sannomekun
DONE彰冬春休み間近の図書室は人もまばらで、いつにも増して静かだ。純粋に読書しているのはカウンターに座る図書委員の女子くらいで、残りの生徒のほとんど、ここの机に向かっているのは数少ない国立大の後期試験を控える三年生だった。
とはいえ彰人はまだ二年生なので、受験とは全く関係のない補習のプリントを机の上に乗せたまま、ガラス越しに受けるあたたかい日差しの下でうつらうつらとしている。
カタン、とシャーペンの落ちる音がして彰人はまどろんでいた意識をはっきりと取り戻す。顔を上げて辺りを見回すと、机に向かい始めた時とほとんど変わらない光景が広がっている。変わっているのは、紙上に半ば眠りながら書いたミミズのような文字が弱々しく浮かんでいることくらいだった。
どのくらい眠っていたのだろう。わざわざ図書室まできたのに、日当たりの良い席をとったのがいけなかった。このまま提出してやり直しを命じられても面倒なので、ミミズ文字に消しゴムをかけ、さほどかわりばえのしない字を改めて濃く書き直す。
無理をして入ったから当然といえば当然だが、必死の受験勉強が功を奏することもなく、成績は一向に振るわなかった。この高校はそれ 4418