翔藍 年月は藍をずる賢く成長させた。
少しずつ他人との会話の仕方を覚える中で、砂糖菓子を頬張るような甘い会話に一筋のスパイスを落とすことを知ってしまったのだ。
触れ合うように口づけて、求めあうように絡み合って。
翔が指先で全身でその身を慈しむ度に新たな反応を返す藍の様は、小さな蕾がひとつひとつ花開き綺麗に咲き誇るように美しい。
しかしいつの日からか、翔の与える柔らかな刺激に対して素直な悦びを表すだけでなく。時折、翔を惑わせるように蠱惑的に振る舞うようにもなってしまった。
「なあ、藍。お前、いつからそうなっちゃったんだ?」
翔がそう問うと、藍は目を見開く。
きょとん、とした表情は彼を翔と年の差のないただの少年に見せる。零れそうなほどの大きな瞳に、触れれば手触りのいいまろい頬。ステージの下から見上げる先輩アイドルの姿とは、似ても似つかない。
だが。ひとたびフッと目を細めて笑うと、藍はやはり美しく在るように選ばれた存在なのだと圧倒される。
「ショウのせいだよ」
素肌にシーツを纏っただけの恰好でも、輝くほどの白い肌に羽が生えた天使と見紛うほどに神々しい。
翔だけの天使は悪戯を企む子供みたいに笑って、口づけをねだるために頬を寄せたのだった。