うづきめんご
DOODLE小悪魔藍ちゃん翔藍 年月は藍をずる賢く成長させた。
少しずつ他人との会話の仕方を覚える中で、砂糖菓子を頬張るような甘い会話に一筋のスパイスを落とすことを知ってしまったのだ。
触れ合うように口づけて、求めあうように絡み合って。
翔が指先で全身でその身を慈しむ度に新たな反応を返す藍の様は、小さな蕾がひとつひとつ花開き綺麗に咲き誇るように美しい。
しかしいつの日からか、翔の与える柔らかな刺激に対して素直な悦びを表すだけでなく。時折、翔を惑わせるように蠱惑的に振る舞うようにもなってしまった。
「なあ、藍。お前、いつからそうなっちゃったんだ?」
翔がそう問うと、藍は目を見開く。
きょとん、とした表情は彼を翔と年の差のないただの少年に見せる。零れそうなほどの大きな瞳に、触れれば手触りのいいまろい頬。ステージの下から見上げる先輩アイドルの姿とは、似ても似つかない。
534少しずつ他人との会話の仕方を覚える中で、砂糖菓子を頬張るような甘い会話に一筋のスパイスを落とすことを知ってしまったのだ。
触れ合うように口づけて、求めあうように絡み合って。
翔が指先で全身でその身を慈しむ度に新たな反応を返す藍の様は、小さな蕾がひとつひとつ花開き綺麗に咲き誇るように美しい。
しかしいつの日からか、翔の与える柔らかな刺激に対して素直な悦びを表すだけでなく。時折、翔を惑わせるように蠱惑的に振る舞うようにもなってしまった。
「なあ、藍。お前、いつからそうなっちゃったんだ?」
翔がそう問うと、藍は目を見開く。
きょとん、とした表情は彼を翔と年の差のないただの少年に見せる。零れそうなほどの大きな瞳に、触れれば手触りのいいまろい頬。ステージの下から見上げる先輩アイドルの姿とは、似ても似つかない。
うづきめんご
DOODLE翔藍を知ってる嶺ちゃん 悩める少年は、美しい。成長期の過程にある少年というものは、大人と子供の狭間を行き来し得も知れぬ美しさを放つ。
美風藍という少年はその狭間に永遠にとどめ置かれた人物――であるのはごく一部の人しか知らない。だがそのモデルとなった人間をよく知る嶺二としては、ガラス細工のような儚い生を歩む彼が、悩めるほど日々を深く過ごしていることは素直に喜ばしかった。
「アイアイ、どうしたの?」
眉間に皺を寄せている藍に声をかけると、彼はそのアーモンド型の瞳をゆっくりと動かして視線を嶺二に向ける。
「――決まらないんだ」
小さな口から零れた言葉は、彼にしては珍しく自信を失い揺れていた。
「ん? 何か困ってることがあるのなら、お兄さんに言ってごらん?」
1417美風藍という少年はその狭間に永遠にとどめ置かれた人物――であるのはごく一部の人しか知らない。だがそのモデルとなった人間をよく知る嶺二としては、ガラス細工のような儚い生を歩む彼が、悩めるほど日々を深く過ごしていることは素直に喜ばしかった。
「アイアイ、どうしたの?」
眉間に皺を寄せている藍に声をかけると、彼はそのアーモンド型の瞳をゆっくりと動かして視線を嶺二に向ける。
「――決まらないんだ」
小さな口から零れた言葉は、彼にしては珍しく自信を失い揺れていた。
「ん? 何か困ってることがあるのなら、お兄さんに言ってごらん?」
うづきめんご
DOODLEなんか突然降ってきた翔藍 ねえ、どうすればいい? と藍はペールブルーの瞳を揺らしながら翔に訴えた。
どうすればって、楽しかったんだろ。楽しかったならそれでいいんじゃねえの。と翔が言うと、藍は迷子のように眉尻を下げた。メモリーの中にさ、ショウ以外の人もいっぱい増えていってしまうんだ。と困惑しながら。
惑う藍はまだその眼で世界を知るようになってから日が浅い。だから同じグループのメンバーとツアーの先々を訪れて、いろんなものを見ていろんな人との思い出が増えていくのは、彼にとっては大変喜ばしいことだと思う。きっと那月が藍の言葉を聞いたら、飛び付いて幼子を愛でるように抱きしめただろう。
藍が泣きそうなのは、翔が藍のことを抱きしめてあげることができないのは、彼らが結ばれてこれまた日の浅い『恋人同士』であることに由来する。コイビト、というものを藍がどう捉えているのかはいまいち伝わってこないところもあるが、少なくとも藍のその膨大なはずのメモリーを翔で埋めたいという願望を持っていることだけは今の台詞だけで伝わってきた。
913どうすればって、楽しかったんだろ。楽しかったならそれでいいんじゃねえの。と翔が言うと、藍は迷子のように眉尻を下げた。メモリーの中にさ、ショウ以外の人もいっぱい増えていってしまうんだ。と困惑しながら。
惑う藍はまだその眼で世界を知るようになってから日が浅い。だから同じグループのメンバーとツアーの先々を訪れて、いろんなものを見ていろんな人との思い出が増えていくのは、彼にとっては大変喜ばしいことだと思う。きっと那月が藍の言葉を聞いたら、飛び付いて幼子を愛でるように抱きしめただろう。
藍が泣きそうなのは、翔が藍のことを抱きしめてあげることができないのは、彼らが結ばれてこれまた日の浅い『恋人同士』であることに由来する。コイビト、というものを藍がどう捉えているのかはいまいち伝わってこないところもあるが、少なくとも藍のその膨大なはずのメモリーを翔で埋めたいという願望を持っていることだけは今の台詞だけで伝わってきた。