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    #若モリアーティ

    youngMoriarty.

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    DONE【FGO】モリアーティと藤丸くんによる微妙な距離感を保ちながらの交流の話
    ヤング・モリアーティと藤丸立香 コツ、コツ、と。硬質な靴底が鳴る音は規則的で、定規で引いた直線のような几帳面さを感じさせる。高い天井に反射するその響きに、藤丸立香はそっと溜め息をいた。
     ノウム・カルデアの図書館の一角に設けられた読書用のスペースはと言えば、普段から、埋まっている席のほうが稀である。図書館自体の利用者はさほど少ないというわけではないが、やや奥まったその空間はなんとなく足を運びがたい空気でもあるのかもしれなかった。今日も例に漏れず、藤丸が腰掛けている席を除けば見渡す限りが空席だった。が、迷いない足取りで近づいてきた訪問者は何を考えているのか、低い衝立を挟み、藤丸の正面の席にすとんと腰を下ろす。
     空席だらけの電車で、わざわざ隣に座られたような居心地の悪さを覚える──まあ実際のところ、電車など、もう何年も乗ってはいないのだけれど──目の前に座る相手とは生まれた国も時代もかなりの隔たりがあるので、あちらにおいてはこれがスタンダードなマナーなのかもしれない。藤丸はそう考え、無理に自分を納得させようとしたが、残念ながらうまくはいかなかった。
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