練(ねる)
DONEレジェユニ婚同棲小話。仕事で帰宅が遅くなる想楽くんのことを、先にお風呂を済ませて待っていることにした筈の二人だが……?
※雨クリ(攻フェラ)、想クリ、想雨(雨想のリバ)を匂わす表現を含みますので、ワンクッション置いてます。 4
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DONEクリ想/降りてくる牡蠣を貰ったクリスさんが、想楽に思いを馳せる話。クリ→想
【クリ想】降りてくる 知人の海女からと言って古論クリスが保冷バッグの中の牡蠣を見せると、北村想楽は呆れ混じりの笑みを浮かべた。
「クリスさん、海女の知り合いまでいるんだねー」
「はい! 彼女は私と同い年で、十年以上も海女漁をしています」
言いながらクリスは殻付きの牡蠣を見下ろす。生でも食べられる牡蠣に備えて、今日のクリスはレモンやタバスコも持ち込んでいた。保冷バッグいっぱいの牡蠣はどれも大振りで、見ているだけで海の恵みへの喜びが湧く。
「十年かー」
「牡蠣を頂くようになってからは三年ほどですが、年々大きい牡蠣を頂けるようになっています。牡蠣の降りてくる場所が分かるようになってきたのだそうです」
「降りるってどういうことー?」
1282「クリスさん、海女の知り合いまでいるんだねー」
「はい! 彼女は私と同い年で、十年以上も海女漁をしています」
言いながらクリスは殻付きの牡蠣を見下ろす。生でも食べられる牡蠣に備えて、今日のクリスはレモンやタバスコも持ち込んでいた。保冷バッグいっぱいの牡蠣はどれも大振りで、見ているだけで海の恵みへの喜びが湧く。
「十年かー」
「牡蠣を頂くようになってからは三年ほどですが、年々大きい牡蠣を頂けるようになっています。牡蠣の降りてくる場所が分かるようになってきたのだそうです」
「降りるってどういうことー?」
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DONEクリ想/私達のbaiser2022年モバエムのバレンタイン後の話
【クリ想】私達のbaiser バレンタインが終わるまではと逢瀬をしばらく我慢していたから、久しぶりのオフにクリスを自宅へ招いた想楽は待ちきれずにクリスの膝に乗った。
「――想楽……」
向き合う形で想楽はクリスを見下ろす。欲望を隠そうともしない瞳がクリスに向けられ、ずいと顔が寄る。目を開けたままクリスは想楽の唇を受け入れようとするが、すんでのところで想楽の顔が止まる。
「…………、っ」
破裂するように息が漏れる。
「……想楽?」
想楽の唇がくにゃりと曲がったかと思えば喉奥から笑いがこみあげる。ごめん、と告げる想楽は困惑を浮かべ、クリスに顔を寄せたまま言い訳を始めた。
「――最近、仕事が色々入ってたから」
暖房を点けることすら忘れて抱き合ったせいで部屋は冷え切っていた。遅まきながらそう気付いて想楽はエアコンのリモコンに手を伸ばし、無機質な起動音を立ててから続きを述べる。
810「――想楽……」
向き合う形で想楽はクリスを見下ろす。欲望を隠そうともしない瞳がクリスに向けられ、ずいと顔が寄る。目を開けたままクリスは想楽の唇を受け入れようとするが、すんでのところで想楽の顔が止まる。
「…………、っ」
破裂するように息が漏れる。
「……想楽?」
想楽の唇がくにゃりと曲がったかと思えば喉奥から笑いがこみあげる。ごめん、と告げる想楽は困惑を浮かべ、クリスに顔を寄せたまま言い訳を始めた。
「――最近、仕事が色々入ってたから」
暖房を点けることすら忘れて抱き合ったせいで部屋は冷え切っていた。遅まきながらそう気付いて想楽はエアコンのリモコンに手を伸ばし、無機質な起動音を立ててから続きを述べる。
