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MOURNING記憶にない町日故に尻切れとんぼ 助っ人に西園寺が入ると聞いた時、ああ、このコンクールはもうダメだなと思った。天上天下唯我独尊を地で行く我が校きっての天才、西園寺エニス皇帝陛下。彼は前述の通り、協調性の欠片もなかった。カルテットを行う上で一番重要なのは息を合わせることだろう。誰とでも、いつでも合わせられる。それが一流に求められる素養だ。西園寺にはそれが欠けていた。だから無理だと思った。
しかし、意外にも西園寺はカルテットを経て少しずつ変わっていった。人と変わることで今まで投げ捨てていた情緒が育ったらしい。当然、演奏にもそれはプラスに働いた。コンクールで優勝が狙えるほどに。もしかしたら、優勝できるかもしれない。出場すら怪しかった俺たちが。できるだろうか。いや、やってやろう。そうしたら、もう少しだけ勇気が出るかもしれない。
なんて、青春っぽく表してみたが大したこでは無い。優勝できるかも、なーんて、浮かれた思考に引きづられ勢いの波に乗ってしまえー!ということである。そして乗った。展開が早い?? そんなことは知らん。そちらで適当に補完しておいてくれ。
俺は教師である町田先生が好きだった。男性教諭である。惚れた理由諸々 3896
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DOODLEゆるゆる書いてた町日「はああああ、やっぱ、町田先生カッコイイよな〜」恍惚とした表情で、日野は宙を見つめる。試しにとその視線の先を追ってみたがやはり何も無い。いつもの発作かと、西園寺はため息をついた。
「あ、ため息つくと幸せが逃げるぞ」
「なら僕の幸せはお前が吸い込んでいるんだろうな」
西園寺の言葉に、日野はキョトンと大きな目を瞬かせた。
「またまたー、皇帝もそういう冗談言えるようになったんだなあ」
うんうんと訳知り顔で頷く日野に西園寺思わずこぶしを握りかけ、思いとどまった。
いけない、手に負担がかかる。
この程度、そう思わなくもないが何がどう作用するか分からない。余計な負担をかける必要は無い。そう自分を戒め、どうにか意識を逸らそうとする。だが無慈悲にも苛立ちの原因は言い募った。
「なあ、西園寺もそう思うだろ」
「何の話だ」
「町田先生だよ! カッコイイよなぁ」
「顔の造作は整っていると思う」
「お、話が分かるじゃん。西園寺も悪くないよ、先生には負けるけど」
またデレっと日野の顔が溶ける。西園寺は自分の容姿にさほど興味はないが先程の日野の言葉には非常に腹が立った。
「そんなに好きなら告白でもな 2863