A lingering aroma 残り香「無い! 無い、無い、ないっ!」
魔法史の授業が終わり、次の授業は飛行術というところで監督生が騒ぎ出した。
「ンだよ、そんなに慌てて。何か忘れモン?」
エースが呆れ顔で監督生に尋ねれば、その通りだと言わんばかりに勢いよく何度も首を縦に振る。
「なに忘れたんだよ?」
「運動着……」
「つなぎの方?」
「Tシャツの方……デス……」
「なんでつなぎを持って来ててTシャツ忘れんの?」
エースが、溜息交じりに呆れた声を出す。
「昨日、洗濯して干したまんまだったの……。でも、まぁ、仕方無いから、つなぎだけでいっか」
先ほどまでの慌てぶりからは想像できないほど、あっけらかんと凄い事を言い放った監督生にエースが目を剥く。
「ダメ、ダメ、ダメ!」
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