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    高間晴

    @hal483

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    高間晴

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    敦太800字。桜。

    ##文スト
    #敦太
    dunta

    もうすぐ春ですね 昼休み。僕は昼食を早々に済ませると、デスクで携帯を開いて去年撮った桜の写真を眺めていた。今年は太宰さんと二人で行きたいなあ、なんて思っているのだが。彼の人は何時もの如く職場から脱走済み。隣の誰も居ない乱雑なデスクを見遣る。其処で背後から声が掛けられた。
    「敦君。携帯で何見てるの?」
    「あ、谷崎さん。見ます?」
     谷崎さんは太宰さんの椅子を引っ張って傍に座ると、僕の携帯を覗き込んできた。
    「桜かァ。もうすぐ咲く季節だね」
    「そうだ。今度太宰さんと桜を見に行きたいと思ってるんですけど、良い場所知りませんか?」
     訊くと、谷崎さんはポケットから自分の携帯を取り出す。
    「えーとね、此れ此れ。三渓園で撮ったヤツ」
     見せられたのは、池の畔に咲く見事な夜桜を背景に、笑顔で此方を見ているナオミさんの写真だった。良い写真だ。思わず「わぁ……」と感嘆の声がこぼれる。
    「良いデートスポットだよ。ナオミも凄く喜んでくれたし。あとね、此処は夜になると燈明寺の三重塔がライトアップされるンだ。凄く綺麗だよ」
    「本当ですか」
    「うん。此処はカップルが多かったから、そういう雰囲気にもなりやすい」
     彼の『そういう雰囲気』という含みのある言葉に、僕はごくりと喉を鳴らす。つまり、太宰さんと一歩進んだ関係になれるかも知れない、のか。
     其処で内緒話をする様に、僕の耳元へと谷崎さんが顔を近づけてきた。掌を口元に添えるとひそひそ声で囁いてくる。
    「で、太宰さんとは何処まで進んでるの?」
    「えっ、あの……その。手は繋いだ事が有ります……」
     顔が熱い。恥ずかしくて消え入りそうな声で僕が返すと、谷崎さんが「そっかァ」と小さく笑った。そして僕の肩をぽんぽんと叩いて、椅子から立ち上がる。
    「頑張ってね、敦君」
     去っていく谷崎さんの後ろ姿を見送る。直ぐにナオミさんが駆け寄ってきて、谷崎さんに抱き着くと楽しげに談笑を始める。あの二人、絶対に兄妹だけの関係じゃないよなぁ。
     気を取り直して、携帯で『三渓園』と入力して地図を探す。今度、一人で下見に行って来よう。
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    高間晴

    DOODLETLに花見するチェズモクが流れてきて羨ましくなったので書きました。■夜桜で一杯


     新しく拠点を移した国では今が桜の花盛りだそうだ。それを朝のニュースで知ったモクマは「花見をしよう」と期待たっぷりに朝食を作るチェズレイに笑いかけた。
     日が沈んでからモクマはチェズレイを外へ連れ出した。桜が満開の公園へ行くと、ライトアップされた夜桜を楽しむカップルや友人連れの姿がちらほら見える。一箇所、満開の桜の下が空いていたので、そこにビニールシートを広げて二人で座る。持ってきたどぶろくの一升瓶からぐい呑みに注ぐとモクマはチェズレイに渡す。続けて自分の分もぐい呑みに注ぐと、二人で乾杯した。
    「や~、マイカから離れてまた桜が見られるとは思ってなかったよ」
    「それはそれは。タイミングがよかったですね」
     モクマがいつにも増して上機嫌なので、チェズレイも嬉しくなってしまう。
    「おじさん運がなくてさ。二十年あちこち放浪してたけど、その間に桜の花なんて一回も見られなかったんだよね」
     でもそれもこれも全部、なんもかも自分が悪いって思ってた――そう小さな声で呟いてぐっと杯を干す。
     このひとはどれだけの苦しみを抱えて二十年も生きてきたんだろう。事あるごとに何度も繰り返した問い 1240

    ▶︎古井◀︎

    DONE #チェズモクワンドロワンライ
    お題「夢/ピアノ」
    ピアノを弾いたり聞いたりするチェズモクのはなし
     ピアノの美しい調べがモクマの鼓膜を揺らし、微睡のさなかに心地よく沈んでいた意識を揺り起こした。そっと目蓋をひらくと、目の奥に残る微かな怠さが、まだもうすこし寝ていたいと訴えている。
     なにか、ずいぶんと長い夢を見ていたような。輪郭を捉えていたはずの夢の記憶は、意識の冴えに比例するかのように、ぼんやりと霞む脳に絡まっていた残滓ごと霧散していく。もはや、それが悲しかったものか嬉しかったものなのかすら思い出せないが、そっと指先で触れた目尻の膚が、涙でも流れていたみたいに張り詰めていた。
     怠惰な欲求に抗ってゆっくりとシーツの海から身体を起こしたモクマは、知らぬ間にもぬけの殻と化していた、すぐ隣に一人分空いていたスペースをぼうっと眺める。今響いているこの音は、どうやら先に目覚めた恋人が奏でているらしい。
     音に誘われるまま、眠気にこわばったままの上半身をぐっと伸ばし、モクマはサイドテーブルに置かれていたカーディガンに袖を通す。モクマが何の気なしに足を下ろした位置に、まるで測ったみたいにきっちりと揃えられていたスリッパに、思わず笑みを漏らしながら立ち上がった。
     壁際のチェストの上でもうもうと 3916