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    #水王水

    aquaKingWater

    palco_WT

    DONELA ROSE ROUGE

    みんぐと王子のこれもひとつの未来
    ぱたり、と彼は手にしていた雑誌を閉じて顔を上げた。その表紙には「アマ竜王、プロ編入試験へ」という見出しと、将棋盤の前に座して今まさに駒を指そうとしているスーツ姿の赤っぽい髪の男の姿があった。その表紙を愛おしむように指先で撫で、玄関の呼び出し音に誘われるように腰をあげた。
    「おーじ、俺や、開けてぇな」
     けれど、その足取りはどうしてか、まるで怯えるようにゆっくりで、足音ひとつ大きく立ててしまったのなら、その瞬間に世界すべて壊れてしまうのではないかと思っているかのような。
    「……暗証番号、替えてないよ」
     インターホンへと向けた、震えているかと思った声帯は、存外なめらかに発声できた。
     それは、彼の誕生日だった。20××1205。変えられるわけがない。心と同じく。
     キイ、とドアが開く。
     ああ、と王子は自らの感情のありかも見定められないまま、ただため息のように呟くと、眩しいものを目の当たりにするように目を細めた。こちらに向かって手を差し出した男を見つめて。
    「王子、迎えに来たで」
    「なんで、来たの?」
    「なんでも何も、今言うたやろ、迎えに来たって。それとも結果出るまで待てせてもうた間にこ 1732