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    #廃太子パロ

    tokiwa0625

    DONEさがみさんのお誕生日お祝い第二弾として捧げたものの再録。
    廃太子パロ。
    渡りの果てが待ち合わせ まず、一人目の証言。「そう言やよ。妃殿下、最近迷わなくなったよな!」

     戦煙の狼の異名を持ち、あちらこちらで考え無しに戦端を開いてくれた祖父から、父の治世となって早二十年。
     その間、この離宮は空き家同然に放置されていたが、仮にも王家の逗留を前提に設計された建造物だ。有事の際は城下町の人間全員の避難場として開放される広大な敷地。一年を通して決して枯れることのない最新鋭の水利システムが導入された庭園の噴水。屋敷の柱や壁を覆い尽くすのは、手間を惜しまぬ贅を凝らしたモザイクにレリーフ。どれ一つ取っても、地方の下級貴族の本邸が質素な犬小屋に見える規模と品質を誇る。
     幼少期、人族に飼われていた過去があるにせよ、いざ屋敷の女主人として住み始めると、見えてくる視点が変わるらしい。「何で厨房があんな奥に押し込められてるの。囲炉裏は家の中心にあるべきでしょ」やら「寝具を出しっぱなしって、人族は物臭やね」やら「衣装を保管しておくためだけの部屋があるっていうのが既におかしい!服は長持ちにしまうもんだって!」やら、伝統ある帝国の建築様式についてピーチクパーチク喚いていたのを思い出す。
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