月の下にて。(クロパパ)不気味な程大きな満月が、迷界の皆に平等に笑い掛ける深夜。今夜もクロックマスターとミイラ父ちゃんはグレゴリーハウスの二階、バーにて晩酌を楽しんでいた。二人きりの静かなバーで、このホテルの管理人が恐らく趣味で集めただろう少し高級志向な酒を呷る。
この瞬間だけはこのホテルにくすぶる鬱屈とした空気が、少しだけ居心地の良いものに変わるのだ。
「マスターさん、ちょっとだけ歩きませんか?」
「おぉ…?歩くかァ…?」
晩酌も中頃。フワフワとほど良い酩酊感の中、クロックマスターはバーを出て進んでいくミイラ父ちゃんの後をついていった。
たどり着いたのは一階のロビーで、管理人の老鼠が不在の無人のカウンターを前に一体何の用だと言うのか。
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