月海 故
DONE2023年9月1日 シンカヲwebオンリー「親愛なる君と終わりなき余暇をともに 第3幕」にて展示七不思議の話
謎軸謎世界線 シンカヲ未満 過去作加筆修正版
手のひらだけが僕の通う中学校には真しやかに囁かれている怪談七不思議、みたいなものがある。
僕自身は超常現象とか幽霊とか、そういうものは見たことないから信じてない。もう中学生だっていうのに、そんなもので盛り上がるなんてくだらない。
「ほんとに見たの! なんで信じてくれないのよバカシンジィ!!」
「……だってその〝カヲルさん〟は男子トイレに出るとかいうオバケでしょ。アスカは男子トイレに入ったの?」
「ちっがーーう! あのチカン幽霊……壁をすり抜けて女子トイレに出没したのよ。信じらんない!」
「そうだね、信じられない。綾波も見たの?」
「一緒にいたけど、見てない」
「ほらぁ……」
「んもぉ〜! 絶対にいたんだから! 見たのよ!」
「ハイハイ。もういい? 僕、帰るよ」
3568僕自身は超常現象とか幽霊とか、そういうものは見たことないから信じてない。もう中学生だっていうのに、そんなもので盛り上がるなんてくだらない。
「ほんとに見たの! なんで信じてくれないのよバカシンジィ!!」
「……だってその〝カヲルさん〟は男子トイレに出るとかいうオバケでしょ。アスカは男子トイレに入ったの?」
「ちっがーーう! あのチカン幽霊……壁をすり抜けて女子トイレに出没したのよ。信じらんない!」
「そうだね、信じられない。綾波も見たの?」
「一緒にいたけど、見てない」
「ほらぁ……」
「んもぉ〜! 絶対にいたんだから! 見たのよ!」
「ハイハイ。もういい? 僕、帰るよ」
月海 故
DONE2023年9月1日 シンカヲwebオンリー「親愛なる君と終わりなき余暇をともに 第3幕」にて展示カヲルくんの夢の話
謎軸謎世界線 シンカヲ未満 過去作加筆修正版
今夜、見る夢は残陽に向かって歩く渚カヲルは、まるで夜から逃げているようだ、などと考えながら、隣で歩調を合わせる碇シンジを横目で盗み見た。
橙色に染まるシンジの横顔は、ふたりで帰る放課後のありふれた一場面。だのに、何度見ても居心地の悪さで胸が騒ぐ。
そんな気持ちをどうにか何処かにしまっておきたくて、カヲルは両手を制服スラックスのポケットに仕舞い込んだ。それから視線は自然と下を向く。
夕焼け色に色を変えたハイカットスニーカー。そのつま先が向くのは明るい方。けれども踵から伸びる影はもうすぐ夜に飲まれる。夜が、追いついてくる。
ヒグラシとカエルの鳴き声が、右から左から、反響するようにふたりの鼓膜を揺する。じと、と滲む汗のせいでシャツが身体に張り付く。
4742橙色に染まるシンジの横顔は、ふたりで帰る放課後のありふれた一場面。だのに、何度見ても居心地の悪さで胸が騒ぐ。
そんな気持ちをどうにか何処かにしまっておきたくて、カヲルは両手を制服スラックスのポケットに仕舞い込んだ。それから視線は自然と下を向く。
夕焼け色に色を変えたハイカットスニーカー。そのつま先が向くのは明るい方。けれども踵から伸びる影はもうすぐ夜に飲まれる。夜が、追いついてくる。
ヒグラシとカエルの鳴き声が、右から左から、反響するようにふたりの鼓膜を揺する。じと、と滲む汗のせいでシャツが身体に張り付く。