キタハル
DONE半伝 好きな惣菜発表ハンスケ私のお気に入り「かまぼこは嫌いですが、薬味のネギは好きです」
「なんだいきなり」
馴染みの茶屋でうどんを食べながらそう言うと、山田先生は目を丸くした。私の分のかまぼこはいつも通り、山田先生の器に旅行中だ。きっと帰ることはないだろう。
「いえ、いつも山田先生には教えてもらってばかりなので、私も何か山田先生に教えてみたいなと思いまして」
「なるほど?」
わかったようなわからないような相槌が返る。山田先生がずばずばとうどんを啜るのを見ながら、続きを口にする。
「この間、火薬について話してみたのですが、あまりご興味がなさそうだったので、違う話を」
「ああ、あれ、そういう話だったのか。いきなり始まったから、なにやらストレスでも溜まっているのかと思っていた」
1863「なんだいきなり」
馴染みの茶屋でうどんを食べながらそう言うと、山田先生は目を丸くした。私の分のかまぼこはいつも通り、山田先生の器に旅行中だ。きっと帰ることはないだろう。
「いえ、いつも山田先生には教えてもらってばかりなので、私も何か山田先生に教えてみたいなと思いまして」
「なるほど?」
わかったようなわからないような相槌が返る。山田先生がずばずばとうどんを啜るのを見ながら、続きを口にする。
「この間、火薬について話してみたのですが、あまりご興味がなさそうだったので、違う話を」
「ああ、あれ、そういう話だったのか。いきなり始まったから、なにやらストレスでも溜まっているのかと思っていた」
キタハル
DONE半伝 しょんぼりすると無言で寄ってくるわんこな半が書きたかったしょんぼり半助、犬になる土井半助という男は、大雑把なところも大いにあるくせに、変に神経質なところもある。一年は組のよい子達の授業が進まない、覚えてもらえない、私の教え方が悪いのかと嘆き、胃を痛めたりする。子どもというのは概して大人の思い通りにならないものである。私も新任の時分には相当苦労した。覚える以前に話を聞かせるのに苦労をし、それ以前に安全を確保するのに苦労する。それが子どもというものだと、今では開き直っている。まあ、限度はあるというもので、我が一年は組のよい子たちは元気が良く可愛いが、元気がいい故にその忍耐の限度のギリギリの線を反復横跳びしているようなところがある。テストや教材と格闘していた土井先生が、小さく叫び声を上げて机に突っ伏す気持ちもわからなくもない。
1548キタハル
DONE半伝 デートしてほしくて書き始めたら二人してトレイルランニングに出かけてしまったので、トレラン雑誌読んで付け焼き刃して無理矢理書きました。ランの人は大目に見てくださると助かります。特にオチはない。デートしてほしかったんだ山頂でおにぎりを食べる「デートがしたいです!」
「デート、ねぇ」
お茶を飲み和む休憩時間に、前のめりに勇んで言うと、あんまり気のない返事が返ってくる。教師陣の今月の勤務予定表が出て、山田先生の一日休みに珍しく、私の休みを被せることができそうだったのだ。忍術学園は愛と正義のホワイト企業の雰囲気を出しつつも、その実まあまあブラックだ。いや、学園長先生の思いつきに振り回されている時点でホワイトも何もないかもしれないが。授業のない日も事務や準備などの仕事ははみ出すし、教師陣は学園の警備員を兼ねているところもあるので、好き勝手に休むわけにはいかないのだ。いや、安藤先生などは器用に勤務時間内に仕事を終わらせているらしいので、やはり突発的な対応が多いせいかもしれない。つまりだいたい学園長先生のせいなのだ。三割くらい。失礼ながら。
5466「デート、ねぇ」
お茶を飲み和む休憩時間に、前のめりに勇んで言うと、あんまり気のない返事が返ってくる。教師陣の今月の勤務予定表が出て、山田先生の一日休みに珍しく、私の休みを被せることができそうだったのだ。忍術学園は愛と正義のホワイト企業の雰囲気を出しつつも、その実まあまあブラックだ。いや、学園長先生の思いつきに振り回されている時点でホワイトも何もないかもしれないが。授業のない日も事務や準備などの仕事ははみ出すし、教師陣は学園の警備員を兼ねているところもあるので、好き勝手に休むわけにはいかないのだ。いや、安藤先生などは器用に勤務時間内に仕事を終わらせているらしいので、やはり突発的な対応が多いせいかもしれない。つまりだいたい学園長先生のせいなのだ。三割くらい。失礼ながら。
キタハル
