月に昇らじ 夜の風が竹林を通り抜ける囁くような音が聞こえてくる。風の音に藍忘機が琴を弾く手を止め、開け放たれた外へと視線を向けると、魏無羨は軒先から見上げた月の明かりに目を細めながら天子笑を呷っていた。
静室の奥に座る藍忘機がじっと魏無羨の顔を見つめていると、魏無羨が振り向いた。藍忘機の琴の音が止まったことが気になったらしい。
「藍湛、どうかしたのか?」
月明かりに照らされた魏無羨の陰影の濃い輪郭に見惚れながらも、藍忘機は前々から気になっていた疑問を口にした。
「好きなのか?」
「ん? 俺が酒を好きなのは見てれば分かるだろ? 酒ならいくらでも飲めるなぁ」
魏無羨の答えを聞かずとも、彼が酒を愛していていくらでも飲めることは良く知っている。
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