ひいろ
DONE桜待ちおまけ 苦しい。
腕の中で聞こえた声に、抱きしめる腕に力を込め過ぎたかと思ったが、どうやら違うとすぐに気づく。
喉を押さえながら苦しむ涼太。突然の異変にどうしたらいいか分からずに混乱していると、水の跳ねる音が聞こえ顔を上げる。
音、泉の方角へ目を向ければ、そこにはサクラとニワの姿があり、何かを訴えるように泉の中で尾を水面に叩きつけていた。まるで早くしろというように音を立て続ける姿に二匹の意図に気づき、すぐに宗司は涼太の体を抱き上げ泉に走り出した。
大きな音を立てながら泉に飛び込み、涼太の体を泉に下ろす。すると先ほどまで苦しそうだったのが嘘のように、呼吸が安定し始めた。
「大丈夫か?」
「うん、ありがとう。サクラと、ニワも」
2110腕の中で聞こえた声に、抱きしめる腕に力を込め過ぎたかと思ったが、どうやら違うとすぐに気づく。
喉を押さえながら苦しむ涼太。突然の異変にどうしたらいいか分からずに混乱していると、水の跳ねる音が聞こえ顔を上げる。
音、泉の方角へ目を向ければ、そこにはサクラとニワの姿があり、何かを訴えるように泉の中で尾を水面に叩きつけていた。まるで早くしろというように音を立て続ける姿に二匹の意図に気づき、すぐに宗司は涼太の体を抱き上げ泉に走り出した。
大きな音を立てながら泉に飛び込み、涼太の体を泉に下ろす。すると先ほどまで苦しそうだったのが嘘のように、呼吸が安定し始めた。
「大丈夫か?」
「うん、ありがとう。サクラと、ニワも」
ひいろ
DONEこぼれ話「……はあ」
涼太は嘆息しながら、自分の体に巻き付き心配そうにこちらを見つめる二対の瞳を見つめ返す。いつもは愛らしい姿だけれど、今はほんの少しだけ憎らしい。
「何であんなに懐いてるんだよ」
つん、と指先で突いてやる。涼太は咎めたつもりだけれど、サクラもニワも遊んでもらっていると思っているのか、楽しそうに体を揺らしていた。可愛い。だからこそ行き場のない思いが胸の中を渦巻いていく。
顔なじみの妖、雪女の里津花。彼が連れてきた、鬼の宗司。
彼の姿を初めて目にした時、感じたのは恐怖だった。
彼から感じる、仄暗いもの。目にした者を深い闇の中に引きずり込むような、そんな恐ろしさを感じた。それに似た恐怖を知っていた涼太は、体が指先から凍っていくのを感じた。怖い。逃げたい。だけど自分の眷属であるサクラとニワが彼の傍にいることに気づき、涼太の中で恐怖が怒りへと変わった。彼に立ち向かった。結局全ては涼太の勘違いで、目の前にいたのは涼太と変わらない。里津花の言葉一つに翻弄されるような、自分と変わらない普通の妖だった。
1277涼太は嘆息しながら、自分の体に巻き付き心配そうにこちらを見つめる二対の瞳を見つめ返す。いつもは愛らしい姿だけれど、今はほんの少しだけ憎らしい。
「何であんなに懐いてるんだよ」
つん、と指先で突いてやる。涼太は咎めたつもりだけれど、サクラもニワも遊んでもらっていると思っているのか、楽しそうに体を揺らしていた。可愛い。だからこそ行き場のない思いが胸の中を渦巻いていく。
顔なじみの妖、雪女の里津花。彼が連れてきた、鬼の宗司。
彼の姿を初めて目にした時、感じたのは恐怖だった。
彼から感じる、仄暗いもの。目にした者を深い闇の中に引きずり込むような、そんな恐ろしさを感じた。それに似た恐怖を知っていた涼太は、体が指先から凍っていくのを感じた。怖い。逃げたい。だけど自分の眷属であるサクラとニワが彼の傍にいることに気づき、涼太の中で恐怖が怒りへと変わった。彼に立ち向かった。結局全ては涼太の勘違いで、目の前にいたのは涼太と変わらない。里津花の言葉一つに翻弄されるような、自分と変わらない普通の妖だった。