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DONEクリ想/後夜祭想楽の誕生日の翌日の話
【クリ想】後夜祭 三人での昼食のあとプレゼントを受け取って、夜を恋人と過ごして、北村想楽が目覚めたのは正午を回った頃だった。
時計を見ずとも、窓の外が賑やかだから昼頃まで寝てしまっていたことは分かっていた。きっと古論クリスは早起きして海に行き、そのまま帰って来てはいないだろうーーそう思っていたから、探ったベッドの隣にクリスの腕を感じた想楽は思わず目を見開いた。
「……クリスさんー?」
「はい」
本を閉じる音がしたかと思えば、寝そべる想楽の視界にクリスの顔が訪れる。
「おはようございます、想楽。よく眠れましたか?」
「うんー……」
クリスの声にも、顔にも眠気はない。緩慢に視線を向けるとクリスの手元では本が開かれており、脇に置かれたメモ帳にも何かが書きつけられていた。読書や書きものに向いた机なら別室にもあるのに、と疑問が湧いてから、すぐに想楽はクリスがベッドで読書をしていたのだと気がついてクリスの腕を取る。
968時計を見ずとも、窓の外が賑やかだから昼頃まで寝てしまっていたことは分かっていた。きっと古論クリスは早起きして海に行き、そのまま帰って来てはいないだろうーーそう思っていたから、探ったベッドの隣にクリスの腕を感じた想楽は思わず目を見開いた。
「……クリスさんー?」
「はい」
本を閉じる音がしたかと思えば、寝そべる想楽の視界にクリスの顔が訪れる。
「おはようございます、想楽。よく眠れましたか?」
「うんー……」
クリスの声にも、顔にも眠気はない。緩慢に視線を向けるとクリスの手元では本が開かれており、脇に置かれたメモ帳にも何かが書きつけられていた。読書や書きものに向いた机なら別室にもあるのに、と疑問が湧いてから、すぐに想楽はクリスがベッドで読書をしていたのだと気がついてクリスの腕を取る。
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DONE告知本作は2022年6月12日(日)開催のPassion! VIRTU@L STAGE現地1st in福生(パバステ現地)、スペース番号【し20】にて頒布開始予定の新刊です。
通販→https://roomshiki.booth.pm(6/19以降受付予定)
incandescent(3,000K) ※一部掲載//incandescent(3,000K)
年が明けると、少しずつ仕事の忙しさが穏やかになってきた。
バレンタインや新年度に向けた仕事が増え始めてはいるものの、クリスと想楽はタイミングを合わせて終日の休みを取ることが出来た。
家を出る前に、想楽は鏡を覗き込む。仕事でヘアアレンジをする機会が多かったから、ヘアワックスを使わずに人前に出ることは久しぶりだ。クリスは想楽がどんな髪型に変わってもそのたびに褒めるから、想楽も悪い気はしない。
(髪型、変えてみてもいいのかもー?)
洗面所には想楽の兄が使っている整髪料がある。毎朝ここで髪をセットしてから出かける兄は、使いたければ使っても良い、と言っていた。「頻繁に使うんなら自分で買えよー」と笑っていたから、想楽が一度使ったところで咎められることはないだろう。
5001年が明けると、少しずつ仕事の忙しさが穏やかになってきた。
バレンタインや新年度に向けた仕事が増え始めてはいるものの、クリスと想楽はタイミングを合わせて終日の休みを取ることが出来た。
家を出る前に、想楽は鏡を覗き込む。仕事でヘアアレンジをする機会が多かったから、ヘアワックスを使わずに人前に出ることは久しぶりだ。クリスは想楽がどんな髪型に変わってもそのたびに褒めるから、想楽も悪い気はしない。
(髪型、変えてみてもいいのかもー?)
