ちくの
DONE2023.2.19「メは口ほどに物を言う」展示小説(再録)ヒナイチと秘密を共有するメビヤツの話。
梅香のひみつ「ドラルク! 今夜の監視任務を」
ぴょんと勢いよく床板を跳ね上げロナルド吸血鬼退治事務所に顔を出したヒナイチは、暗い室内に「留守か」と呟く。入口に佇むメビヤツの頭にいつもの帽子がないところを見ると、仕事に出ているのだろう。
「仕方ない、今日のおやつは……ん?」
よいしょと事務所に上がり込んだヒナイチは、部屋じゅうに漂う香りにくんと鼻をうごめかせた。
甘い香りだ。けれど、いつもこの家でしているバターや砂糖やフルーツを煮込んだあたたかい香りとは違う。この、暗がりにうすく広がっていくような、やわらかくてほのかな香りは――……。
ぐるりと事務所を見回せば、香りの元はすぐに判った。
「ああ、これか」
ロナルドの机の上に、ぽつぽつと花をつけはじめた梅の枝が活けられている。
12112ぴょんと勢いよく床板を跳ね上げロナルド吸血鬼退治事務所に顔を出したヒナイチは、暗い室内に「留守か」と呟く。入口に佇むメビヤツの頭にいつもの帽子がないところを見ると、仕事に出ているのだろう。
「仕方ない、今日のおやつは……ん?」
よいしょと事務所に上がり込んだヒナイチは、部屋じゅうに漂う香りにくんと鼻をうごめかせた。
甘い香りだ。けれど、いつもこの家でしているバターや砂糖やフルーツを煮込んだあたたかい香りとは違う。この、暗がりにうすく広がっていくような、やわらかくてほのかな香りは――……。
ぐるりと事務所を見回せば、香りの元はすぐに判った。
「ああ、これか」
ロナルドの机の上に、ぽつぽつと花をつけはじめた梅の枝が活けられている。