かいねこのすすめ。薄暗い部屋の中に、かすかにすすり泣くような声だけが木霊している。
ぐすぐすと悲壮感を煽る泣き声。
止めどなく溢れる涙は黒曜石の瞳をしとどに濡らしては元は真っ白だったシャツの袖口を灰色に変えていく。
涙を拭う度に首についた鈴がチリチリと鳴って、酷く耳障りだ。
可愛そうな彼女は泣きながら、その煩わしい元凶を外そうと何度目かわからない抵抗を試みる。
震えてもつれる指先で、首輪代わりらしい鈴が括りつけられたリボンを外そうと結び目を探るが目視が出来ない状態でぎっちりと固結びされたそれを解くのは至難の技だ。
結び目を探して滑る指と腕を持ち上げ続ける疲労で限界を訴える非力さを呪いながら、また何度目かわからない諦めでぱったりと腕を落とした。
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