没稿ちびりちびりと、舐めるようにグラスを傾ける。
流石にそろそろ、自身の体とアルコールとの付き合い方も分かるようになってきた。
それでも、まだ皆のいるバーで飲む事は無い。
自室で一人、寝酒に少量嗜むか、そうでなければ今日の様に、シルバーアッシュが訪れた際に余裕があれば酌み交わす、という程度だ。
こうして、行儀悪く寝台に腰掛けながら呑むのは片手の指で足りる程の筈だが、既にお互い遠慮なく、思い思いに寛ぐようになっている。
今も、襟元を寛げ、タイを緩めた姿でグラスを傾けているのだが、そんな姿を見て、所謂大人の色気とはこういうものなのだろうかと、同じくグラスを傾けながらドクターは考えた。
その見目も、纏う空気も、エンシオディス・シルバーアッシュという人物は目を引く。
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