drsakosako
TRAININGガイアアルベリヒ誕生日おめでとう義兄弟のおはなし カプ要素なし思い起こす事も億劫になる程の、昔話。
普段こそ静寂の色が濃い屋敷だったが、屋敷の主、そしてその家族だけでなく、使用人の誰かが誕生日の時には、決まって宴会を催したものだ。幼い未成年の子がいるからという理由で、卓の上に並ぶのは、芳醇な酒と旨味のある肴ではなく、甘い果実水と花を模した砂糖菓子が乗ったとろけるような菓子だけ。それでも大人達は皆笑顔で楽しそうにしていたし、また、自分の口に運ぶ果実水や菓子の甘さに、自らも、そして彼も、顔をほころばせていた事を覚えている。
懐古するほど昔の話ではないはずなのに、その思い出達には昏い夕日のような色がかかっているような気がした。
「……」
ディルックの視線が、店内――エンジェルズシェアのテーブルの隅々を辿る。本日も盛況、樽のような杯に並々を酒を注ぎ豪快に飲み干す者もいれば、透き通ったワイングラスに数口程度注がれた酒の香りを楽しむ者、はたまたシンプルながらも洗練された肴に舌鼓を打つ者まで様々だ。
グラスを一つ磨いては戻し、ワインの在庫を確認する。仕込みを終え提供されるのを待つ肴や食材の数々の余りもついでに確認して、客入りを見つつ残りの営業時間を思案 2513