寂しいのはどうして?「もし、タケルと漣の結婚式に出席することがあったら泣きそう…」
「自分も…泣くかもしれないッスね…」
オレ様のが良いに決まってる、勝手に話を進めるなよ、と言っていた二人の耳に届かない場所で、プロデューサーと道流はひっそりと想いを打ち明けあった。何年後の話なんだ、などと野暮な事で中断することもなく晴れの姿を思い浮かべる。
今回のPRの仕事も順調に進み、改めて「完成が楽しみだな」と呟いた。
「…自分の時は」
「うん?」
「自分の時は、師匠は泣いてくれるんスか?」
道流の時は?
そういえば想像すらしなかったな、と考えを巡らせる。タケルと漣の時はきっと道流の横で泣いているのだろうと容易に想像ができたのに。
でもきっと、自分は泣くのだろう。隣に立つパートナーと幸せそうに笑う道流の姿を見て、胸がいっぱいになって泣くのだ。おめでとう、末永くお幸せに、と手を振って少し苦しくて寂しい想いを抱えて────
(…寂しい?)
二人の門出を祝う席でどうして寂しくなるのだろう?
答えに困って首を傾げていると、道流が申し訳なさそうな表情を浮かべる。
「すんません、そんなに困らせるつもりはなかったんスけど…」
答えの出ない自分に気を使わせてしまったようだ。
「いやいや、困ってないよ。色々想像しちゃってさ」
笑いながら答える。
「道流の時も…少し、泣くと思うよ」
嘘は言ってない。だけれど自分でもわからないこの気持ちは伝えられなかった。
「そうッスか…」
満足のいく答えだったのだろうか?いつものように笑う道流からは読み取れなかった。
「道流は?俺の結婚式泣くの?」
道流からどんな答えが欲しいのかも解らないまま問いかける。
道流はうーん、と少し考え込むと口を開いた。
「泣くかもしれないッスけど…その時はうちの店で盛大に祝福するッスよ!」
「…そっか。ありがとう」
そんな予定全然ないけどな〜と自分の感情に向き合うのを誤魔化すように言えば、ウェディング餃子とタンメン作って待ってるッスよ、と道流はまた笑った。