洗面所には想楽の兄が使っている整髪料がある。毎朝ここで髪をセットしてから出かける兄は、使いたければ使っても良い、と言っていた。「頻繁に使うんなら自分で買えよー」と笑っていたから、想楽が一度使ったところで咎められることはないだろう。
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DONE想楽の体が欠ける話身体欠損、埜田杳「些末なおもいで」パロ
さよならフェザー「あれ」は誰にでも等しく降りかかる。
「……思いながらも他人事でー」
北村想楽の呟きに五七五のはじめの言葉はない。声に混ざる羽ばたきの中で、古論クリスは想楽の手を握っていた。
体に羽が生えて飛び立つ奇病に想楽が冒されて数ヶ月、想楽の両手の指はすべて羽ばたいた。突起のない手ではクリスの手を握り返すこともできず、想楽はクリスの感触を受け止めるばかりだ。
「あれ」の発症に伴い、Legendersはクリスと葛之葉雨彦の二人で活動していくことになる。二ヶ月後に控え、練習していたライブに出られないのだと思うと悔しいはずなのに、それよりもクリスの手を握り返せないことが惜しかった。
「……クリス、さん?」
「はい」
目は片方が飛び立ち、もう片方も羽を生やしているのか時おり瞳からはささやかな羽毛が落ちる。羽毛のせいか、片目は残っているはずなのに想楽の白く滲んでいた。
802「……思いながらも他人事でー」
北村想楽の呟きに五七五のはじめの言葉はない。声に混ざる羽ばたきの中で、古論クリスは想楽の手を握っていた。
体に羽が生えて飛び立つ奇病に想楽が冒されて数ヶ月、想楽の両手の指はすべて羽ばたいた。突起のない手ではクリスの手を握り返すこともできず、想楽はクリスの感触を受け止めるばかりだ。
「あれ」の発症に伴い、Legendersはクリスと葛之葉雨彦の二人で活動していくことになる。二ヶ月後に控え、練習していたライブに出られないのだと思うと悔しいはずなのに、それよりもクリスの手を握り返せないことが惜しかった。
「……クリス、さん?」
「はい」
目は片方が飛び立ち、もう片方も羽を生やしているのか時おり瞳からはささやかな羽毛が落ちる。羽毛のせいか、片目は残っているはずなのに想楽の白く滲んでいた。
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DONEクリ想が同棲していて、想楽が夜中に目覚める話夜半 意識を取り戻した瞬間、北村想楽は異常を察知した。
古論クリスと同棲生活を送る寝室、クリスの長身と想楽の身体がすっぽり収まるベッドの中は二人の体温で温かい。隣からクリスの規則的な寝息が聞こえて、珍しい、と想楽はぼんやり考える。
クリスが想楽より遅く起きることはそうそうないはず……まとまらない思考をもてあそぶ想楽は、窓の外がまだ暗いことに気がついた。
「……?」
カーテンの向こうは未明の気配すら遠い。手元の充填機に挿したスマートフォンは手に取ったとたん遠慮のない輝きを溢れさせ、顔をしかめながら想楽が時刻を見ると三時二十八分を示していた。
「――」
スマートフォンの電源ボタンを押せば画面は暗転。まだ夜だと気づいたせいで急に体が冷え始め、想楽は大急ぎで布団にもぐりこむとクリスの背中に顔をこすりつける。
518古論クリスと同棲生活を送る寝室、クリスの長身と想楽の身体がすっぽり収まるベッドの中は二人の体温で温かい。隣からクリスの規則的な寝息が聞こえて、珍しい、と想楽はぼんやり考える。
クリスが想楽より遅く起きることはそうそうないはず……まとまらない思考をもてあそぶ想楽は、窓の外がまだ暗いことに気がついた。
「……?」
カーテンの向こうは未明の気配すら遠い。手元の充填機に挿したスマートフォンは手に取ったとたん遠慮のない輝きを溢れさせ、顔をしかめながら想楽が時刻を見ると三時二十八分を示していた。
「――」
