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    うづきめんご

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    うづきめんご

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    #うた腐リ
    #翔藍

    翔藍を知ってる嶺ちゃん 悩める少年は、美しい。成長期の過程にある少年というものは、大人と子供の狭間を行き来し得も知れぬ美しさを放つ。
     美風藍という少年はその狭間に永遠にとどめ置かれた人物――であるのはごく一部の人しか知らない。だがそのモデルとなった人間をよく知る嶺二としては、ガラス細工のような儚い生を歩む彼が、悩めるほど日々を深く過ごしていることは素直に喜ばしかった。
    「アイアイ、どうしたの?」
     眉間に皺を寄せている藍に声をかけると、彼はそのアーモンド型の瞳をゆっくりと動かして視線を嶺二に向ける。
    「――決まらないんだ」
     小さな口から零れた言葉は、彼にしては珍しく自信を失い揺れていた。
    「ん? 何か困ってることがあるのなら、お兄さんに言ってごらん?」
     年上の余裕を滲ませて、甘えを乞うような口調は普段ならあまり藍のお気に召さないことが多い。だけれどそんなことを気にかける視野の広さも失っているのか、藍は嶺二の言葉に素直に口を開いた。
    「コイビトへの誕生日プレゼントって、どうすればいいの」
    「……」
     コイビト。つまり、恋人。恋の相手でありパートナーのこと。
     そっち系の悩みだったか、と嶺二は思わず浮かべた笑みを引きつらせた。目の前の美しい少年の恋人たる人物は嶺二もよく知っていて、熱く真っすぐな心を持つ誰にでも好かれる少年。もちろん、嶺二にとっても可愛い後輩の一人だ。可愛い最年少メンバーと可愛い後輩の恋路を応援したい心持ちはあるものの、藍に対してはその生い立ちもあってか庇護欲のようなものも抱いているので、お付き合いには若干の難色を示してしまうのもご愛嬌。
    「ショウにもナツキにもお祝いをしてあげたくて。でもやっぱり、『コイビト』って特別なほうがいいんでしょ?」
    「――なるほど?」
     嶺二は、藍の言わんとするところを察した。
     嶺二よりもずっと年下のこの少年は、幼いところがありながらも実質立派にマスターコースの先輩を勤め上げた。後輩たちも年の近い藍を先輩として慕いつつ、時に友達のように兄弟のような親密の関係を築き二人に分け隔てなく接してきたことも知っている。それゆえにおそらく藍は悩んでいるのだ。恋人兼後輩である翔と、同じく大切な後輩の那月との間で差をつけることを。
     何の運命の悪戯か、誕生日が同日の彼らはもちろん同時に祝われることが多い。もちろん藍も二人と一緒に祝う約束を取り付けているのだろう。
    「なっつんは、気にするタイプじゃないと思うけどねえ」
     そこで例えば翔を特別扱いしたとて、翔も藍もまとめて大好きな那月が気に病んでしまうようなことがあるとは思えない。むしろ諸手を挙げて喜ぶはずだ。しかし贈るほうとしては気を使ってしまう藍の気持ちも、嶺二にはよくわかった。
     さて自分だったらどう対処するだろうか。藍よりずっと人生経験のある嶺二には、いくつか具体的な方法が思い浮かぶ。それらを教えてあげることは、きっととっても簡単。
     でも。あえて嶺二はそうはしない。
     あまり表情を変えることのない藍が、困惑した顔を前面に出して戸惑っている。なんでも検索してすぐに解決方法を見つけるはずの藍が、対応方法を見つけられずに悩んでいる。それって、とても人間らしくて良いではないか。
    「恋って、やっぱり人生を変えちゃうよね」
     うら若きアイドルから出る台詞としては少しばかり老成している嶺二のそれは、藍の耳には届いていないようだった。
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