あゆひさ
PAST※クチグズキッチンより愛をこめて「だし巻き食いてぇなぁ」
背後から聞こえた声に、グズマは食器を洗う手を止めた。水音に掻き消えてしまいそうな小さな声は、誰に聞かせるためでもない独り言だったのだろう。
振り返り、リビングに視線を向ける。ソファに腰かけたクチナシが、ぼんやりとテレビを眺めていた。画面に流れているのはカントーが舞台らしい映画だった。
ダシマキ。食べたい、ということは食べ物だろう。
食器洗いを再開しながら、目線だけでキッチンを見回す。
食器棚には、初めてこの家を訪れた時からいくぶん増えた食器類がある。食材置きには買い溜めされたエネココアの袋がある。
「…………ダシマキ、ねぇ」
調べればすぐに「ダシマキ」の詳細は知ることができた。カントーやジョウトや、ともかくそのあたりで食べられている卵焼きだという。材料も作り方もシンプルで、手を出しやすいように思えた。
1850背後から聞こえた声に、グズマは食器を洗う手を止めた。水音に掻き消えてしまいそうな小さな声は、誰に聞かせるためでもない独り言だったのだろう。
振り返り、リビングに視線を向ける。ソファに腰かけたクチナシが、ぼんやりとテレビを眺めていた。画面に流れているのはカントーが舞台らしい映画だった。
ダシマキ。食べたい、ということは食べ物だろう。
食器洗いを再開しながら、目線だけでキッチンを見回す。
食器棚には、初めてこの家を訪れた時からいくぶん増えた食器類がある。食材置きには買い溜めされたエネココアの袋がある。
「…………ダシマキ、ねぇ」
調べればすぐに「ダシマキ」の詳細は知ることができた。カントーやジョウトや、ともかくそのあたりで食べられている卵焼きだという。材料も作り方もシンプルで、手を出しやすいように思えた。
あゆひさ
PAST※クチグズ※二人とも酔ってて少々お馬鹿です
※過去無配
言い訳をするならば 言い訳をするならば、思っていた以上に酒が回っていた。
クチナシはグズマと二人で酒を飲んでいた。一抱えはある酒瓶は、少しずつだが着々と中身を減らしていった。
数日前、道に迷っていた観光客をクチナシが道案内し、その礼として贈られたものだ。非番の日だったのだが、つい職業柄かしっかりと案内してしまった。
一人で飲み干すには大きいと、グズマを呼んで二人で飲むことにしたのだ。
一口口にした瞬間に、いい酒だ、と思った。度数が高いのに口当たりがよく飲みやすい。つまりは、少し飲みすぎてしまったのだ。
「……ちょっと、酔い覚ましに行くか?」
ふわふわと心地よく揺れる意識に、そろそろ止め時だと悟る。
「俺はそんなでもねぇけど」
1424クチナシはグズマと二人で酒を飲んでいた。一抱えはある酒瓶は、少しずつだが着々と中身を減らしていった。
数日前、道に迷っていた観光客をクチナシが道案内し、その礼として贈られたものだ。非番の日だったのだが、つい職業柄かしっかりと案内してしまった。
一人で飲み干すには大きいと、グズマを呼んで二人で飲むことにしたのだ。
一口口にした瞬間に、いい酒だ、と思った。度数が高いのに口当たりがよく飲みやすい。つまりは、少し飲みすぎてしまったのだ。
「……ちょっと、酔い覚ましに行くか?」
ふわふわと心地よく揺れる意識に、そろそろ止め時だと悟る。
「俺はそんなでもねぇけど」