ひかりせい
DONE🎄聖夜のふるしほ大忘年会2023🎄🌸5/6(月)まで公開
【婚姻届を書く前に】
「3万ドルの婚約指輪」の後日談。降志が婚姻届を書いてる最中のお話です。
*前作未読でも短編としてお読みいただけます。
婚姻届を書く前に「もし私がお母さんの娘じゃなかったら……」
降谷零は、恋人であり婚約者でもある宮野志保の呟きに、眉根を寄せた。
ここは降谷と志保が同棲している家。そのリビングのソファに、ふたりは一時間程前から並んで座っていた。そして、目の前のローテーブルには書きかけの婚姻届。降谷が『夫となる』の欄に記載を終え、続いて志保が『妻となる』の欄に記載するところだったのだが。
「もし、私がお母さんと縁もゆかりもない、ただのシェリーという組織の科学者だったら、私を助けようとは思わなかったでしょ?」
降谷は志保の問いかけに大きくため息をついた。
(またその話か……)
もうこれで何度目だろう。事あるごとに志保は「私がお母さんの娘だからなのでは?」と尋ねてきた。思い起こせば降谷と志保の心理的距離が近づきはじめた頃からだっただろうか。そしてそれは、付き合うことになった時も、付き合い始めてしばらく経ってからも続いた。
3111降谷零は、恋人であり婚約者でもある宮野志保の呟きに、眉根を寄せた。
ここは降谷と志保が同棲している家。そのリビングのソファに、ふたりは一時間程前から並んで座っていた。そして、目の前のローテーブルには書きかけの婚姻届。降谷が『夫となる』の欄に記載を終え、続いて志保が『妻となる』の欄に記載するところだったのだが。
「もし、私がお母さんと縁もゆかりもない、ただのシェリーという組織の科学者だったら、私を助けようとは思わなかったでしょ?」
降谷は志保の問いかけに大きくため息をついた。
(またその話か……)
もうこれで何度目だろう。事あるごとに志保は「私がお母さんの娘だからなのでは?」と尋ねてきた。思い起こせば降谷と志保の心理的距離が近づきはじめた頃からだっただろうか。そしてそれは、付き合うことになった時も、付き合い始めてしばらく経ってからも続いた。
ひかりせい
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【指輪を買いに行こう】
「3万ドルの婚約指輪」の後日談。降志が指輪を買いに行くお話です。
*前作未読でも短編としてお読みいただけます。
指輪を買いに行こう『指輪を買いに行こう』
そう約束してから早8か月――指輪選びは難航していた。
あの日、志保が指輪を欲しいと言ったのは全くの思いつきで、もともと欲しい指輪のイメージなどなにもなかった。次に降谷と会う時にと事前にネットで検索してみたものの、ヒットする指輪の種類が多過ぎた。片っ端から見ていくうちに、かえって何が欲しいんだか分からなくなり、困り果てていたところ。
「じゃあ、付き合って初めてのクリスマスプレゼントを指輪にしよう」
そう降谷に提案され猶予期間を得た。結局、ホワイトデーのお返しはフサエブランドの限定ブローチということで決着がついた。
それから時は流れて12月初旬。
志保は降谷とクリスマスプレゼントを選ぶため、あの日待ち合わせした大通りへとやってきていた。お昼過ぎから大通り沿いのブティックやデパートをいくつもまわり、2~3時間ほど経ったところで一旦休憩をとることにした。
4969そう約束してから早8か月――指輪選びは難航していた。
あの日、志保が指輪を欲しいと言ったのは全くの思いつきで、もともと欲しい指輪のイメージなどなにもなかった。次に降谷と会う時にと事前にネットで検索してみたものの、ヒットする指輪の種類が多過ぎた。片っ端から見ていくうちに、かえって何が欲しいんだか分からなくなり、困り果てていたところ。
「じゃあ、付き合って初めてのクリスマスプレゼントを指輪にしよう」
そう降谷に提案され猶予期間を得た。結局、ホワイトデーのお返しはフサエブランドの限定ブローチということで決着がついた。
それから時は流れて12月初旬。
志保は降谷とクリスマスプレゼントを選ぶため、あの日待ち合わせした大通りへとやってきていた。お昼過ぎから大通り沿いのブティックやデパートをいくつもまわり、2~3時間ほど経ったところで一旦休憩をとることにした。