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    ashi_5687

    らくがき・進捗置き場時々えっちなやつ
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    ashi_5687

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    昔書いた冬の海のローサンに反応頂いて、懐かしい〜!て気持ちになったので、小説投稿し直し🙏🏼書き直したいところ結構あるけどまあそのままで😂
    死ネタです。

    #ローサン
    low-sun
    #死ネタ
    newsOfADeath

    無題/ローサン アイツはある日突然、死期を悟った野良猫のように、何も残さずおれの前から消えた。そして今日、五年越しに手紙が届いた。「この手紙は、おれが死んだら渡すように言伝した。」から始まる、おれへの謝罪と今住んでいる地について、そしてかつて過ごした日々のことを綴った短い手紙。涙も出なかった。
     その手紙を持って、アイツが死ぬまでの五年間を過ごしたらしいその地を訪れた。そこは小さな港町で、二月の早朝は人もまばらだ。吐く息は白く、鼻先と耳は冷たくて痛む。
     防波堤に沿って歩く。人の住む気配のない木造家屋、地蔵が祀られている小さな祠、長年強い日差しに晒されて劣化し色褪せた、バス停のブルーのベンチ。防波堤の石階段を上り、さらにその上を歩む。砂浜が見えた。防波堤のすぐ側では、海浜植物が打ち捨てられた漁船の船底を突き破り、まるで船体を丸呑みする大きな生き物の様に覆っている。砂浜に足を踏み入れ、波打ち際まで歩いた。潮の流れの影響か、漂着したゴミばかりだったが、そんなことは構わなかった。波打ち際の流木の上に腰かけ、しばらく遠くを眺めた。

     灰色の空と黒い海。

     お前の望むとおりに焼かれて、粉々にされて、海に撒かれたお前の骨は、今は一体どこを漂っているんだ?なんて聞けば、そんなこと聞いたってなんの意味もないことぐらいわかってるだろ、オイシャサン、と笑っただろうか。
     真冬の海風が服の隙間から肌の温度を奪い取っていく。道中買った吸いもしない煙草に火をつけ、静かに吸い込み、案の定むせた。
     目を閉じる。
     凍てつくような冬の朝の空気に包まれてお前の匂いを思い出した。皮のソファに染みついたお前の煙草の匂い。何も残してはいかなかったお前が、唯一おれに遺したもの。もうほとんど薄れちまったよ。お前はここにいやしないのに、残りの煙草はどうすりゃいいんだよ。うずくまって独りごちた。
     アイツが一人で、あるいはこの町の誰かと過ごした五年の歳月。おれの知らないお前は、本当にこの町にいたのかすら知る術はない。この町の人間に聞く気もない。
     片目からこぼれた涙の筋が熱い。
     頭の中で、アイツにもう一度会ったら言ってやろうと、五年間考えていた言葉の数々を繰り返したが、全てが徒労であることは知っていた。
     そうしておもむろに、足元の砂を集めて吸いかけの煙草を差した。
    「墓ぐらい、参らせろよなァ」
     傍らに残りの煙草を投げておれは立ち上がった。もう涙は乾いていた。あの日から、心臓は痛いままだ。それでもじきに慣れてゆくのだろう。そして二時間後の電車で、お前のいない日常へと帰っていく。
     この場所に戻ることは、二度とない。
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    ashi_5687

    DOODLE昔書いた冬の海のローサンに反応頂いて、懐かしい〜!て気持ちになったので、小説投稿し直し🙏🏼書き直したいところ結構あるけどまあそのままで😂
    死ネタです。
    無題/ローサン アイツはある日突然、死期を悟った野良猫のように、何も残さずおれの前から消えた。そして今日、五年越しに手紙が届いた。「この手紙は、おれが死んだら渡すように言伝した。」から始まる、おれへの謝罪と今住んでいる地について、そしてかつて過ごした日々のことを綴った短い手紙。涙も出なかった。
     その手紙を持って、アイツが死ぬまでの五年間を過ごしたらしいその地を訪れた。そこは小さな港町で、二月の早朝は人もまばらだ。吐く息は白く、鼻先と耳は冷たくて痛む。
     防波堤に沿って歩く。人の住む気配のない木造家屋、地蔵が祀られている小さな祠、長年強い日差しに晒されて劣化し色褪せた、バス停のブルーのベンチ。防波堤の石階段を上り、さらにその上を歩む。砂浜が見えた。防波堤のすぐ側では、海浜植物が打ち捨てられた漁船の船底を突き破り、まるで船体を丸呑みする大きな生き物の様に覆っている。砂浜に足を踏み入れ、波打ち際まで歩いた。潮の流れの影響か、漂着したゴミばかりだったが、そんなことは構わなかった。波打ち際の流木の上に腰かけ、しばらく遠くを眺めた。
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