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    MzkLk_TW

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    ダンマカ前編が配信された直後に書いていたものを手直ししました。
    当時はエ様のことをカードのわるわるスマイル人格と思っていたので悪女っぽく書いてたのですが蓋を開けたらただのフワフワのほよほよだったので、、、

    #ロイエテ
    roiette.
    #ユキモモ

    暗がりにひそむ 大聖堂は、ユニティオーダーによって昼夜守護されるナーヴ教会の敷地の中でも特に厳重に守衛される最も威容を擁する聖域である。儀式の時を除き、平常その扉は堅く閉ざされ、立ち入ることを許されている者は教会内においてもごく僅か。
     夜警のさなか、その扉がほんの隙間開いていることに気づいた。
     生唾を一つ飲み込み、腰元の銃に手を伸ばしながら、そっと、ひと一人分が通れるだけの隙間に身を潜ませた。
     天井高い聖堂内部は僅かに蝋燭が灯されていた。小さな光を受けてあちこちに架かる深い影の中を渡り、不届な侵入者を見定めるべく、視線を彷徨わせる。かすかな話し声と物音は広い聖堂の前方から聞こえてくる。近くの柱の影まで辿り着き、そっと目を凝らした。
     最前、儀式の折には聖遺物の供される祭壇の上に、もつれあう人影があった。
     思わず漏れそうになった声を手で押さえ、そのまま、物陰にしゃがみ込んだ。信じられない光景に心臓が早鐘を打っていた。
     動揺して荒くなる呼吸をどうにか整えると、震える手を口元に強く押し当てたまま、また慎重に、物陰から不逞を冒す二人を注視した。
     細身の上背の、見事な銀色をした長髪の男が、黒い衣服を纏った誰かにのしかかっている。銀髪の男は紛れもなく上司であるロイエ隊長だった。一兵卒に過ぎない己など話しかけたこともない、遥か雲の上の男。良識的で、常識的で、寛大かつ極めて有能。そういう優れた評価を、隊中からも、アーク市井からも広く得ており、また、ナーヴ教会の実権者であるミゼリコルド様のおぼえもめでたいという。
     軍人とはとても思えない美貌や、その柔らかな物腰からは、今の荒々しい仕草は少しも想像がつかず、心臓が肋から飛び出さんばかりに仰天した。
     そしてその不謹慎極まりない逢瀬の相手が誰か悟った瞬間に、きっと己の心臓は一度止まったに違いない。二人の人影の傍に、ポツネンと放り出された獣の仮面があったからだ。
     ーーこの時、真に初めて、エーテルネーア様の尊顔を目の当たりにしたのだった。
     想像よりもずっと幼く、あどけない、まるで少年のような顔立ちだった。顎がほっそりとして、印象的な大きな目と、その、闇の中でもきらめき、そして炎のように揺らめく瞳の色。驚くほどに端正な顔貌だった。
     黒く塗られたエーテルネーア様の細い指先がロイエ隊長のうなじに這わされ、長い銀髪が聖印の刻まれた手の甲に絡まっていく。広い隊長の背中が覆い被さり、エーテルネーア様の体は隊長の腕の中にすっかり収まり、全容を見ることは叶わなかったが、二人の体が淫靡に身動ぎしては揺れて、その微かな水音と息遣いと、時折漏れる喜悦混じりの吐息に、硬直してただ息を潜めて二人の痴態を凝視していた。
     聖職者にあるまじきはしたなさで広げられた両脚は軍人の側腹を挟み、誘うように膝がその稜線をなぞる。まるで娼婦さながらに、官能的な動きだった。長い黒衣の裾から白い肌の色が覗き、足首まで施された厳粛な金の装飾が、わずかな灯りに照らされて鈍く光る。エーテルネーア様は裸足だった。くるぶしの丸い骨の形が闇に白く浮かび上がり、遠目にもなんとも柔らかそうな足裏が、ロイエ隊長の尻から太腿にかけて撫でさするように動く。その足の指先が隊長の足の間に差し込まれ、息を呑んだ。あまりにも直裁な動きだった。
     エーテルネーア様の首元や胸元を熱心に愛撫していた隊長の体が一瞬びくりと震えて、直後、悪戯を続けるエーテルネーア様の足首を掴んでやや無造作に押さえ込むと、エーテルネーア様はころころと無邪気に笑った。淫らな仕草とあどけない笑い声のちぐはぐさに背筋が粟立った。
    「こら。おいたが過ぎますよ……」
    「だって……ん、」
     笑い混じりの言い訳は強引に再び合わさった唇に飲まれて消えていった。
