スネイルとアキバ上級役員令嬢嫁の話 一体何がどうなっているんだ。
スネイルは困惑していた。
「この際だからはっきり言うけど、あなたを結婚相手に選んだのは、候補の中で一番若いからでも容姿がまあまあいいからでも、これから出世してくれそうだからでもなんでもなくて、あなたが前線に出るAC乗りで一番早く死んでくれそうだったからよ」
眼鏡をかけていなくても強化手術済みの目はあたりの光景をよく捉えた。
シミのある天井、白やアイボリーに青、清潔そうな色で統一された視界、消毒液とリネンの匂い、自分に繋がれたいくつものチューブと自分が横たわるベッド脇に置かれた点滴。
それから、ベッドの傍らで泣きながら話続ける妻の姿。
「死んだあなたを忘れられないふりをすればしばらくは再婚もさせられないだろうし、悠々自適な未亡人生活を送る予定だったの。子供ももちろんいらないわ。そのために若さと顔の良さしか取り柄がないくせにウザったくて面倒で煩わしいあの女をわざわざおじいさまに引き合わせて跡継ぎを生ませたんだから」
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