DONE半伝 いいものがでかいのはいい事なので、縦に大きい良きものを、ちょっと横にも増やしてみた。でも多分すぐ戻っちゃう。拾った仔犬がでかくなる展開がヘキなので、設定資料で抜け忍時の身長は山田先生と同じくらいと書いてあってめちゃくちゃ興奮しました。まだ伸びてて最終的に178cmくらいになってほしい人をダメにする半助(もちもちのすがた)「半助、なんだかちょっと太ったな」
「えっ、本当ですか」
言われて腹を押さえると、確かにお肉が付いている。ここ最近、なんとなく体が重いと思っていたのは、疲れのせいだけではなく、実際に重くなっていたらしい。
思いつく原因といえば、いつもの学園長先生の思い付きのせいだ。またもや教科の授業が遅れまくった。ゆえに二週間くらい詰め込みで一年は組のよい子たちに教科の授業して、テストして採点して、授業の準備して、脳を働かせるために差し入れの甘いものを食べたりして、運動できていないままばたんきゅ〜で寝るという生活をしていたのだ。今までの人生で、太る、ということがなかったので、ちょっぴりショックである。それだけここが豊かで恵まれた、安全な環境だということかもしれないが。
1376「えっ、本当ですか」
言われて腹を押さえると、確かにお肉が付いている。ここ最近、なんとなく体が重いと思っていたのは、疲れのせいだけではなく、実際に重くなっていたらしい。
思いつく原因といえば、いつもの学園長先生の思い付きのせいだ。またもや教科の授業が遅れまくった。ゆえに二週間くらい詰め込みで一年は組のよい子たちに教科の授業して、テストして採点して、授業の準備して、脳を働かせるために差し入れの甘いものを食べたりして、運動できていないままばたんきゅ〜で寝るという生活をしていたのだ。今までの人生で、太る、ということがなかったので、ちょっぴりショックである。それだけここが豊かで恵まれた、安全な環境だということかもしれないが。
キタハル
DONE半→伝 呪ったり攫ったりしてこないタイプの満月の日の話。半が先生になって二年目くらいのイメージで書いてます。半が生まれ持って得意なのが書物を読み解いたり火薬を配合したりすることで、こどもを愛し慈しむ技術は努力して後天的に手に入れた美点だといいなと思っている 善く在ろうとするひとはうつくしいので夜に光満月の夜。
「月がきれいですね」
などと呑気なことを言って、月見に誘った。
声をかけられた山田先生は私が情緒を解したとでも思ったらしく、機嫌よく二つ返事で承知した。最近生やしたかっこいいお髭を撫でて、何か菓子でも出そうかななどと楽しそうに戸棚に向かう。残念ながら、この人を誘う理由に使わせてもらっただけなのは黙っておく。山田先生と二人でいる時間は心地よく、嬉しくて、少しソワソワする。
月見などと言ったが大層なことをするわけではない。学園の教師たちには、有事にはこども達を守る役目もある。軽い気持ちで外出をするのも憚られたし、酔わないとしても酒を口にするのも抵抗がある。紙ばかり睨んでいたら目が疲れてしまいました、廊下に出てぼんやり月を眺めませんか、せっかくの満月ですし、というだけの話である。
2761「月がきれいですね」
などと呑気なことを言って、月見に誘った。
声をかけられた山田先生は私が情緒を解したとでも思ったらしく、機嫌よく二つ返事で承知した。最近生やしたかっこいいお髭を撫でて、何か菓子でも出そうかななどと楽しそうに戸棚に向かう。残念ながら、この人を誘う理由に使わせてもらっただけなのは黙っておく。山田先生と二人でいる時間は心地よく、嬉しくて、少しソワソワする。
月見などと言ったが大層なことをするわけではない。学園の教師たちには、有事にはこども達を守る役目もある。軽い気持ちで外出をするのも憚られたし、酔わないとしても酒を口にするのも抵抗がある。紙ばかり睨んでいたら目が疲れてしまいました、廊下に出てぼんやり月を眺めませんか、せっかくの満月ですし、というだけの話である。
キタハル
DONE半伝のつもりで書いてる半と伝 情操教育 いつか自分がいなくなった後も生きていけるようにという親や教師の愛があってほしい気持ちと、いつまでもループ時空で一緒にいてほしい気持ち、心がふたつある花の名前「土井先生、見なさい、芍薬が咲き始めましたよ」
忍術学園の薬草園で、丸いつぼみをほどき始めたシャクヤクを眺め、山田先生はふと顔を綻ばせた。シャクヤクといえば根から鎮痛剤がとれる薬草である。薬がご入用ですかと聞くと、山田先生は私を見て大きくて吊った目をきょとんとさせた後、表情を大きく崩した。
