常に考えておかねばならない。
オデッサの生死が確認できていないのに健在なりと流した噂も、生きているオデッサが再建したと標榜する湖の城の解放軍へハンフリーたちを先に送ったのも、全部最悪の次の手だ。
だから俺は本当は知っていたのだ。オデッサが生きていない事なんて、とっくの昔に。
鎧戸の隙間から差し込む光はまだ強く明るく、夜には程遠い。湖の音と連れてきた兵たちとここに暮らす人間たちの気配がして、煩いぐらいだ。
そのこ
DOODLEたまにはちゃんとビクフリぽいのも書かないと忘れちゃうからなオデッサがいることが大前提になってるほうが好きなんだよね自分は。
2025/03/19
情けない事に夢見はあまり良くないほうだ。悪いものに追いかけられるし、家族は真っ赤な目で腐った腕で俺に縋りついてくる。どうして見捨てた、どうして殺した。どうしてお前ばかりが生きている。
ただ俺はこれが夢だともうとっくに知っている。目を覚ます方法は分からないから、泣きわめく姉と弟を抱きしめ、その臭気に顔を歪めてため息なんかをつきながら、目が覚めるのを待つばかり。
そうしてふと気が付くのだ。髪を撫でる掌の感触とあることと自分の名前をささやく柔らかな声音に現実味があることを。
目を開けてみれば朝というには暗かった。外からは雨の音がする。ぱたぱたぽつぽつ。時折ざあ、と風が大きくリズムを崩す。起きるにはまだ少し早そうだ。
1351情けない事に夢見はあまり良くないほうだ。悪いものに追いかけられるし、家族は真っ赤な目で腐った腕で俺に縋りついてくる。どうして見捨てた、どうして殺した。どうしてお前ばかりが生きている。
ただ俺はこれが夢だともうとっくに知っている。目を覚ます方法は分からないから、泣きわめく姉と弟を抱きしめ、その臭気に顔を歪めてため息なんかをつきながら、目が覚めるのを待つばかり。
そうしてふと気が付くのだ。髪を撫でる掌の感触とあることと自分の名前をささやく柔らかな声音に現実味があることを。
目を開けてみれば朝というには暗かった。外からは雨の音がする。ぱたぱたぽつぽつ。時折ざあ、と風が大きくリズムを崩す。起きるにはまだ少し早そうだ。
そのこ
DOODLE0318一人称の揺らぎ、みたいなポスト見て、一人称が「私」のフリックも2なら生息できるのでは、とおもったあれ。らくがき。
「その件は私から」
役人たちからビクトールへの質問に、フリックが応えた。白いシャツにタイをゆるく結んだ格好は居並ぶ役人たちとそうは変わらない。居心地の悪いふかふかの椅子から立ち上がる様をなんとなしに見上げていると、フリックの指先が会議の進行を示すかのように書類の一点をさした。
その間も、ミューズへの報告はよどみなく続いていく。
まったく何をさせてもそれなりに取り繕ってしまう男だ。
傭兵隊とてミューズの正式な組織の一部だ。定例会議への出席は義務付けられている。毎月何を成し、いくら金を使い、次に何を行うのか。自分たちの存在意義は自分たちで示さなければならない。
面倒この上ない。だからと言って、出席しなければ自分たちを推したアナベルの名前に傷がつく。それもまたビクトールの本意ではなかった。
2178役人たちからビクトールへの質問に、フリックが応えた。白いシャツにタイをゆるく結んだ格好は居並ぶ役人たちとそうは変わらない。居心地の悪いふかふかの椅子から立ち上がる様をなんとなしに見上げていると、フリックの指先が会議の進行を示すかのように書類の一点をさした。
その間も、ミューズへの報告はよどみなく続いていく。
まったく何をさせてもそれなりに取り繕ってしまう男だ。
傭兵隊とてミューズの正式な組織の一部だ。定例会議への出席は義務付けられている。毎月何を成し、いくら金を使い、次に何を行うのか。自分たちの存在意義は自分たちで示さなければならない。
面倒この上ない。だからと言って、出席しなければ自分たちを推したアナベルの名前に傷がつく。それもまたビクトールの本意ではなかった。