sabasavasabasav
DONE坊←カス+オニール。祝祭6のエアスケブでした。珍しいシチュ!ほのぼのにしようかシリアスにしようか迷いに迷ってこちらにしました。坊ちゃんは出てきません。 ▽
霧が、湖の向こうから上がってくる頃だった。
古城の屋上にひとり、カスミは立っていた。忍びのくせに姿を曝け出すなんてと思いつつ、風に吹かれている。
日は既に沈み、薄暮の残光が石造りの手すりを鈍く照らしていた。
胸に宿るのは、言葉にならない思い。名を呼ぶには遠く、ただそこにあって、形にはならない情熱。
──ティア様。
彼の名を、心のうちで静かに呼ぶ。口に出すことすら憚られるほどに、それは脆く、切実な想いだった。
彼が父をその手にかけたあの日から、どれほどの夜が過ぎただろう。その事実だけで、誰もが打ちひしがれてしまってもおかしくはない。
だが、ティアは違った。
3199霧が、湖の向こうから上がってくる頃だった。
古城の屋上にひとり、カスミは立っていた。忍びのくせに姿を曝け出すなんてと思いつつ、風に吹かれている。
日は既に沈み、薄暮の残光が石造りの手すりを鈍く照らしていた。
胸に宿るのは、言葉にならない思い。名を呼ぶには遠く、ただそこにあって、形にはならない情熱。
──ティア様。
彼の名を、心のうちで静かに呼ぶ。口に出すことすら憚られるほどに、それは脆く、切実な想いだった。
彼が父をその手にかけたあの日から、どれほどの夜が過ぎただろう。その事実だけで、誰もが打ちひしがれてしまってもおかしくはない。
だが、ティアは違った。
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DOODLE坊カス。エアスケブその3。壁ドンするカスミちゃん。
▽
ずっと、後悔していることがある。
「本当に、年をとらないんですね……」
思わずといった口振りでティアの姿について言及したカスミに対して、背を向けたまま言葉が出てこなかったことだ。硬直していた体が時を取り戻したのは、彼女が走り去る音を聞いた後だった。
酷く動揺していたことは否めないが、決して不老である事実を突きつけられてショックを受けていたわけではなかったのに。
都市同盟には過去、解放軍に属していた人々も参加している。リアンに乞われて本拠地へと向かった際には、見知った顔の多さに驚かされたものだった。そして彼らと会話をしていけば、嫌でも時間の経過を感じることになる。人が生きている限り、姿形が変わり、声が変わり、環境が変わりゆく。取り残されたかのように当時のままの姿で在る己の姿は、仲間達にとって痛々しいものとして映るらしかった。
3379ずっと、後悔していることがある。
「本当に、年をとらないんですね……」
思わずといった口振りでティアの姿について言及したカスミに対して、背を向けたまま言葉が出てこなかったことだ。硬直していた体が時を取り戻したのは、彼女が走り去る音を聞いた後だった。
酷く動揺していたことは否めないが、決して不老である事実を突きつけられてショックを受けていたわけではなかったのに。
都市同盟には過去、解放軍に属していた人々も参加している。リアンに乞われて本拠地へと向かった際には、見知った顔の多さに驚かされたものだった。そして彼らと会話をしていけば、嫌でも時間の経過を感じることになる。人が生きている限り、姿形が変わり、声が変わり、環境が変わりゆく。取り残されたかのように当時のままの姿で在る己の姿は、仲間達にとって痛々しいものとして映るらしかった。