ashigaru_k
MAIKING義鑑と五十鈴の最低初夜。若狭の佐伯物語 義鑑公と五十鈴姫 その③吉日に、佐伯惟治三女五十鈴姫が大友義鑑のもとへと嫁ぐ。
過不足なく揃えられた嫁入り道具のなかには椿の苗木が収められていて、これは五十鈴姫たっての望みだった。
佐伯で椿はよく咲いた。
「府内でも、きっと健気に咲きましょう」と、見慣れた生家の庭に目を細める五十鈴に、惟治が「無理だと思えばすぐに離縁してもらえ。始末は惟代がつけるでの」と声をかけた。
「なんでやる気を削ぐの! 父上は!」と五十鈴が目を吊り上げる。
「オマエは義鑑殿を知らんから、いっとくが儂も惟代も止めたからな!」
「そんなに酷い方とは思いません!」
「鈴、落ち着きなさい。嫁入りも戦と同じで、状況により時に損切りも必要なのだ」と惟代が諫めた。
「ふたりとも、離縁前提で送り出さないでください!」
6423過不足なく揃えられた嫁入り道具のなかには椿の苗木が収められていて、これは五十鈴姫たっての望みだった。
佐伯で椿はよく咲いた。
「府内でも、きっと健気に咲きましょう」と、見慣れた生家の庭に目を細める五十鈴に、惟治が「無理だと思えばすぐに離縁してもらえ。始末は惟代がつけるでの」と声をかけた。
「なんでやる気を削ぐの! 父上は!」と五十鈴が目を吊り上げる。
「オマエは義鑑殿を知らんから、いっとくが儂も惟代も止めたからな!」
「そんなに酷い方とは思いません!」
「鈴、落ち着きなさい。嫁入りも戦と同じで、状況により時に損切りも必要なのだ」と惟代が諫めた。
「ふたりとも、離縁前提で送り出さないでください!」
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MAIKING大友義鑑のところに佐伯惟治の娘が嫁に行って、義鑑がメロメロになったらおもしろいよねという史実にケンカ売るIF若狭の佐伯物語 義鑑公と五十鈴姫 その②若狭が語る――。
はい、お水を頂きましてのどもよく湿りました。お水といえば、佐伯のお話がもうひとつあるのですけれども、これはまた別の機会に。
えぇ、五十鈴姫と義鑑公のご縁はないままに、それから二年の月日が経ちまして――。
この年、筑前国の国人秋月氏が義鑑公に謀反を起こしまして、この乱を鎮めるために鈴姫の兄、惟代公も筑前吉処山城へ出陣いたしました。そこで親しくなりましたのが、同じく陣中におりました義鑑公の重臣、戸次鑑連(べっきあきつら)殿でございます。
はい、あの雷神の名を轟かせた立花道雪でございます。この頃はまだ鑑連と名乗っておりましたが。
年は惟代公より六歳上の三十四歳。十四歳で大内氏を相手に初陣を飾って以来、その名を知らぬものはございません。義鑑公の信頼も篤くございました。
3862はい、お水を頂きましてのどもよく湿りました。お水といえば、佐伯のお話がもうひとつあるのですけれども、これはまた別の機会に。
えぇ、五十鈴姫と義鑑公のご縁はないままに、それから二年の月日が経ちまして――。
この年、筑前国の国人秋月氏が義鑑公に謀反を起こしまして、この乱を鎮めるために鈴姫の兄、惟代公も筑前吉処山城へ出陣いたしました。そこで親しくなりましたのが、同じく陣中におりました義鑑公の重臣、戸次鑑連(べっきあきつら)殿でございます。
はい、あの雷神の名を轟かせた立花道雪でございます。この頃はまだ鑑連と名乗っておりましたが。
年は惟代公より六歳上の三十四歳。十四歳で大内氏を相手に初陣を飾って以来、その名を知らぬものはございません。義鑑公の信頼も篤くございました。