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    Lionsomps

    ラウヴァアアアアアアアン!
    14の二次小説とか>http://studiosxr.web.fc2.com/index.html
    おえかき練習中

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    Lionsomps

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    水平線の名前



    (うちのほんまる設定)

    この家屋はぐるりと回廊状に建てられて、正門がある此方側の棟は一同との謁見の為の大広間や本丸運営の為の執務室などがあり「表」と呼んでいる

    その広い表庭に面した縁側に腰かけて先日の遠征部隊の報告書を読んでいた

    部隊長は豊前君だったのだが、五月雨江・・・雨さんが報告書の作成は是非自分にやらせてほしいと申し出てきたそうだ。そして手渡された書類は中々の厚みがあった。
    もしかして全部57調で書いてあるのか・・・?全部に季語があって、それを解釈して真意を探らねばならないのか・・・?と覚悟して読み始めたが、内容は実に簡潔で要点が分かりやすく日頃の意味不明な言動はなんだったのだと驚く出来だ
    では何故こんなに厚みがあるのか。残りは「歌人」太田道灌についての人となりや残した和歌についての所感や批評などだった。かの人によほど心動かされたのだろう興奮と詩情に溢れ読書好きな男士達も面白く読むだろう。特に歌仙は。
    これを冊子にし書庫に置こうかとも考えた
    だが残念なことに時間移動で得た歴史上人物の記録を残すことは固く政府から禁じられている
    もしこれが万が一外部に伝わり諸説の一つになれば歴史に影響が残る
    雨さんもそれは知っているはずだ
    これは私が読み終わった後に焼べてしまわなければならない事を

    「よう!主!」

    溌溂さ満点の元気な声。豊前江だ。ああ顔がいい
    隣には桑名君もいて籠いっぱいに野菜を抱えている
    二人して納屋に向かっていた途中らしい

    「ご苦労様。沢山とれた?野菜」
    「ああ!ほら!キュウリにピーマン、トマト!それにオクラ!」
    「そうかあ夏野菜が採れ出したんだなあ」

    ほら、と筋肉の盛り上がりまでイケメンな腕が籠を差し出す
    採れたて野菜の青臭く爽やかな香りがふわりと漂ってきた
    私の好きな匂いの一つ。ああ顔がいいまぶしい

    「今年はトマトの育成が上手くいったからね。これから大忙しになるよお」
    「うん。トマトが採れすぎて困ることは無い・・・ありがとうね」

    桑名君はここ最近山吹の苗の世話やそれを「向こう」に持ち込んだりしながらも
    畑仕事も手を抜かずこなしと、朝から夕方までとても忙しそうだった
    それは無心に、というよりもどこか必死さを感じるほどに

    「桑名くん。”あちら”の事はもう終わったの?」
    「うん。やりたいことはやるだけやったしね」

    特にわだかまりもないような、いつも通りのふわりとした口調でそう答える

    「ななな、主。モグラって見たことある?」

    豊前君が無邪気な子供の様にキラキラした笑顔で興奮気味にそう尋ねてきた。
    嗚呼顔がいい

    「モグラ?」
    「そう!ちっこいのにすばしっこくて速いんだよな!」
    「見たことあったかな・・・?大昔に一度みたことが・・・」
    「ここの畑でも時々みかけるよお?掘った穴なんかあちっこちにあって困るぐらい」
    「へえー!よくわかんないけどすげえな!」

    ここは仮想神域とはいえ生態系は実際の物とほぼ変わらない
    季節もこの箱庭を廻っていく

    今回の雨さんの報告書の中に、他の書類とは別に私に宛てた走り書きの様なメモが一枚添えられていた
    今後もなるべく豊前君と共に編成して欲しいと
    眩しいほどにそこにいると実感出来るのに、同時に何処にもいないような不安定さを雨さんも豊前に感じているんだろう
    遠く水平線に立ち上る蜃気楼の様な
    誰かが繋ぎ止めなければゆらりと消えてしまいそうな・・・

    犬が手綱を持ちたがってる
    などというくだらない連想をした自分をちょっと鼻で笑う

    二人はじゃあ、と納屋の方へまた向かっていった

    その背中を眺めつつ、ふと思った
    豊前自身もまたその水平線を見ているのかもしれない
    きっと、いつも隣に居るんだ
    それを共に見ているよ、と傍に居ることが大事なのかもしれないと
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