夜にとける「まあ、今日はえらい遊んできはったんやねぇ」
おいで、おいでと招き寄せた酒呑童子に崩れた髪を梳かされながら、彼女に促されるまま茨木童子は土産話を意気揚々と奏でていく。どうやら随分昂ったらしい。弾んだ声に紅潮した頬がそれを物語っていた。
稲穂のようだと生前酒呑が褒めそやした金糸は酒呑に愛でられてふわりふわりと揺れはじめる。慣れた手付きでつげ櫛をあやつる酒呑は焔に染まっている毛先を一束掬って口付けを落としたが、ご機嫌に語る鬼がそれに気付くことはない。
「はい、おしまい。いつ見てもええなあ。好きやわぁ」
「ふっふっふ! 酒呑のために伸ばしたようなものだからな」
酒呑のおしまいの一言で茨木がパッと振り向くとその動きにまるで犬の尻尾のように柔らかな毛先が揺れ動き、勢いのままに二人は白いベッドに沈んだ。鈴を転がすようにわらう鬼は、髪をほどく際に外していたハイビスカスの飾りを彼女の頭へと戯れに戻す。まったく、いじらしいことを言うものだ――彼女の言葉にはるか昔を思い出しながら鬼は心のなかで独り言つ。
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