haishima_ryo
PASTイチゴ組がパリでスイーツを食べながら距離を縮めていくお話。ピクシブで掲載していたものです。
伯爵様と御曹司の7日間スイーツパリの旅UGUISUMOCHI
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神宮寺レンは、機内食をしかめっ面で義務的に咀嚼している伯爵様の横顔を眺めていた。
型にはめて焼き上げたようなオムレツを一口食べた時の、眉間の皺。整った鼻筋から額へと続く通過地点に、渓谷ができあがる。小さな窓から射し込む陽の光が渓谷に陰影を作り出し、朝焼けに映えるピレネー山脈のようだ。その眉は高原を埋め尽くすリノンの花か。
幼少の頃から美しいものを観て、聴いて、感じ取ることは好きだった。それなりに、目利きは養えていると自負している。その上で、美しさとは表面だけでは感じ取られないものとも知っている。黄金比、もしくはスフマートや透視図法のような技術を用いて表面だけを美しく見えるように彩っても、中身が伽藍堂では胸を打つ美しさとは言えない。まるでaddictionのように、その美しさを感じたくて仕方ないという執着心が湧き上がったときこそ、渇望が満たされるのだ。
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神宮寺レンは、機内食をしかめっ面で義務的に咀嚼している伯爵様の横顔を眺めていた。
型にはめて焼き上げたようなオムレツを一口食べた時の、眉間の皺。整った鼻筋から額へと続く通過地点に、渓谷ができあがる。小さな窓から射し込む陽の光が渓谷に陰影を作り出し、朝焼けに映えるピレネー山脈のようだ。その眉は高原を埋め尽くすリノンの花か。
幼少の頃から美しいものを観て、聴いて、感じ取ることは好きだった。それなりに、目利きは養えていると自負している。その上で、美しさとは表面だけでは感じ取られないものとも知っている。黄金比、もしくはスフマートや透視図法のような技術を用いて表面だけを美しく見えるように彩っても、中身が伽藍堂では胸を打つ美しさとは言えない。まるでaddictionのように、その美しさを感じたくて仕方ないという執着心が湧き上がったときこそ、渇望が満たされるのだ。