Recent Search
    Create an account to secretly follow the author.
    Sign Up, Sign In

    dissolve

    ぜね@ガロンゾ労働賛歌

    TRAININGStir until the sugar dissolves / グラユス
    21.03.20 / 1200字
    深い眠りに意識を引きこむ波濤の、その波の引いている、覚醒の水面に浮かびかかったころに、グランはなにかあたたかいものが肌に触れるのを感じて、閉じていた瞼をかすかに震わせた。朝になって自然に目が覚めたのならば、目を閉じていてもその向こうに陽光が部屋にさしこんでいるのを感じるから、それがないいまはまだ夜の明け離れていない時刻なのだと茫洋と考えた。
     肉体が制御の下に戻りつつあるうちに、グランは眠りに落ちる前の記憶を漫然とたぐり、自分がほかの人間と同じベッドに身体をおさめているのだと思い出した。いまグランの右手になぞるように触れているのはその人物なのだ。意識にかかっていた白い霞が薄れるにつれ、その中にいる人物の輪郭が鮮明に心の目に見えた。
     まだ少し重いような心地のする瞼を緩慢にひらくと、果たしてグランの隣に身を横たえた彼が、その顎のあたりに引き寄せたグランの右手を己の手のひらで覆い、形を確かめるように緩やかにさすっているのだった。雪国の空に似た薄灰の瞳がまんじりともせずこちらを見据えていた。まだ夢の綿にうずもれたままのような調子で名を呼ぶと、ユーステスはいつもの低く凪いだ声で「すまない。起こ 1199