     鼻に抜けるような甘ったれた嬌声は、礼拝で粛々と教典を読み上げ、畏怖さえ感じるような荘厳さで朗々と典礼の御言葉を述べられる、あの清廉な声とはまるで違う。耳に届く声は滴るほどに熟れきった果実のようにどろりと粘つき、甘い。
     細い足首を掴んでいたロイエ隊長の手がゆっくりとしなやかに伸びるふくらはぎから、膝裏をくすぐり、やがて太ももに指を沈ませた。荒事とは無縁なまま、日々祈りを捧げて生きるエーテルネーア様のおみ足は思わず口の中に涎が湧くほどに柔らかかった。そのまま、長衣に覆われて見えない先に、隊長はその不埒な手を迷わず差し込んだ。瞬間、生娘のような高く上がった嬌声に、しー、とまるで子供に言い聞かせるように宥める。黒衣の中に差し込まれた手は、徐々に動きを早くしていく。衣擦れの音と荒くなる呼吸、喉奥で堪えきれずにこぼれ出る悦楽にしたたる声のかけらと、みだらな水音。
     語尾の掠れた鋭く小さな悲鳴と共に、ロイエ隊長の腕の中でエーテルネーア様の細い体が弓形にしなった。
     ぐずるような涙声が途切れ途切れに、隊長の手の動きに合わせてこぼれ出る。心臓はもはや飛び出さんばかりに早打ち続けていた。
     御方が気をやった、その瞬間の姿は酷く美しかった。ロイエ隊長の腕の中からぐったりと身を投げ出すように仰いた細やかな顎の形、浮いた喉骨、花びらを思わせるくちびるはだらしなく開いたまま、初めて見る八重歯の白さに心臓が高鳴った。恍惚に浸る目はぼんやりと天井の聖人の彫刻を見上げていた。
     ロイエ隊長は弛緩するエーテルネーア様の体をそのまま弄んでいる。無作法な手で無理矢理に絶頂から引き戻し、ぎくぎくと痛々しいほどに痙攣する華奢な体を押さえ付けながら、か細い声で懇願するエーテルネーア様を無視してその耳元に吸い付く隊長は、平素のとり澄ました姿からは想像がつかないほどに野蛮で雄々しい。
     ロイエ隊長はやがて、投げ出されたエーテルネーア様の体にゆっくりと折り重なるように身を下ろした。隊長の肩口を掴む手は力み、白く震え、男の体を受け入れるために開かされた両足がぎこちなく宙を蹴る。足は何度かばたばたと身悶えて、やがて、息絶えるようにゆっくりと力が抜けていった。二人は暫くの間、動かずにじっとして、折り重なったままでいた。
     やがて、少しだけ体を起こすと、節張った手がエーテルネーア様の両頬を包み、労るように撫でた。エーテルネーア様もまた、ロイエ隊長の顔に手を伸ばすと、精悍な白皙にかかる髪を優しい仕草で横に流してやった。二人はしばし互いの目を覗き込むように見つめ合い、そのままそっと舌を絡ませながら口付けを交わすと、隊長はエーテルネーア様にのしかかり、すぐに小刻みな律動が始まった。白い背中にすっかり覆い隠されたお姿の唯一垣間見えるのは、ロイエ隊長の首に取り縋る聖印の刻まれた手と、身じろぎのたびに跳ね上がる白い両足だけ。たったそれだけのその光景は、あまりにも卑猥に過ぎた。
     衣に隠されてもなお漏れ聞こえる肌を打ち付ける濡れた音、男の低い呻き声と、哀れなほどによがりきった喘鳴。
     長い衣と組み伏せる男の体躯に隠れた貴き御人の、よがり悶える痴態は一体どのようなものなのだろうかと、重なる影を凝視しながらその姿を夢想する。あの不思議に光る赤い瞳は、涙を湛えてさぞや耽美に潤んでいるだろう。蜜の如く甘い涙の雫を飲み込み、瞼のふちに生え揃う睫毛を一本ずつ丹念に舐ったら、どれほど妙なるお声を聞くことができるだろう。脳裏で、エーテルネーア様を組み敷く男の姿がロイエ隊長とぶれて、やがて自分の姿と重なった。いとけない顔をした貴人は、腕の中で可憐に、そしてどこまでも淫らに啼いて、あらぬ熱を欲しいと繰り返し哀願して胸元に縋りつく。愛しいかの人の可愛らしいおねだりを叶えるべく、一つ頷いて、秘されたあわいにそっと身を寄せてーー
     顔を上げて、赤い双眸と目が合った。
     途端、心臓を直に握りつぶされるような、そんな痛みすら感じるような怖気を覚えた。顔貌はあどけなくすらあるエーテルネーア様の白面が、ロイエ隊長の肩にしがみついて揺さぶられるままに、じっとこちらを見ていた。口の中が乾き、呼吸が歪に乱れる。
     頭の中で好き勝手に犯した御方が、その瞳だけが凪いだ水面のような静謐さを湛えて見つめてくる。
     エーテルネーア様は、にこ、と小さく笑った。
     全身をぞっと恐怖が走り抜けた。情事を盗み見ていたことを咎められてではない。そんなわかりやすいものではない。