スマートフォンの電源ボタンを押せば画面は暗転。まだ夜だと気づいたせいで急に体が冷え始め、想楽は大急ぎで布団にもぐりこむとクリスの背中に顔をこすりつける。
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DONE理ノイ前提、ノイと想楽が話すまったくもう! 理由あって実体化した『タイムプリディクション〜時空の監視者』の登場人物らを前に、北村想楽は動揺を隠すための微笑を顔面に張りつける。
トリガーとバレットは秋山隼人・若里春名の両名に連れられて東京観光へ。葛之葉雨彦は暁ナハトとともに妙なにこやかさでもってどこかへ消え、流れを察したプロデューサーが理人・ライゼと古論クリスを別室へ案内したので、事務所の応接室には真白ノイと想楽だけが取り残されている。物珍しさと怪訝さがないまぜになった表情で事務所をあちこち見回すノイが自分と同じ顔をしているだけあって、向き合っているだけなのに収まりが悪い。
「えーと……」
暁ナハトがおり、トリガーとバレットもいるせいで、『この』真白ノイが『どの』時点の真白ノイなのかを測りかねて、言葉を選ぶ必要があった。
1016トリガーとバレットは秋山隼人・若里春名の両名に連れられて東京観光へ。葛之葉雨彦は暁ナハトとともに妙なにこやかさでもってどこかへ消え、流れを察したプロデューサーが理人・ライゼと古論クリスを別室へ案内したので、事務所の応接室には真白ノイと想楽だけが取り残されている。物珍しさと怪訝さがないまぜになった表情で事務所をあちこち見回すノイが自分と同じ顔をしているだけあって、向き合っているだけなのに収まりが悪い。
「えーと……」
暁ナハトがおり、トリガーとバレットもいるせいで、『この』真白ノイが『どの』時点の真白ノイなのかを測りかねて、言葉を選ぶ必要があった。
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DONEクリ想が同棲している話黄色くなる 兄との二人暮らしが恋人との二人暮らしになっても、北村想楽の日常に大きな変化はない。
家事を分担し、体調不良の際には気遣いながらフォローする暮らしは兄との生活と同じこと。その日は想楽が買い物を任されており、古論クリスからは買い物のリストがLINKメッセージで送られていた。
よく行くスーパーの棚を巡って、自分とクリスに必要なものを買い物カゴへ入れていく。鮮魚コーナーは覗くが、海鮮のたぐいはクリスがどこからか買ってくることが多いのでスーパーで買うことは少ない。パン類、精肉コーナー、鮮魚コーナーを過ぎた先にある青果コーナーの売り場のほとんどを緑が占めていたが、その中にある黄色いものが目に留まった。
買い物カゴを提げた手にはスマートフォンを持っていた。画面を見下ろせばいつも通りレモンの指示がある。売り場にはバラ売りのレモンと袋詰めされたレモンがあったがクリスから一個か一袋かの指示はなく、それでも想楽は迷わず袋詰めされたレモンを手に取った。
740家事を分担し、体調不良の際には気遣いながらフォローする暮らしは兄との生活と同じこと。その日は想楽が買い物を任されており、古論クリスからは買い物のリストがLINKメッセージで送られていた。
よく行くスーパーの棚を巡って、自分とクリスに必要なものを買い物カゴへ入れていく。鮮魚コーナーは覗くが、海鮮のたぐいはクリスがどこからか買ってくることが多いのでスーパーで買うことは少ない。パン類、精肉コーナー、鮮魚コーナーを過ぎた先にある青果コーナーの売り場のほとんどを緑が占めていたが、その中にある黄色いものが目に留まった。
買い物カゴを提げた手にはスマートフォンを持っていた。画面を見下ろせばいつも通りレモンの指示がある。売り場にはバラ売りのレモンと袋詰めされたレモンがあったがクリスから一個か一袋かの指示はなく、それでも想楽は迷わず袋詰めされたレモンを手に取った。