陽炎@ポイピク
DONE #アヴドゥル生誕祭おひつじ座『ガニュメートは天で輝く』
承太郎とアヴドゥルさんのお話です
CP未満のつもりで書きました秋の闇夜に鈴虫の音が静かに響く。
暗がりの中で葉掠音が時折外から聞こえてくる。
俺は旅立つ前の高潮感で中々寝付けず夜風に当たる事にした。お袋の傍で細い掌を握ったまま眠るジジイの落ち掛けたブランケットを掛け直して布団から抜け出す。
暫く床を鳴らさねぇように廊下を歩いて行くと縁側に腰掛けたまま佇む人影があり俺はふと足を止めた。
「アヴドゥル」
名を呼ぶと金木犀の香りと共に占い師の男は振り返る。
「む……?承太郎か」
そいつ――アヴドゥルは、ジジィから借りたのか親父の着流しに袖を通していた。
髪を解いて艶やかな長い黒髪をゆるやかに後ろで纏めたアヴドゥルは不思議と馴染んでいた。
遠い異国からやって来たこの男は俺をわざわざ塀の中から出した。さしずめ檻の中から獅子を出す猛獣使いのような男だ。
全てを焼き尽くすような焔を操るこの男によって、俺はまたこの家へと戻って来た。
だが帰ってすぐお袋が倒れた。DIOの仕業と突き止めた俺は、エジプトへ旅立つ事となった。
この男にとっては、巡礼のようなものだろう。
「……明日には出発だ」
「分かっている。今の内に星を眺めておこうと思ったのだ」
「星――?」
アヴド 2615