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    na__dream0707

    @na__dream0707
    ハッピー五夏チャン

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    五夏と虎伏が存在する世界線の転生パロの話。
    いつかこんなの書きたいなぁっていう話。悠仁視点。

    消防士×獣医師 あぁそうだ。俺は、呪術師だった。


     その記憶が蘇ったきっかけは爺ちゃんが死ぬ間際に遺した言葉だった。ポツリとこぼれたその言葉は、どこか聞き馴染みがあった。ザワザワと騒がしくなる心。背筋を駆け下りていく冷や汗。
     虚しく響く、心音が止まったことを知らせる機械音と共に脳内を駆け巡る記憶。宿儺の指を飲み込んだ事から始まった呪術師としての人生。爺ちゃんの言葉呪いの通り最後は、最期は、大勢の人に見守られながら死んだんだっけ。大好きだったアイツが最後に見せた顔はどんなだったっけ。
    「俺、伏黒に好きだって言えなかったなぁ……」
     この言葉はきっと呪いになる。そう思うと「好きだ」なんて言葉は喉の奥に引っかかって出てこなかった。でもそれで良かったとも思っていた。伏黒には幸せになってほしかったし、死んでしまう人間に縛られるようなことはあってはいけないと思っていたし。でも、今更こんな感情までも思い出さなくても良かったのに。
    「爺ちゃん。俺、助けるよ。手の届く範囲でいいから」
     爺ちゃんに向かって放った言葉は静かに病室に落ちる。大勢に囲まれて死ぬかどうかは分からない。でも、俺にできることをしていけたらいいなとは思う。今も俺と同じように生きているのかも分からない、伏黒への呪いを抱えながら。
     病室に慌てて入ってきた看護師さんたちをぼんやりと見つめ、俺は爺ちゃんの死を淡々と受け入れた。病室の窓の外では、桜の花びらが散り始めていた。

     肉親はもういない。両親は幼い頃に亡くなっていたし、唯一面倒を見てくれた爺ちゃんも死んでしまった。将来何かになりたい、何かをしたいという夢も無かったはずの俺は、爺ちゃんの命日を境に「一人でも多くの人を助けたい」と思うようになり高校を卒業してからは消防士への道に進んだ。元々身体は頑丈な方だったし、人を助けるために身体を鍛えることも苦では無かった。消防士になって早五年。今日も俺はオレンジの服に身を包み、住み慣れたこの町の為に奔走する。
     そんな中でもふと考えてしまう。もしも伏黒も同じように生きていたら、伏黒はどんな人生を送っているだろうか。頭がいいから、きっと大学には通っていて医者とか……いや、人よりも動物を救いたいと獣医になっているかもしれない。玉犬のようなもふもふの犬を飼っているかもしれない。そして何より、呪いのないこの世界では、両親と姉ちゃんと穏やかな人生を送っていて欲しいと願って止まない。
    「虎杖先輩! 本当に本当にお願いします! 合コン急遽来れなくなった人がいて……お代はいらないので参加だけしてくれませんか!?」
     更衣室で着替えながら明日は休日だし飲みに行こうかな〜と思っていた所で後輩からお声が掛かった。普段の自分なら断っていただろう。合コンに行って女性からグイグイアプローチされても応える気がないから毎回申し訳ない気持ちになってしまうからだ。過去に何度か女性と『お付き合い』をしたことはあった。でもやっぱり、どうしても一番に愛することはできなかった。黒髪の子と付き合った時なんて、セックスしながら頭の何処かでもし伏黒が今世では女性として生きていたらこんな感じなのかな、とか、伏黒もこんな風に喘ぐのかなとか、そんな事を考えたりもして最低な男だった。いや、改めて振り返ってみればどこまでも最低な男である。伏黒にも、付き合ってきた彼女たちにも申し訳ない。心のなかで静かに謝罪しながら、付き合ったりする気は全く無いけれどただで楽しく飲めるならいいか、なんてそんな軽い気持ちで今回の誘いには乗ってしまった。
    この合コンが、俺の人生を変えるとも知らず。
    「いいよ。ちょうど飲みたかったし」
    「え!? マジすか!? ありがとうございます!」
     頭を何度も下げる後輩に店の住所と集合時間をメッセージアプリで送ってもらい、時刻を確認する。一度家に帰ってからでも間に合いそうだ。
    「じゃあまた店で!」
     そう一言後輩に声を掛けて職場を後にする。家に帰ってシャワーを浴びて、適当に準備をして店に向かおう。最近乗り始めたロードバイクに跨り、俺は地面を蹴った。
    『◯番の個室です!』
     後輩からのメッセージを見て、一つスタンプを送る。ガヤガヤと騒がしい店内をゆっくりと進んで行けば小上がりの個室が視界に入る。靴を脱いで襖を開ければ職場の面々が既に着席していて、女性陣もほぼ集まっていた。開始予定時刻の10分前に到着した俺が一番遅いくらいだ。どうやらこの面々は気合が入っていたらしい。
    「待って俺一番最後? ごめんもっと早く来れば良かった」
     みんなに謝りながら簡単に名前と年齢の自己紹介をして襖から一番遠い奥の席に腰をおろす。俺の向かいは空席で、斜め右に座る女性が笑い掛けた。
    「まだつみきちゃん来てないし大丈夫ですよ〜! えと、虎杖さんは何飲みます?」
     その名前に一瞬心臓が止まった気がした。つみき? 彼女は今そう言ったのだろうか。思い出されるのは伏黒の姉ちゃん。伏黒はよく『津美紀』と呼んでいた。もし、もしも、今ここに来る人が伏黒津美紀だとしたら、俺は聞いてしまうかもしれない。弟とかいますか? って。
    「虎杖さん?」
    「あ、えーと……俺も生で!」
     トクトクと早くなる心臓がうるさい。もしかしたら伏黒も同じように、しかもわりと近い街で生きているのかもしれないと思うと胸が高鳴ってしまった。遅れて届いたキンキンに冷えたジョッキを握り締めカチン!といい音を鳴らした。
     俺はその気が無いから、基本は男性陣のフォローばかり口にしていた。女性からたまに好きな食べ物は? とか、犬派? 猫派? とか聞かれたりしても思い浮かべるのはずっとずっと大好きな人。曖昧にして答えてやれば少しだけ納得いかなさそうな顔をして、隣に座る同僚たちの輪に入っていく。
    「遅くなってすみませ〜ん!」
     凛とした声が耳に飛び込んでくる。声がした方に視線を向ければずっと空席だったところに座る予定の人が顔を出した。 

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