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DOODLEヴェル様とバスティがオペラ鑑賞する話 開演を待つオペラハウスはざわざわと落ち着きがない。これから始まる夢物語への期待に満ちたまなざしが、閉ざされた幕へ注がれている。現実と夢の狭間のこの時間を、観客は思い思いに過ごしていた。
男はその様子を上階の桟敷席から見ている。開演まで今しばらく。この喧騒を子守歌に仮眠でも取ろうかと座席に深く腰掛けたその時だった。
「ちょいと失礼するぜ」
その声と共に、ひょいと桟敷に顔を覗かせる人物。桟敷の主はちらと視線だけを返した。
「ここは私が予約した座席のはずだが」
「そんなつれないこと言うなって」
闖入者は我が物顔で向かい側に腰を下ろす。我が物顔――それもそのはず、この劇場のオーナーは彼なのだ。
職務中の姿ではなく、座席の値段に見合ったスーツ姿だというのに何故、私が居ることがわかったのか。愚問である。彼の所有する劇場の座席を正規の手段で入手したならば、その情報は彼に筒抜けだ。顧客のプライバシーなど知ったことではないのである。そして彼には素顔が割れている。それを承知の上で、今日のこの座席を予約したのだ。
1338男はその様子を上階の桟敷席から見ている。開演まで今しばらく。この喧騒を子守歌に仮眠でも取ろうかと座席に深く腰掛けたその時だった。
「ちょいと失礼するぜ」
その声と共に、ひょいと桟敷に顔を覗かせる人物。桟敷の主はちらと視線だけを返した。
「ここは私が予約した座席のはずだが」
「そんなつれないこと言うなって」
闖入者は我が物顔で向かい側に腰を下ろす。我が物顔――それもそのはず、この劇場のオーナーは彼なのだ。
職務中の姿ではなく、座席の値段に見合ったスーツ姿だというのに何故、私が居ることがわかったのか。愚問である。彼の所有する劇場の座席を正規の手段で入手したならば、その情報は彼に筒抜けだ。顧客のプライバシーなど知ったことではないのである。そして彼には素顔が割れている。それを承知の上で、今日のこの座席を予約したのだ。