A-10
allhandsquiet
TRAININGワードパレットより頂いたお題:
メンヘラ審神者×加州
A-10「冗談のふり」「何それ、お洒落だね」
通りすがった加州に目を留めて、兄弟と談笑していた信濃は思わず声をかけた。年長組とはいえ懐っこい粟田口の一団は、あっという間に獲物を囲う。
可愛くありたい初期刀が普段から顕現時の装束と異なる格好をしていることが多いのは知っていたが、今日はまた一段と風変わりな格好である。
色味は戦闘服と同じ黒に赤を基調としているが、機能性はよくなさそうだ。血や死骸を模したおどろおどろしい柄については敵への威嚇に使えそうなのでいいだろう。形状に難がある。
身を覆う部分が所々妙に裂けたり穴を開けたようになっているにもかかわらず、仮留めに使えるはずの安全ピンやベルトがぶら下がっているのは、そういう破損をわざと避けたような一枚布部分だ。そのくせ裾や袖周りへは明らかに装飾でしかない布や紐がたっぷりと添付され、補強材であるはずの鋲もあちこちへと無秩序に散さられている。サイズも上着はだぼっと大きく下衣の方はピチピチで、どちらも体に合っていない。当たり前ではあるが、防具も一切見あたらない。
つまり、どう見てもそれは、完全に着飾る為だけの衣装に間違いなかった。
「ん……おお、似合ってるぜ旦那。そりゃ 3569