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PAST「鬼ふたり」のつづき戯れる鬼っこ
夜にとける「まあ、今日はえらい遊んできはったんやねぇ」
おいで、おいでと招き寄せた酒呑童子に崩れた髪を梳かされながら、彼女に促されるまま茨木童子は土産話を意気揚々と奏でていく。どうやら随分昂ったらしい。弾んだ声に紅潮した頬がそれを物語っていた。
稲穂のようだと生前酒呑が褒めそやした金糸は酒呑に愛でられてふわりふわりと揺れはじめる。慣れた手付きでつげ櫛をあやつる酒呑は焔に染まっている毛先を一束掬って口付けを落としたが、ご機嫌に語る鬼がそれに気付くことはない。
「はい、おしまい。いつ見てもええなあ。好きやわぁ」
「ふっふっふ! 酒呑のために伸ばしたようなものだからな」
酒呑のおしまいの一言で茨木がパッと振り向くとその動きにまるで犬の尻尾のように柔らかな毛先が揺れ動き、勢いのままに二人は白いベッドに沈んだ。鈴を転がすようにわらう鬼は、髪をほどく際に外していたハイビスカスの飾りを彼女の頭へと戯れに戻す。まったく、いじらしいことを言うものだ――彼女の言葉にはるか昔を思い出しながら鬼は心のなかで独り言つ。
2664おいで、おいでと招き寄せた酒呑童子に崩れた髪を梳かされながら、彼女に促されるまま茨木童子は土産話を意気揚々と奏でていく。どうやら随分昂ったらしい。弾んだ声に紅潮した頬がそれを物語っていた。
稲穂のようだと生前酒呑が褒めそやした金糸は酒呑に愛でられてふわりふわりと揺れはじめる。慣れた手付きでつげ櫛をあやつる酒呑は焔に染まっている毛先を一束掬って口付けを落としたが、ご機嫌に語る鬼がそれに気付くことはない。
「はい、おしまい。いつ見てもええなあ。好きやわぁ」
「ふっふっふ! 酒呑のために伸ばしたようなものだからな」
酒呑のおしまいの一言で茨木がパッと振り向くとその動きにまるで犬の尻尾のように柔らかな毛先が揺れ動き、勢いのままに二人は白いベッドに沈んだ。鈴を転がすようにわらう鬼は、髪をほどく際に外していたハイビスカスの飾りを彼女の頭へと戯れに戻す。まったく、いじらしいことを言うものだ――彼女の言葉にはるか昔を思い出しながら鬼は心のなかで独り言つ。
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PAST茨木童子∞酒呑童子それいけ 酒呑ちゃん
鬼ふたり あいらしい鬼が泣いている。己の名を呼びながら、けれども別の男を思って泣いている。抱き着く茨木の頭を撫でながらそっと瞼を閉じた。ああ、なんてつまらない。すべてはあの男が来てからだ。いつかそんな相手ができるだろうとは思っていたが、いざその姿を見るとどうしようもなく苛立たしい。彼女のすべてを向けられるあの男がずるい。
ふと、胸に押し付けられていた茨木の顔が見たくなり、彼女の顎へと指を添えた。
「しゅてん…?」
びいだまのような瞳がぼんやりとこちらを見遣る。泣き顔も可愛いけれど――そんなことを思いかけて、漸く己の心を思い知った。眉間に軽い口付けを施せば、少しの間ののち、ぽ、ぽ、ぽと彼女の頬に朱が走る。
「可愛らしいなあ」
1306ふと、胸に押し付けられていた茨木の顔が見たくなり、彼女の顎へと指を添えた。
「しゅてん…?」
びいだまのような瞳がぼんやりとこちらを見遣る。泣き顔も可愛いけれど――そんなことを思いかけて、漸く己の心を思い知った。眉間に軽い口付けを施せば、少しの間ののち、ぽ、ぽ、ぽと彼女の頬に朱が走る。
「可愛らしいなあ」