iamkakure_
PASTルイ亜と言い張る迷迷糊糊『やあ、烏麻亜蝶。』
耳の近くで、まとわりつくような声。「なんだ、ルイ…。」そう言いかけてハッと我に返る。今日はオフ、ベッドにある時計は10時を指している。そうすると、ルイはもう美術館に行っているはずだ。じゃあこの声はいったい、誰だ。『ハハ、残念』だらしなく口をあけているそいつは、じりじりと烏麻亜蝶に詰め寄る。『今日はオフだろ?お前はいつものように、哲学や心理学の本を読むのか?もしくはそれに紅茶もセットか?そんなことしててもまだ時間は余っているだろうから、気休め程度のエゴサーチでもすればいいんじゃないか?』そう言ってケタケタ嗤う声は胸のあたりが詰まるような気持ち悪さをはらんでいた。「うるさい…黙れ。」目覚まし時計を強めに置きなおす。『烏麻亜蝶、オフの日のお前はまるで充電の切れたスマホよりも動かないただ・・の・がらくた・・・・だな。いや、お前の現状に近い表現としては…(ミズの切れたお華)のようだ、というのが適切か?』目の前の男は、今にも笑い出しそうな声色でこちらをじろじろと覗き込むが、目元がぼんやりとしてよく見えない。それが一層不快感を増長させた。「うるさい。へたくそなたとえ話は時間の無駄だ。」相手にしてはならないと思い、亜蝶は正反対の方向を向いた。『まあ、今日のその身体じゃ、ずっとベッドでうなだれているのがお似合いじゃないか?』なぜか、直前まで後ろにいたはずの男が目の前に立っていた。男は首を不自然に前に動かした。男はどんなに向きを変えてもこちらの目の前に立つ。『なあ、なあ、烏麻亜蝶、がらくたの、偽物の、張りぼての、人形』亜蝶はそれらのワードを聞いて、神経が磨り減る想いがした。
2095耳の近くで、まとわりつくような声。「なんだ、ルイ…。」そう言いかけてハッと我に返る。今日はオフ、ベッドにある時計は10時を指している。そうすると、ルイはもう美術館に行っているはずだ。じゃあこの声はいったい、誰だ。『ハハ、残念』だらしなく口をあけているそいつは、じりじりと烏麻亜蝶に詰め寄る。『今日はオフだろ?お前はいつものように、哲学や心理学の本を読むのか?もしくはそれに紅茶もセットか?そんなことしててもまだ時間は余っているだろうから、気休め程度のエゴサーチでもすればいいんじゃないか?』そう言ってケタケタ嗤う声は胸のあたりが詰まるような気持ち悪さをはらんでいた。「うるさい…黙れ。」目覚まし時計を強めに置きなおす。『烏麻亜蝶、オフの日のお前はまるで充電の切れたスマホよりも動かないただ・・の・がらくた・・・・だな。いや、お前の現状に近い表現としては…(ミズの切れたお華)のようだ、というのが適切か?』目の前の男は、今にも笑い出しそうな声色でこちらをじろじろと覗き込むが、目元がぼんやりとしてよく見えない。それが一層不快感を増長させた。「うるさい。へたくそなたとえ話は時間の無駄だ。」相手にしてはならないと思い、亜蝶は正反対の方向を向いた。『まあ、今日のその身体じゃ、ずっとベッドでうなだれているのがお似合いじゃないか?』なぜか、直前まで後ろにいたはずの男が目の前に立っていた。男は首を不自然に前に動かした。男はどんなに向きを変えてもこちらの目の前に立つ。『なあ、なあ、烏麻亜蝶、がらくたの、偽物の、張りぼての、人形』亜蝶はそれらのワードを聞いて、神経が磨り減る想いがした。
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PASTルイ亜です。ギリギリ全年齢。亜蝶がネコちゃんになってしまった
赤目の黒猫(ルイ亜)【亜蝶】10時、オフ、火曜日。
いつもより布団が重たい気がする。
というか、大きい気がする。
そう思って、眠たいながらに前髪をグシャッとあげようとした時に、
その前髪がないことに気が付いた。
だが、毛の感触はある。脱毛は済ませているはずなのだが。布団から出るのにやたらと時間がかかるので、鏡でも見に行くか。
【ルイ】9時、オフ、火曜日。亜蝶がいない。軽く部屋を見に行ったのだが、布団は人型のそれを保ったままに、誰もいなくなっていた。俺が見逃すはずがないのだが。鬨に聞いたが、散歩に行かれたのですかね?と寝ぼけ半分に答えるだけであった。あいつが出かけるとしたら一体どこに向かうのだろうか。
【亜蝶】11時、オフ、火曜日。鏡を見ると、そこには俺が写っていなかった。いや、正確には「いる」が、これは俺ではない。天井という天井は大聖堂のように高く、椅子は柱のように、床の木目は畳のような広さだった。そしてこれは、俺にとって、あまりにも、認めたくない現実である。ふさふさの尻尾と耳を自らの意思で動かせるあたり、やはりそうなのだろう。烏麻亜蝶は─俺は、猫である。
1732いつもより布団が重たい気がする。
というか、大きい気がする。
そう思って、眠たいながらに前髪をグシャッとあげようとした時に、
その前髪がないことに気が付いた。
だが、毛の感触はある。脱毛は済ませているはずなのだが。布団から出るのにやたらと時間がかかるので、鏡でも見に行くか。
【ルイ】9時、オフ、火曜日。亜蝶がいない。軽く部屋を見に行ったのだが、布団は人型のそれを保ったままに、誰もいなくなっていた。俺が見逃すはずがないのだが。鬨に聞いたが、散歩に行かれたのですかね?と寝ぼけ半分に答えるだけであった。あいつが出かけるとしたら一体どこに向かうのだろうか。
【亜蝶】11時、オフ、火曜日。鏡を見ると、そこには俺が写っていなかった。いや、正確には「いる」が、これは俺ではない。天井という天井は大聖堂のように高く、椅子は柱のように、床の木目は畳のような広さだった。そしてこれは、俺にとって、あまりにも、認めたくない現実である。ふさふさの尻尾と耳を自らの意思で動かせるあたり、やはりそうなのだろう。烏麻亜蝶は─俺は、猫である。