浬-かいり-
DOODLEここみさしあわせわけっこ 春先とは言え、まだ冷える日も多い。空気も乾燥している。その上部活で寒空の下に晒された日には、手のひらはカサカサに乾燥しきっていた。
スクールバッグを漁って、ハンドクリームを取り出す。薬用と書かれたシンプルなデザインのハンドクリームは、薬局で安く売られていたものだ。……女子高生が持つにしては、あまりにも飾りっ気が無いけれど。
「美咲ーーーーー!!」
蓋を開けたところで、遠くからよく知った声。振り向いて身構えれば、こころが勢いよく抱き着いてきた。ほぼ突進のそれをなんとか抱き留めると、ハンドクリームの蓋が地面に落ちた。
「美咲、部活お疲れ様!」
「ありがと、こころ。もしかして待っててくれてた?」
「美咲と一緒に帰ろうと思って待ってたの!」
1654スクールバッグを漁って、ハンドクリームを取り出す。薬用と書かれたシンプルなデザインのハンドクリームは、薬局で安く売られていたものだ。……女子高生が持つにしては、あまりにも飾りっ気が無いけれど。
「美咲ーーーーー!!」
蓋を開けたところで、遠くからよく知った声。振り向いて身構えれば、こころが勢いよく抱き着いてきた。ほぼ突進のそれをなんとか抱き留めると、ハンドクリームの蓋が地面に落ちた。
「美咲、部活お疲れ様!」
「ありがと、こころ。もしかして待っててくれてた?」
「美咲と一緒に帰ろうと思って待ってたの!」
浬-かいり-
DOODLEここみさ「キミと夜明けを迎えたら」と「夜明けを迎えた先」の間くらいのはなし それは、大学1年生の夏。夏休みに入ってすぐのことだった。
同じ学部の友人が、あたしから借りてそのまま返すのを忘れていた辞書を返したいからと、最寄りの駅まで出かけて行った。そんなすぐ済む用事にいちいち美咲を付き合わせてしまうのも悪いし、人が多い駅にもあまり連れて行きたくないから黒服さんを行かせようと思ったのだけど、「急に黒服さん来たら大学の人びっくりするって。少しくらい待てるから、こころが行きなよ」って言われてしまった。
それでも美咲を家に置いていくのは心配だったから、黒服さんの一人に付き添いをお願いした。
友人から辞書を受け取って、お礼に食事でも奢るから行かないかという申し出を丁寧に断って家路を急ぐ。途中、あたしに付いてきた黒服さんに呼び止められた。
2581同じ学部の友人が、あたしから借りてそのまま返すのを忘れていた辞書を返したいからと、最寄りの駅まで出かけて行った。そんなすぐ済む用事にいちいち美咲を付き合わせてしまうのも悪いし、人が多い駅にもあまり連れて行きたくないから黒服さんを行かせようと思ったのだけど、「急に黒服さん来たら大学の人びっくりするって。少しくらい待てるから、こころが行きなよ」って言われてしまった。
それでも美咲を家に置いていくのは心配だったから、黒服さんの一人に付き添いをお願いした。
友人から辞書を受け取って、お礼に食事でも奢るから行かないかという申し出を丁寧に断って家路を急ぐ。途中、あたしに付いてきた黒服さんに呼び止められた。
浬-かいり-
DOODLEここみさ夢だと思いたい 部屋に入ってくる太陽の光が眩し過ぎて目を開ける。頭が痛い。
自室のベッドで目覚めたあたしは欠伸を噛み殺した。眠い。やけに寒い。
(あれ、いつ帰ってきたんだっけ……)
昨日はスマイル遊園地でハロハピのライブがあった。成人した今も、こうしてたまにライブに呼んでもらえるのだから有り難いことだ。
ライブは大成功に終わり、その後メンバー五人で打ち上げに行ったのは覚えてる。
(その後……その後は……?)
「んぅ……、」
思考の最中、自分以外の声がしてびっくりして隣を見る。
あたしの隣ではこころが眠っていた。大人っぽくなった顔も、眠っているとあどけない。
(……いや、そうじゃなくて! なんでこころが此処で寝てるの!?)
1759自室のベッドで目覚めたあたしは欠伸を噛み殺した。眠い。やけに寒い。
(あれ、いつ帰ってきたんだっけ……)
昨日はスマイル遊園地でハロハピのライブがあった。成人した今も、こうしてたまにライブに呼んでもらえるのだから有り難いことだ。
ライブは大成功に終わり、その後メンバー五人で打ち上げに行ったのは覚えてる。
(その後……その後は……?)
「んぅ……、」
思考の最中、自分以外の声がしてびっくりして隣を見る。
あたしの隣ではこころが眠っていた。大人っぽくなった顔も、眠っているとあどけない。
(……いや、そうじゃなくて! なんでこころが此処で寝てるの!?)