     ナーヴ教会の本尊とも言える大聖堂の中で、禁忌の快楽に身を委ねながら、あまりにも無邪気にエーテルネーア様は笑っていた。情欲に耽り、蠱惑し、色欲に目が眩んだことを咎めるでもなく、この空間に観衆として受け入れてさえいる、その厭らしい禍々しさと、全てを赦すと言わんばかりの慈悲深さとが渾然となって、どうしてか歯の根の合わなくなる恐ろしさを覚えた。
     ロイエ隊長の手が御方の項を掴み、エーテルネーア様はまた深い口付けにもつれ込んだ。視線が逸れる。血の色をした瞳が瞼に隠れ、ようやっと魔術にかけられたように硬直していた体を動かせた。へたり込んでいた足に鞭を打って、這々の体で大聖堂を抜け出した。
     冷たい汗で全身を濡らしながら、今見たものが現実か悪夢か判断つかぬまま、月のない夜の中を兎に角ここではないどこかへと逃げ去るほかなかった。


    「すみません」
     矢庭にそう謝られたので、エーテルネーアはきょとんと首を傾げた。とんと心当たりのない謝罪だった。
     最高位の階級を示す飾緒や肩章を整えながら、ロイエは目元を伏せてなんだか悄然とした冴えない様子でいる。
    「僕の隊の人間が一人……紛れ込んでしまいましたので」
    「ああ……」
     そういえば、随分と熱っぽい視線で見られていたような気がする。
     怯えた顔で大聖堂の影を渡って入り込んできた闖入者は、もつれあうロイエとエーテルネーアを見て少なからぬ衝撃を受けていたようだった。そうして一時も目を離さず、まるで夢か、あるいは幻でも見ているかのようなぼんやりとした、そのくせ、生々しい欲望を視線の奥にたぎらせて、エーテルネーアを見つめていた。ちぐはぐした感情に動揺する姿が哀れに思えて、好き勝手にエーテルネーアの肌を貪っていたロイエの肩にしがみつきながら、精一杯、笑いかけてやったのだ。恐れることは何もないし、君は何も悪くないよ、と。そう伝わればいいと思っていた。
     なのに、エーテルネーアが笑いかけたその瞬間に、兵士は一気に青ざめて慌てて出て行ってしまったのだった。職務に厚いロイエの兵士のことだ、気づかないふりをしてやった方が良かったのかもしれない。ましてや大聖堂という仮にも教会の中の最も聖なる場所で、教典にも記された不貞を働いていたのは紛れもなくロイエとエーテルネーアであり、罪があるとすれば、それは間違いなくこちらのものである。
    「なに、考えてるんです」
     自分で口にしたくせに、問いただす声色はひどく冷たく硬い。自分にのみ一心に向けられるどろりと凝った嫉妬に首の後ろが粟立って、その重みの心地よさにエーテルネーアは思わず微笑んだ。美しい形をしたロイエの目は暗がりに沈んで、情欲と執着に蒼く燃えている。
    「……君のことを」
    「本当に?」
     疑り深く追及する声は、それでもなんとも妙なる美しい音をしている。
    「もちろん。……君があれだけ、僕を暴いて、濡らして、注いで、満たしてくれたというのに、他に何を考えるというの?」
     そうエーテルネーアが歌うように言えば、秀麗な顔立ちに影を落としていたどす黒い嫉妬が途端に霧散していく。目の端を淡く染めながらロイエの指先が労るようにエーテルネーアの頬をそろそろと撫でて、その仕草がひどく恐るおそるといった具合だったので、エーテルネーアはくすぐったくなってしまう。我慢することなくくすくすと喉奥で笑いながらその手に頬を擦り寄せる。
    「見られてしまったね、ロイエ」
    「……誓って、二度目はありません」
    「知っているとも。君はとても優秀だ」
     さっさと固い軍服の中に押し込めてしまった熱い身体が名残惜しくて、つれない恋人にそっと身を寄せると、ロイエは心得たようにエーテルネーアの背中を抱き寄せてくれる。
     エーテルネーアを果てしなく甘やかしてくれるこの男が、時に極寒の樹氷よりも冷たいことを知っている。迷い込んでしまった哀れな兵士の末路を思ってほんの僅かに胸が痛んだ。
     嫉妬深いロイエはきっと何食わぬ顔で薄く笑って、このことを無かったことにするだろう。エーテルネーアをこの上なく大切に抱きしめるこの腕は優れた軍人のものであり、そしてロイエは決して判断を躊躇しない。
    「あなたは僕のものですよね」
     それなのに時折こうしてひどく臆病がるのだから、エーテルネーアは嬉しくて、可笑しくて、堪らなくなってしまう。
    「もちろん。僕は君だけのものだよ、ロイエ」
     降ってきた口付けの甘さに酔いしれながら、遠く向こうに見える絵画の聖人に向かって、エーテルネーアはほのかに微笑ってみせたのだった。
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