「かぁ〜っ、あんた、情緒がない男だねぇ。そりゃあ学園にある植物はみな薬草ですけれど、せっかくの花を愛でないなんてもったいない。あたしは芍薬の花が好きですよ。すいと伸びた茎は凛として意志が強そうじゃあないですか。それでいて花は華やかで美しい」
立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花。
美人の例えに使う言葉である。山田先生がシャクヤクの花に誰を重ねているのかを、なんとなく想像がついた。あれは怒らせると怖いですがね、実に佳い女ですよ。わしの妻には勿体無い。正直、いつ振られるか、戦々恐々としとります。あれはわしの戦忍の技量に惚れてくれたんだから、衰えてはいられんのですよ。いつかの酒の席で、恥ずかしがり屋の山田先生が珍しく惚気を零したことを思い出した。
2985忍術学園の薬草園で、丸いつぼみをほどき始めたシャクヤクを眺め、山田先生はふと顔を綻ばせた。シャクヤクといえば根から鎮痛剤がとれる薬草である。薬がご入用ですかと聞くと、山田先生は私を見て大きくて吊った目をきょとんとさせた後、表情を大きく崩した。
「かぁ〜っ、あんた、情緒がない男だねぇ。そりゃあ学園にある植物はみな薬草ですけれど、せっかくの花を愛でないなんてもったいない。あたしは芍薬の花が好きですよ。すいと伸びた茎は凛として意志が強そうじゃあないですか。それでいて花は華やかで美しい」
立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花。
美人の例えに使う言葉である。山田先生がシャクヤクの花に誰を重ねているのかを、なんとなく想像がついた。あれは怒らせると怖いですがね、実に佳い女ですよ。わしの妻には勿体無い。正直、いつ振られるか、戦々恐々としとります。あれはわしの戦忍の技量に惚れてくれたんだから、衰えてはいられんのですよ。いつかの酒の席で、恥ずかしがり屋の山田先生が珍しく惚気を零したことを思い出した。
キタハル
DONE半伝(半→伝)、というかでんこさん。ストーカー俺モブを騙すべくラブラブ演技をする半伝を食らって泣いて帰りたかった。認知の歪んだストーカー俺モブが出てきます、苦手な方はお避けください。春とストーカーとお団子と花「変な男に惚れられた。半助、助けてちょうだい」
「またですか?」
調査のため町に出かけていた伝子さんは、別件で買い出しに町に出てきた私を視認するや否や、無駄のない、しかし軽やかな動きで私の腕を取り、私を路地裏に押し込んだ。少し疲れた表情だ。
またですか、というのは、これが初めてのことではないからだ。
紫の着物を着た、艶やかな黒髪を腰まで伸ばし、きょろりとした大きな目をつけまつげで囲んだ、以前の真紅よりは肌色に合っている口紅を差した男ーー伝子さんは、時々男にモテるのだ。山田先生は変装の腕も良く、何に化けても上手く仕事をするのだが、何故か女装を好んでする。私から見たらどう見ても化け物の類なのだが、所作のせいかツボを抑えているせいか、山田先生を知らない人間にはなぜかあれで本当に女性に見えるらしい。本人がお茶に誘われたと言うのを嘘か冗談かと失笑していたのだが、どうやらそれは本当のことらしい。時々、いや稀に、やまーー伝子さんはこうやって私に助力を求めることがある。いわく、まともな男や立場がある男は断れば済むらしいが、中には粘着質な人間が含まれていて、後を追われたり逆上されたりと、仕事の支障になる場合があるとのことだった。
4227「またですか?」
調査のため町に出かけていた伝子さんは、別件で買い出しに町に出てきた私を視認するや否や、無駄のない、しかし軽やかな動きで私の腕を取り、私を路地裏に押し込んだ。少し疲れた表情だ。
またですか、というのは、これが初めてのことではないからだ。
紫の着物を着た、艶やかな黒髪を腰まで伸ばし、きょろりとした大きな目をつけまつげで囲んだ、以前の真紅よりは肌色に合っている口紅を差した男ーー伝子さんは、時々男にモテるのだ。山田先生は変装の腕も良く、何に化けても上手く仕事をするのだが、何故か女装を好んでする。私から見たらどう見ても化け物の類なのだが、所作のせいかツボを抑えているせいか、山田先生を知らない人間にはなぜかあれで本当に女性に見えるらしい。本人がお茶に誘われたと言うのを嘘か冗談かと失笑していたのだが、どうやらそれは本当のことらしい。時々、いや稀に、やまーー伝子さんはこうやって私に助力を求めることがある。いわく、まともな男や立場がある男は断れば済むらしいが、中には粘着質な人間が含まれていて、後を追われたり逆上されたりと、仕事の支障になる場合があるとのことだった。