リーマン💥×おむすびやさん🥦22時、朝昼ハイヒールと革靴の音が響くこのオフィス街も静まり返り、今や自分一人がこのビルの乱立した世界に取り残されたように錯覚する。
(流石に連日残業はキチィな…)
入社5年目、もともと仕事はかなりできたが
そのおかげで任される量も増え、大きなプロジェクトの前は連日残業が当たり前となってしまった。
仕事は嫌いじゃないが今日に関しては各所でトラブルが勃発、フォローにおわれて通常業務を片付けるのに今の今までかかってしまった。
(腹へった…)
自炊はする方だがもう帰って台所に立つ気力はない。何かできあいのものでもいいから買って腹に詰め込んで寝てしまおう。
そうは思ってもここはオフィス街、ランチ営業中は賑やかであるがこんな深夜に明かりが灯る店はない。
裏通りに居酒屋がポツポツとあるが、この空きっ腹に酒臭い場所はきっと胃液がせり上がってくるだろう。仕方がない、近所のコンビニで食えるものを買って帰ろう…踵を返そうとしたその時、視界の端に電球色の温かな光が目に入った。
吸い寄せられるように光に向かうと、こぢんまりとしたテイクアウト専門の店のようだった。
『おむすび オール米』
どうやらオール“まい”と読むらしい。というか読ませたいのだろう。わざわざふりがなが振ってあった。
(クッソダセエ名前…)
おむすびなら全部米なのは当たり前だろうが。いや、違う。米だけではない。具もあるじゃねぇか。ほぼ米ならわかるがオール米は言いすぎだろうが。
と、空腹と疲れのせいで思考回路がショート寸前だ。
店の中に目を向けると明かりはついていて人がいる気配がした。閉店間際か?なら、まだ売れ残りがあるかもしれない。すがる思いでドアに手をかけた。
「あの…」
「…えっ!?」
奥でガチャンと物音がし、少し高めの裏返った声が聞こえる。
パタパタと足音がして、ショーケースの奥ののれんからひょっこりと顔がのぞく。
きょろっとした緑の目とモジャっとした髪、ふくっとした頬にのるそばかすが印象的の地味な男だった。
「あっ!ごめんなさい…お客さんですよね…?僕お店の看板しまいわすれてて…今日完売してしまって閉めるところで…」
「ああ、やっぱり…」
申し訳なさそうな表情で謝る店員を咎める気持ちはなかったが、自分でもびっくりするほどの疲れた声が出てしまった。
なら長居は無用、さっさと店を出てしまおうとしたとき、「あっ!」とさっきの地味な店員が声をあげた。
「あの!もうちょっと待てます?」
「…は?」
「あの、僕新しい具を試作してて…あと少しで炊けるので食べていきませんか?」
「…は?」
「あ、でも、終電の時間とか…ありますよね…?ううーん…」
米、今コイツは米を炊いていると言った。すん、と室内の匂いを嗅いでみるとたしかに、あの甘みのあるような優しい温かいにおいがする。奥で、白く、ふっくらした…米が…!
グーーーーー
「あ」
「あ」
目の前の米を想像していたら、言葉より腹のほうが先に返事をした。恥だ。育ち盛りかよ。
いい歳して盛大に鳴らした腹の音に居たたまれなくなっていると、店員がふふっと微笑んで
「遅くまで大変でしたね。イートインは無いので僕の休憩スペースになりますけど…どうぞ!」
ショーケースの隣のカウンターの扉をそっと開いて、内側に招いてくれた。
っていうところから始まるやつ見たいんですよね〜〜!!誰かにかいてほしい
🥦くんは調理師免許を持っているけど、作る料理全て特段美味しい!というものが作れなかったけど、おにぎりだけは評価が高くておにぎりやさんになった。オール米は、小さいときに見ていたドラマ伝説の料理人オールマイトからもらってる。本人はこれを思いついたときに、僕ちょっと上手い?と思っていたが、客からはダセェとおもわれている。
💥ちゃんは試作品を食わせてもらったあと、きっちりお支払いしようとしたが、「試作品だからもらえない。気にするならいつでもいいので営業中に1個買いに来てくれればいいです」と受け取ってもらえなかった。すぐに営業中に行こうとするものの、連日仕事に忙殺されてまた閉店後に向かい、お代だけ渡そうとする。でもやっぱり受け取ってもらえないし、また試作品を食べさせてもらったので、🥦が試作で店に残るときだけ特別に予約販売してもらうようになった。